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旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
第一部長篠ー方針ー

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変化

高坂昌信「先程の集まりにおける殿には正直驚かされました。」

私(武田勝頼)「これまで尊大な態度を取っていました?」

高坂昌信「いえ。どちらかと言いますと焦りを感じているように見えていました。」

私(武田勝頼)「焦り?」

高坂昌信「はい。殿は元々武田を継ぐ立場にはありませんでした。それが義信様の一件がありまして武田に戻らなければならなくなりました。これが無ければ殿は恐らくでありますが、今の信豊様のような一族の重鎮として。もしくは山県のような突撃隊長として活躍される事になっていた。実際、殿もそのように考えていたと思われます。

 それからわずか5年で御館様は亡くなってしまいました。御館様は生涯現役を貫かれましたがため、勝頼様にほとんど権限を委譲する事無くこの世を去る事になってしまいました。それだけでも勝頼様は大変な状況に追い込まれる事になってしまったにも関わらず御館様は

『勝頼は正当な後継者では無い。勝頼はあくまで勝頼の息子が元服するまでの中継ぎに過ぎない。』

との遺言を残されました。責任だけ押し付けられて権限は何も無い立場に勝頼様は置かれる事になってしまいました。当然、亡き御館様からの家臣は従いません。当然であります。勝頼様は亡き御館様から当主として認められなかったのでありますから。これを払拭するためには実績を積み上げるしかありません。

 その最もわかりやすく見えるのがいくさであります。故に殿は東濃や高天神と言いました危険を伴ういくさに身を投じる事になってしまいました。その賭けに勝利したから今があります。しかしそれを維持するためには皆が後ずさりするいくさに勝ち続けなければなりません。

 そこに降って湧いた岡崎城からの内通話であります。これまでの殿でありましたら即座に決断を下し、総動員令を掛けたものと思われます。しかし殿は思い留まりました。そればかりか皆の意見を聞いた上で機が熟すのを待つ選択をされました。加えて会議が終わった後、個別での打ち合わせ。それも罵るようなものでは無く。皆が皆。驚いているのは間違いありません。」

私(武田勝頼)「もし岡崎城攻めを決断していたらどうなったと見ている?」

高坂昌信「大岡弥四郎が徳川家中で力を発揮出来ているのは家康信康親子からの信頼であります。彼の地盤ではありません。その大岡が徳川を裏切る。それも武田に従属する。となった場合、話を持ち掛けられた人物がどう思うか?であります。もしその中の誰かが今の現状に不満を覚えていなかった場合、間違いなくその人物は家康に報告します。上に気付かれたら最後。大岡には武力がありません。彼の待つ運命は自ずと……。」

私(武田勝頼)「では私の判断は。」

高坂昌信「殿の変化に驚かされるばかりであります。」

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