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俺は姉ちゃんと一緒に走った。
「ヤンっ!」
朝はあんなにみんな笑っていたのに…
魔物に食い殺された子供が…たくさん…
「く、クソぉおお!」
「泣き言は後よっ!」
姉ちゃんに言われて、ハッとした。
まだ生きてる人もいるかもしれない!
姉ちゃんと魔物を倒しながら、
建物の中を進んでいく。
だけど…みんな殺されていて…
涙を堪えながらも魔物と戦う。
「ジンっ!」
「っ!」
ヤンの声が聞こえた。
「ヤンっ!生きてたのか!」
「バウバウッ」
「おぉ!カムカムっ!」
カムカムが異変に気付いてくれたのか、
ヤンを守ってくれていたようだ。
「カムカム!よくやったな!」
「バウッ!」
ヤン以外の子供は、みんな殺されていた。
それからは姉ちゃんとカムカムと一緒に、
魔物を倒していく。
「よっしゃ!これで最後っ!」
最後の魔物を倒した。
「…ジン!カムカム!ありがとう!」
「へへっ!俺らは友達だかんな!」
「アンタら!大丈夫だったのかい!?」
「あっ!お姉さん!大丈夫だったんすか?」
「アタシは大丈夫だったよ…何とかね…でも、子供達は…」
悲しそうな顔をしている。
「それより…その魔物はどうしたんだい?」
「えっ!?あ、そ、その…えっと…お、俺の友達なんだ!」
「へぇ〜…アンタの友達なのね。使役してるのかい?」
「しえき?しえきって何?」
「何だい…使役も知らないのかい…」
そう言ったと思ったら…
カキンッ!
響くような音がした。
「…アンタね…油断し過ぎじゃないかしら?」
「っ!」
女性の手にはナイフが握られていた。
「な、何でっ!?」
「ちっ!油断させて殺そうと思ったのにね!」
そう言うと、ホニャララと呟いた。
「ぐ、グルルルルルッ!」
「か、カムカム?どうしたの!カムカムっ!」
「グァアオオオオオオオ!」
カムカムは叫ぶとヤンを突き飛ばした。
カムカムの身体が異常なほど、大きくなる。
「ふふっ!使役してないのは本当だったんだね」
「…魔物使いだったのね」
「そうだよ!」
カムカムが俺と姉ちゃんを襲ってきた。
「ちょっ!ちょっと、待てよっ!カムカム!俺だって!な?わかるだろ?カムカムっ!」
「もう無理よ!わかるでしょ?あのババアに操られてるの!だから、殺すしかないわ!」
「で、でもっ!」
「それとも何っ!?私たちが殺されてあげるのかしら?」
「っ!」
俺は何も言えない。
だが、カムカムを傷つけることも出来ない。
「キャァァァァ!」
ヤンの声だ!
声がした方を見ると、
ナイフが胸に突き刺されていた。
そして、カムカムの前に放り投げられる。
「ほら!食いな!それで、奴らを殺すんだよっ!早くしなっ!」
ヤンはカムカムと俺の間に転がった。
「や、ヤン…ヤンっ!」
「グポッ…じ、ジン?」
ヤンは血を吐きながら呟いた。
「ああ、ああ!俺だよ!ジンだよ!」
「…ジン。あ、…ありが…とう。ご、ご飯…美味しかった…カムカムを…よ、よろ」
話している途中で死んでしまった。
「ヤン?…ヤン!…ヤァァァァァァンっ!」
涙が…涙が、止まらない。
「カムカムなら任せろ?な?お、俺が…俺が!」
「早く食いな!そいつらを始末するんだよ!」
「テメーは黙ってろよっ!」
俺が叫ぶとカムカムも叫んだ。
「グァアオオオオオオオ!」
カムカムは俺とヤンではなく、
魔法を使った女性を襲った。
でも、その姿は…まるで…
泣いているように俺は見えた。