65
「…どこに向かってるの?」
ユナさんは不思議そうに、
首を傾げながら聞いてくる。
「…そうですね。ユナさんがいたような場所がまだあるみたいですので…」
「…そうなんだ」
「…はい。そうですね…僕はあのような施設が好きではありませんので…」
「…どうするの?」
「…そうですね。まずはお話を聞きましょうかね?」
「…その後は?」
「…ご想像におまかせします」
「…んー…?」
ユナさんは考えてはみたようだが、
あまりわかっていないようだ。
「…ここですかね」
「…ホントだ。私のいたところと同じ匂いがする…」
「…そうですか」
僕は歩みを進めていく。
施設から魔物が襲ってきた。
どうやらあの施設を潰したことが、
伝わっていたようだ。
それなら話が早いですね…
僕は心の中でそう思った。
「…氷刃」
ユナさんは襲ってくる魔物を魔法で殺していく。
魔物を殺し、施設の中へと進んでいく。
「お、お前たちか!研究所を潰したやつらは!」
研究者がそう言うと驚いた顔をした。
「っ!お、お前はっ!?No.U007ではないかっ!」
「…その呼び方は好きではありませんね。今は、ユナさんと言う名前があるのです…そう呼んでくれませんか?」
僕は研究者の頭を鷲掴みにしながらそう言った。
「ぐわあぁぁぁあ!」
少し力を込めすぎたのかもしれない…
その場に倒れさせるように突き離した。
「っ!ぐっ!」
近くにあった机にぶつかりながら転んだ。
机の上に置いてあった、
研究資料が地面に落ちる。
僕は研究資料を手に取り、
読みながら、話しかける。
「…貴方の質問にお答えしましょうか。お仲間の施設を潰したのは僕ですよ…少しお話があるのですが…ここではどのような研究をされているのですか?」
「ふ、ふんっ!お前なんぞに教えるかっ!」
「…ここでも同じような研究をされているようですが」
「っ!お、お前っ!それを見てわかるのか!?」
「…わからないと思われましたか?」
「そ、それは…研究者にしか…」
「…研究者にしかわからないとでも?」
彼は驚愕の表情をしている。
「…ですが、ここでは大した結果も出せてはいないようですね」
「当たり前だっ!そんな簡単に結果なんか出せるかっ!我々が結果を出す為に、どれだけの時間と労力を費やしていると思う!あ、アイツが奇跡的に成功しただけでっ!何故、成功したのかもわかっていなかったじゃないかっ!」
「…そのようでしたね」
「そんな簡単に成功するなんて思うなっ!」
「…仰る通りですよ。簡単に成功など…しませんよね?」
「そ、そうだ!だから、我々は研究を続けるのだ!お前にもわかるだろ?な?」
「…わかりませんね」
「な、何だとっ!?」
「…何の為の研究なのですか?魔物の生態を知りたいのですか?違いますよね?…魔物を使って…人を使って…兵器を作ろうとしているだけなのではないですか?それは…本当に必要なのですか?」
「あ、当たり前だっ!そうしなければ、帝国は王国に滅ぼされてしまう!そうならない為に!我々は研究を続けているのだっ!」
「…では、国が主導していると…考えてもよろしいのですね?」
「いや、そういう…わけでは…」
「…国ではないのなら…どこなのですか?そもそも、ただの施設でしかないこの場所が…ただの研究者でしかない貴方たちが…国を憂いて、研究を続けているのですか?人を犠牲にしながら…」
「だが!これが国の為だと、いつかわかってくれる日がくるっ!これは必要なことなんだ!」
「…どう必要なのですか?人を殺す為ですか?そうやっていつまでも人を殺し続ける為には必要なのですよね?」
「ち、違うっ!」
「…何が違うのですか?人を殺す為の…兵器を研究しておきながら…僕の話が通じていないのでしょうか?」
「いつか平和な世界の為に…我々は…」
「…その為に多くの命を犠牲にしているのですね?…ただ自分達が良いようにしたいだけの…言い訳でしかないじゃありませんか…」
「ち、違うん」
「…もう結構です」
僕は彼の頭を殴り潰した。
「…貴方から聞きたいことなど…もう何もありません」
僕は返り血がついていない手で、
研究資料を読んでいく。
「…何て書いてあるの?」
「…そうですね。魔物をいじめた日記ですよ」
「…魔物…可哀想」
「…そうですね。ユナさんはいじめないであげてください…」
「…うん。ユナはいじめない…ちゃんと殺してあげる!」
「…そうですね」
ユナさんはうん、うんと言いながら、
何度も頷いている。
「…終わった?」
研究資料を全て破棄して、
施設も破壊した。
もうこの施設から情報が漏れることはない。
恐らく、この施設が襲われたことは、
伝達されているかもしれないが…
「…終わりましたよ」
「次はどこに行くの?」
「…次も同じですが…まだ遠くになりますので…時間がかかるかもしれませんね」
「…そっか。美味しいご飯…食べれる?」
「…そうですね。街に寄ってみてもいいかもしれませんね…ご飯を食べる為には、何が必要だったのか…覚えていますか?」
「…んー…あっ、お金っ!」
「…正解です」
「やったぁー」
「…それでは魔物の剥ぎ取りを覚えましょうか」
「うん。ユナ…ちゃんと、覚えるね」
「…お願いしますね」
ユナさんは初めての剥ぎ取りも、
氷の魔法を使い、上手に行っていた。
ジンが知ったらどう思うだろうか…
きっと、驚いた顔をするのだろうな…