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それから、グランの体調を見ながら、
ゆっくりゆっくりと次の街へと向かう。
すると突然、マロンが大きな声でこう言った。
「あ、あのっ!私を強くしてくださいっ!」
僕とエルナを見ながらも、
強い眼差しでそう訴えかけてくる。
「…申し訳ありません。僕には剣の使い方などわかりません。ですから、ご期待に応えることは難しいと思います…」
「そ、そんな…え、エルナさんはっ!?」
「どうして私が教えなきゃいけないのかしら?正直、お荷物だとしか思っていないのだけど?」
エルナは嫌そうな顔をしながらそう言った。
「で、でも!少しでも…お荷物にならないように…その為にも強くして欲しいんですっ!」
「私は貴女が死のうが生きようが、どうだっていいの?わかるかしら?そんな貴女の為に使う時間が私にあるとでも思っているの?」
「で、でも!でもっ!」
マロンは泣きそうになりながらも、
お願いをしている。
「…教えてあげたらどうですか?」
「え?どうして教えなきゃいけないのかしら?」
「…僕には剣の使い方はわかりません。ですが、エルナさんならわかりますよね?」
「はぁ…貴方がそう言うなら…教えてあげてもいいけど…さん付けはしないでくれるかしら?私は貴方のものなのよ?」
「…違いますが」
「違くないわ。もうさん付けをしないと約束するなら聞いてあげてもいいわ」
「…わかりました。エルナ…お願いします」
「そう。じゃあ、そういうことになったから、教えてあげるけれど…強くなる保証はしないから」
「っ!あ、ありがとうございますっ!ありがとうございます!」
それからエルナはマロンに剣の使い方を、
教えてあげていた。
グランの体調もよくなり、
グランも一緒に教えてもらっている。
「全然、ダメね」
「も、もう一度お願いします!」
「こ、こんな感じすか!?」
「…はぁ…私の話を聞いていたのかしら?」
こんな感じだが、徐々に剣の使い方が、
上手になっているように感じた。
「あのね。前しか見ることが出来ない生物なのかしら?全体をちゃんと見るの?わかる?」
「は、はいっ!」
「力任せに振ることしか出来ないの?そんな振り方じゃただ疲れるだけって何度言ったらわかるのかしら?…はぁ…私の話が理解できているのかしら?」
「じゃ、じゃあ、どうすりゃいいんだよ?」
「見てなさい」
シュッ
エルナは剣を華麗に振った。
まるで力が入っていないように、だが力強く。
「わかる?わからないなら、もう無理よ。潔く死になさい」
「や、やってやるさ!」
街に着くまで、エルナはずっと教えていた。
魔物に襲われたりしたが、
グランとマロンは前に比べると、
少ない傷で倒せるようになってきた。
「つ、ついたぁー!!」
「うん!やっとで着いたね!お兄さん!エルナさん!ありがとうございました!」
「私はご主人様に教えろって言われたから教えただけよ?お礼なんかいらないわ」
「…僕は何もしていませんよ」
「それじゃ、俺たちは傭兵として雇ってもらえるようにお願いしてみっからさ!この街にまだいるようだったら、また会おうな!本当にありがとうな!」
「本当にありがとうございました!」
「いえ…」
グランとマロンは嬉しそうに、
街の中を走っていった。
「それで?貴方はこれからどうするの?」
「…さぁ」
「…何も考えてないのね」
「…そうですね」
「…まぁ、別にかまわないわ。私はただ貴方についていくだけだもの」
そう言って、本当についてくる。
心の中で少しだけ…邪魔だなと思ってしまった。