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「ん…ふぁあ〜…兄ちゃん、おはよ」
「…おはよう。よく眠れましたか?」
「うん…まぁ、固い地面よりはね…」
「…そうですか」
ジンは眠そうにしながらそう言った。
「あれ?何か子供の数が減ってない?」
起きてすぐに気付くとは思わなかった。
「…そうですね。昨夜遅くに数名ですが…大人と一緒に出て行きましたよ」
「へー…そうなんだ…なぁ、ヤン?」
「…んー?」
「ヤン…起きて〜」
「…ん、ん!…うん…起きた」
「おはよ」
「…おはよ」
「なぁ、ヤン…子供達ってさ、大人の人と一緒にどっか行ったみたいなんだけど…知ってる?」
「…よくあること」
「そうなんだ…」
「うん…」
ジンはそれで納得したようだ。
建物から出ると、村長が立っていた。
「やぁ、君たちは子供達に食事を分けてくれたみたいだね。ありがとう。どうだろうか?お礼に少しばかり食事をご馳走したいんだが…」
「…いえ、お気遣いなく」
「えっ!?くれんの!!」
「…ジン」
「あっ…ご、ごめんなさい」
「…気にされなくてもよろしいですよ」
「いや、そういう訳にはいかないよ。この村の大事な子供達の為にしてくれたんだ。お礼をしなければ…」
「に、兄ちゃん!ほら、村長さんもさ!そう言ってるしさ!ご馳走になろうぜっ!」
「…はぁ、わかりました」
「そうか!じゃあ、さっそく家へと来てくれ!」
僕たちは村長宅へと向かった。
村の中で一番大きな建物で、
周りを囲うように小屋が多く建てられている。
「なんか…すげぇな…」
「…そうですね」
「さぁさぁ、入ってくれ」
中へ案内され、食事が用意された。
「あれ?村長さんは食べないの?」
「あぁ、私は後で食べるとするよ」
「えー!どうせなら一緒に食べようぜ!」
「ははは、お客人を先におもてなししないとね」
村長はそう言って笑った。
「…私はいらないわ」
「えっ!?せっかく用意してくれてんのに!姉ちゃん!何言ってんだよ!?」
「…はぁ、アンタね。食べたら殺すから」
「うげぇ!な、何でだよっ!」
エルナとジンはそう話している。
僕は用意された食事をいただく。
「あー!ちょっ!兄ちゃん!先に食べてる!」
「…アンタはダメ!」
エルナは食べたそうにしているジンを、
力尽くで食べさせないようにしている。
「…君たちは食べないのかい?」
「…彼女はいらないそうです」
「…少年は食べたそうにしているけどね」
「…食べさせる訳にはいきませんよ」
「どうしてだい?」
村長は本当に不思議そうな顔をしている。
「…毒が入っていますからね」
「っ!」
僕がそう言うと、一瞬だけ驚いた顔をした。
「ははは、まさかそんなことを言われるとはね…私がそんなに信じられないだろうか?」
「…はい。実際に入っていますから」
「えっ!?」
ジンは驚いた顔をしている。
「な、何言ってんだよ…兄ちゃん…さ、さすがに村長さんに失礼じゃんか…」
「…ジン。なら、食べますか?死にはしないでしょうが…苦しむことにはなるでしょうね」
「う、嘘…だろ?…だ、だって、兄ちゃんは食べてたじゃんか…」
「…ジン。僕に毒は効かないのですよ」
僕がそう言うと、ハッとした顔をした。
「…はぁ、だからアンタはダメだって言ったのよ」
「ね、姉ちゃんはさ…き、気付いてたの?」
「そうね…おかしいとは思ったわよ」
「そ、そう…なんだ…」
「…それで、村長さん。もう僕たちは食べませんが…これからどうされますか?」
「やれやれ…食べてくれたら簡単だったんだがね…」
村長はそう言うと、連れてこいっ!と叫んだ。
「グルルルルルッ」
建物の中に魔物が入ってきた。
「…魔物使いですか」
「ふふっ…何だ、気付いていたのかい?そうだよ。ここは魔物を育てる為の村さ…」
「え?じゃ、じゃあ…あの子供達は…」
「ん?あぁ、餌のことを言ってるのかな?本当は君たちも餌になって欲しかったんだけどね…仕方ない」
「ふ、ふざけんなよっ!」
「さぁ、ご飯の時間だよ。いけっ!」
魔物がいっせいに襲ってきた。
一匹、また一匹と殺していく。
「っ!な、何だとっ!ガキに女連れだから大した事ないと思っていたが…ちっ!魔物も腹が減って実力が出せてないな…仕方ない…餌を食ってこい!根こそぎ食っていいぞっ!」
「グァアオオオオオオオッ!」
「ま、マズいっ!」
魔物達は子供達がいる建物へと向かっていく。
僕たちはそれを追いかけようとするが、
次々に魔物が襲ってくるので、
追いかけることができなかった。
「に、兄ちゃん!ヤンがっ!」
ジンが焦ったようにそう叫ぶ。
「…風よ」
僕は風で魔物を吹き飛ばした。
「先に行くわよ!ほら!アンタも!」
「わ、わかったっ!」
エルナとジンがその隙に、
子供達のもとへと駆ける
「…魔法も使えるとはね…誤算だな」
「…帝国に魔物使いが多い理由は…こういうことですか…」
「私たちは魔物を育てるとお金がもらえるからね。親のいない子供なんて沢山いるんだ!ちょうどいいだろう?利用価値が出来たじゃないか」
「…そうですか。それで、その魔物を多く殺されている訳ですが…貴方はどうされますか?」
「そうだね。これ以上、殺されるわけにもいかないからね…君には死んでもらうよ」
「…そうですか」
僕はそう呟いた後にこう続けた…
「…殺すつもりなら、殺されても仕方ありませんよね?」