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「え、えっ!?」
ジンと魔物の間に入るように少女は立ち、
両手を広げて立ち塞がっている。
まるで魔物を守るかのように…
「あ、危ねぇって!そこどけよ!」
「やめてっ!カムカムを殺さないでっ!」
「か、カムカムっ!?」
ジンは少女の行動に、
頭の中が疑問でいっぱいな顔をしている。
「に、兄ちゃん?ど、どゆこと?」
ジンは訳がわからないようで、
僕に尋ねてきた。
「…ジン。剣を…」
「え?で、でも…」
「…大丈夫です」
「わ、わかった…」
ジンは剣をしまった。
「…カムカムとはその子のことですか?」
「カムカムを…殺さないで…」
「…僕たちを襲わないのであれば…殺しませんよ」
よく見ると魔物はまだ小さい…
そして、僕たちに怯えているようだ。
「カムカムは私のお友達なの…」
「…そうですか」
「兄ちゃん?…と、友達って?」
「…そのままの意味ではないですか?彼女にとって…あの魔物はお友達なのですよ」
「えっ!?で、でもさ!魔物じゃん!」
「…そうですね」
ジンは少女のことをよく理解していないようだ。
「…カムカムの食事の時間だったのではないですか?…驚かせてしまったお詫びに…食事のお手伝いをいたしますよ?」
「…いいの?」
少女はまだ警戒しているようだが、
カムカムに食事を与えたいと思っていたようで…
「…かまいませんよ」
「カムカム…お腹すいてるの」
「…そうですか」
僕たちは少女と一緒に歩き出した。
カムカムは少女の後ろをついて歩く。
「なぁ、兄ちゃん…大丈夫なのかよ?」
「…大丈夫ではありませんか」
僕はカムカムを変わった魔物だと思った。
「兄ちゃん!魔物だぜ!」
「…見つけましたね」
ジンは見つけた魔物と戦っていると、
カムカムが一緒に戦いはじめた。
「うわぁっ!び、ビビるじゃん!」
ジンは驚いた声を上げながらも、
カムカムと一緒に戦う。
ジンの攻撃に合わせて、
タイミングよく攻撃をしていく。
「すげぇ…」
ジンはそう言葉を漏らした。
魔物を倒すとカムカムは、
キラキラした瞳で僕たちを見つめる。
「…貴方の為にお手伝いしたのですよ」
僕がそう言うと、少女を見上げた。
「うん。お食べ」
「ガウッ!」
カムカムは嬉しそうに魔物を食べはじめた。
「食事って魔物を食べることだったんだね」
「そりゃそうでしょ?このオオカミも魔物なんだもの。魔物は魔物を食べるわよ」
「…ありがと」
少女は小さな声で感謝を告げた。
「いや、なんか…ごめんな。魔物だからってさ…お友達をイジメられそうになるのはイヤだもんな…お友達とは思ってなくてさ…えっと…」
「ヤン…私の名前は…ヤン」
「ヤンって言うんだな!俺はジン!カムカムだよな!カムカムもごめんなっ!」
「バウッ!」
ジンが謝るとカムカムは返事を返した。
「カムカム強いんだな!ビックリしたぜ!」
「バウバウッ」
「カムカム…私、そろそろ帰らなきゃ…」
「クゥーン…」
「また明日会いにくるから…ね?」
「バウッ!」
「ヤンはどこに帰るんだよ?」
「私はすぐそこの村に住んでるの…でもね、カムカムを連れて行ったらビックリされちゃうでしょ?だから、カムカムとはお外で遊ぶのよ」
「そうなんだな!兄ちゃん!俺たちはどうする?」
「…そうですね」
「一緒に…村にくる?」
「俺らも行っていいのか?」
「うん。よく村に人がくるから大丈夫だよ」
「それなら、行きたい!いいだろ?兄ちゃん!」
「…でしたら、そうしましょうか」
「わかった」
僕たちはヤンに案内してもらい、
村へと向かった。




