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村の中で騒いでいる声がする。


「おい!マールンを出しやがれ!」


身体の大きな男性が暴れているようだ。


「っ!クジ!?」

「おー、マールン。ちゃんといるじゃねぇか…そろそろ考えも変わったんじゃねぇかと思ってよぉ」

「変わるわけないでしょ!」

「はははっ!だがよぉ、このままじゃこの村も終わっちまうだろ?どんどん男手もなくなってんだろ?病気になってよぉ…親父さんはもう死んだか?ん?」

「ちゃんと生きてるわっ!ふざけたことを言わないでっ!」

「そうかそうか。そりゃ、よかった。だがよぉ、その命もいつまでもつかねぇ…俺と結婚すりゃ、金を出してやるぜ?そうすりゃ、親父さんも治って元気になんじゃねぇか?ん?早くしねぇと本当に死んじまうぜ?」

「クジと結婚するぐらいなら、お父さんと一緒に私も死んでやるわ!」

「おー、こわっ!…でも、嫌いじゃねぇぜぇ」


クジはニヤニヤと笑っている。


「テメー…クジよぉ。マールンの親父さんが病気で苦しんでるって言うのに…何だよその態度はよっ!ふざけてんじゃねぇぞっ!」

「っ!テメー!ヤニじゃねぇか!?何でこの村にいんだよ!追放しただろうがっ!」

「それはテメーも同じだろうがっ!俺っちがいなくなってから好き勝手やってくれてたみたいじゃねぇか!この村を何だと思ってんだっ!」

「はっ!んなもん、俺のおもちゃだろ!俺の言うことを聞いてりゃいいものを…散々言って追い出しやがって!病気になったのもバチが当たったに違えねぇや!」

「ふざけんなよっ!何がテメーのおもちゃだ!この村はよぉ!みんなで力を合わせて、必死に生きてんだ!それをテメーなんかに好き勝手言われてたまっかよっ!二度とこの村に来れねぇようにしてやる!」

「はっ!ヤニの分際で言ってくれんじゃねぇか…俺にボコボコにやられて、この村から逃げていったくせによっ!」

「もう…あの時の俺っちじゃねぇぜ…」

「それはどうだかなぁ?…決闘しやがれ!」


ヤニとクジは言い争い、

鋭い眼差しで睨み合っている。


「…んー…喧嘩?」

「…そうですね」

「…ヤニ…勝てる?」

「…どうですかね」

「…相手…強いの?」

「…さぁ」

「…そっか」


ユナは少しだけ心配そうにヤニを見ている。


「ヤニ…やめて?お願いだから…」

「マールン…。もう俺っちは負けねぇよ…あの時とは違う。だから、信じてくれ」

「で、でも…」

「おい!ゴチャゴチャと話してんじゃねぇぞ!」


クジが剣を抜き、振りかぶった。


キンッ!


金属がぶつかり合う音が響く。


「…クジよぉ。あの時の俺っちとは違うって言ったよなぁ?」

「はっ!剣を使えるようになったからって、あの時とそんなに変わんねぇよ!」


何度も剣をぶつけ合っている。


クジは身体が大きく、力任せに剣を振るう。


ヤニも身体は大きい方だが、

クジの方が一回りも大きく見える。


元の体格差があればあるほど、

力の差は歴然としてある。


「っく!」

「はははっ!おいおい!そんなもんか!あ?」


徐々に押されつつあった。


「ヤニっ!」

「マールンは下がってろっ!」


クジとの剣戟を耐えることに必死なようだ。


お互いに力任せに振り合う姿を見て、

ジンならどのように対応しただろうか…


僕はそう考えてしまった。


「おい!クジ!いつまで遊んでんだよ」


知らない男性が現れ、クジに話しかける。


「あ?あー、悪いな…もう少し待ってくれや」

「おいおい…こっちはいい餌場があるって言われたから、ついてきてやったんだぜ?早く餌をくれなきゃ…俺の可愛い魔物達が暴れちゃうぜ?」

「チッ…なら、マールン以外…そこの女以外なら食わせちまっていいぜ」

「へへ、そうかい。わかった…行け!俺の可愛い魔物達!」


彼は魔物使いなのだろう…

三体の魔物が現れ、村を襲おうとしはじめた。


「っ!クソっ!ふざけんなよ!」

「おいおい!周りに気を取られてる場合かよ!」

「っぐ!」


ヤニは魔物が村を襲わないように、

抵抗しようとしたが、それをクジに止められる。


「く、クソっ!ど、どうしたら…」

「…ヤニ。まだ決闘は終わりませんか?」

「あ、アニキ…すいやせん。簡単には…」

「…そうですか。では、魔物は僕が倒しますので…」

「え?あ、アニキ?」


僕は魔物に近づく。


「ははは!自ら餌になりにくるとはな!ほら!食べちまいな!」


魔物使いは嬉しそうに話している。


僕は魔物の頭を殴り飛ばした。


まずは、一体…


「えっ?」


彼は驚いた声を上げた。


二体目、三体目の魔物も頭を殴り飛ばした。


魔物使いもクジも驚愕の表情をしている。


「な、なななっ!何なんだ!コイツはっ!?」

「う、嘘だろっ!?」

「あ、アニキっ!」

「…ヤニ。もう魔物はいませんよ…決闘に集中してください」

「わ、わかりやした!」


ヤニはクジへと猛攻を仕掛けた。


「チッ!ヤニのくせしやがって!」

「おい!クジ!俺は引くぞっ!」

「なっ!おい!待てよっ!」

「魔物が殺されるなんて聞いてねぇぞっ!もうお前の話は信じねぇからな!次に会った時は覚えてろよっ!」

「お、おいっ!」

「どこ見てやがんだっ!」


ヤニが大きく剣を振りかぶり、

クジの剣が飛ばされた。


「っ!」

「ここまでだな…」

「お、俺が…ヤニなんぞに…」

「もうこの村に二度と来るんじゃねぇ!次に来やがったら…わかってるな」

「く、クソが!…覚えてろよ!」


クジは悔しそうな顔をしながら、

村から立ち去った。


「ヤニっ!」

「マールン…」


ヤニはところどころに傷を負っているが、

嬉しそうにマールンを抱きしめた。


「…ヤニが死んだら…私…私…」

「俺っちは死なねぇよ」

「うん…うん…」


マールンは泣きながら、

ヤニに強く抱きしめられていた。

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