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「おはようございます」
「お、おう…起きておったか…っつつつ…」
「…大丈夫ですか?」
「あ、ああ、そうじゃな…久しぶりの酒じゃったから飲み過ぎたようじゃ…頭が少しな…それにしても青年は酒が強いんじゃのぉ。ワシは途中から記憶がありゃせん」
「…久しぶりだったから酔いが早く回ってしまったのではないですか?」
「そうかのぉ…」
「おいっ!ジジイっ!」
突然、衛兵がお爺さんの家に入ってきた。
外を見ると衛兵に囲まれているようだ。
「突き止めたぞ!ジジイが盗賊団のお頭なんだってな!」
「はて?何のことじゃ?ワシは二日酔いで頭が痛いんじゃ…大きな声を出すでない…」
「今は息子が継いでんだろ?テメーを人質に取ったら、盗賊団も大人しくなるかもなぁ?」
「全く…何を言ってるんじゃ…ワシは盗賊団とは関係ないぞ?」
「うるせぇ!おい!連れていくぞ!」
僕が衛兵の前に出ようとしたら、
お爺さんによいよいと言われた。
「青年には関係ないじゃろ?ワシは本当に関わりなんかないんじゃ…盗賊団が大人しくならないことがわかったらそれでええじゃろ?だから、構わんでよい」
「…ですが」
「ほら、連れて行くんじゃろ?どこでも行くぞ」
「ふん!…おい!連れていけ!」
お爺さんは衛兵に連れていかれた。
「あのお爺さんって悪い人だったの?」
「…急に現れないでください」
「お取り込み中みたいだったから、声をかけなかっただけなのだけど?」
「…そうですか」
「今の…衛兵よね?連れていかれる理由は無いと思うんだけど?」
「何かの勘違いだったようですが…大丈夫と言われましたので…」
「…そう」
僕はお爺さんの家から出て、街を歩く。
「おっ!兄ちゃんっ!」
「グランっ!待ってよ!」
グランが走って近寄ってきた。
「俺たちさ!ここの傭兵で雇ってもらえたんだぜ!なんか盗賊団が出るみたいでさ!猫の手も借りたいぐらいだって言われたんだ!」
「…そうですか。良かったですね」
「おう!姉ちゃんもありがとな!」
エルナは返事を返さなかった。
「グラン!待ってって言ったのに!…あっ、エルナさん!こんにちわ!」
エルナは軽く頭を下げた。
「だってよ!兄ちゃんと姉ちゃん見つけたからよ!早く教えてあげたくてさ!」
「気持ちはわかるけど…」
「本当にありがとな!」
「…いえ」
二人は嬉しそうな顔をしている。
「盗賊が出たぞぉーーーー!!!」
大きな声が響いた。
「やべっ!俺たち行かなきゃ!またな!」
「それでは!失礼します!」
二人は走り去っていった。
お爺さんはどうなったんだろう?
僕は領主がいるであろう場所まで移動した。
「く、くそっ!こいつら強いぞっ!」
「傭兵はまだかっ!」
「もう少しでつく!やっぱり、あのジジイは盗賊団のお頭で間違いなかったようだな!」
どうやら盗賊団が領主の館を襲っているようだ。
「おい!あんた!傭兵だろ?早く盗賊を退治してくれよっ!」
「…違いますが」
「あー!もう!早くこいって!」
違うと伝えたのだが、
衛兵に館の中へと案内されてしまった。
「クソッ!もうここまで来られたのかよっ!」
どうやら奥の方まで侵入されてしまったようだ。
「傭兵です!つきました!って!兄ちゃん!?」
「お兄さん!何してるんですか!?」
「…勘違いされましてね」
「そ、そうだったんだ…」
「おい!ガキ!仕事中だぞ!」
「あっ!す、すいやせん…兄ちゃん、ごめんな」
「気にしないでください」
傭兵の先輩なのだろう、
グランは怒られてしまった。
前から盗賊団が襲ってきた。
「行くぞっ!お前らっ!」
「うぉぉぉおおおお!」
傭兵と衛兵が力を合わせて、
盗賊団と戦っている。
僕はその間を通り抜けて、先へと歩き進める。
「お、おいっ!あんた!どこへ行くんだっ!」
「お爺さんが無事か確認に行くだけですが?」
「ちゃ、ちゃんと仕事しろぉおお!」
僕は傭兵ではないので、
そんな仕事は請け負っていない。
盗賊団も襲ってはこないので、
僕は何もしない。
「ここにいたんですね」
「ん?なんだ!青年じゃないか?どうしたんじゃ?こんなところまで…」
「ご無事かと思いまして…」
「大丈夫じゃよ。それより青年はここまできて大丈夫じゃったか?」
「はい…大丈夫です」
「そうかそうか!…ワシもそろそろここにいるのも疲れたのぉ…青年よ。一緒に出てくれるかのぉ?」
「…そうですね。かまいませんよ」
「そうか!では、行くとするかのぉ」
僕はお爺さんと一緒に館の中を歩きはじめた。