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「ここに騎士が待ってくれてるんだ」
トライさんはそう言った。
「へー、じゃあ、これからは騎士の方々が守ってくれるんすね!」
「方々…ではなくて1人だけだけどね」
「そうなんすか?」
トライさんについていくと、
1人の騎士が待っていた。
「トライ様…お待ちしておりました」
「ガアラン…待たせたね」
ガアラン?何か見た事あるような…
「っ!トライ様!そいつらから離れてください!」
帝国の騎士は剣を抜き、トライさんを庇うように俺たちの前に立ち塞がった。
「っ!ガアラン!どうしたのだ!」
「トライ様…こやつらは王国の人間です」
「なんだと?」
「そこの男は知りませんが…その女と子供は王国の人間です。おい!悪魔がいないようだが?一緒じゃないのか?」
「坊ちゃん…坊ちゃんの兄ちゃんは悪魔だったんですかい?」
サニーはコソコソと話しかけてきた。
「兄ちゃんは悪魔じゃないよ」
「そうなんすね。おい!悪魔じゃねぇって行ってやすよ!それにトライさんの命を救ったのは坊ちゃんたちなんすよ!いきなり剣を向けるとはどういうつもりっすか!」
「ガアラン…剣を納めてくれ。ジンくんたちが私の命を救ってくれたのは本当なんだ」
「ですがっ!あの悪魔のせいで!こいつらのせいで作戦は失敗したのです!成功していれば…帝国は…」
「ねぇ、何で帝国は王国を襲ったの?」
「何で…だとっ!王国の人間がそれを聞くかっ!今までどれだけの人間を殺してきたと思っている!俺の…俺の妹を殺したのも王国の人間だ!」
「ガアラン…。私に話をさせてくれ。ジンくん、君は王国の人間なのかな?」
「…俺は王国から来たけど…王国の人間かなんてわからないよ。帝国の騎士達が襲ってきて、王様に手伝ってくれって頼まれたから戦ったけど…それよりもさ!何であんなに魔物を使って襲ってきたんだよ!」
「魔物…?ガアラン!どういうことだ!」
「トライ様…俺は…」
「各地で魔物を育てているところがあったのはそういうことだったのだな…」
「申し訳…ありません」
「その話は後でしよう。それじゃ、ジンくんは王国に頼まれたから戦っただけで…帝国を襲うつもりはないんだね?」
「そんなつもりないよ!帝国が襲ってきたから、守っただけだ!」
「じゃあ、もし王国が襲ってきたら…帝国を守ってくれるかな?」
「もちろんだよ!襲ってくる方が悪いもん!」
「そうか…ありがとう。これでジンくんは敵じゃないとわかった。それよりも…ガアラン…魔物を育てさせたのか?」
「お、王国を…王国を滅ぼすためには…手を汚さなければならない時もあるのです!」
「それで、どれだけの国民が傷ついたと思っているっ!」
トライさんは大きな声を出した。
「私は各地を見てきた。魔物の被害によって…傷ついた人達を…まさか、それを行っていたのが…騎士ともあろう者とは…」
「申し訳…ありません」
「即刻、辞めさせるように」
「…わかり…ました」
「ジンくん。ガアランと共に…帝都へ戻ろうと思っていたのだが…」
「トライさんが良い人なのはわかるけど…俺はその人のことあんまり好きじゃない…」
「そう…だな。なら、私はガアランと共に帝都へ戻る。何か困ったことがあったなら、いつでも声をかけてほしい」
「うん。俺もトライさんが困ってるなら…力になれるなら手伝うよ」
「ありがとう…。エルナさん…」
「…何かしら?」
「本当は一緒に行きたいと思っているんだが…」
「…無理ね」
「…そうだね。帝都に来た時は…必ず顔を出してほしい」
「そん時は俺と坊ちゃんも一緒ですぜ!」
「あ、あぁ、そう…だね」
じゃあ、失礼するよと言って、
トライさんはガアランと一緒に立ち去った。
あの時、帝国の騎士と魔物が襲ってきたとき…
兄ちゃんは大怪我を負った…俺のせいで…
そして、俺のせいで…崖から落ちて…
兄ちゃん…本当にごめんなさい…
生きてるよね?
教えてよ…兄ちゃん…