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「ジン…本当に行ってしまわれるのですね」
サラ王女は寂しそうに話している。
「え?うん!俺はまだまだ強くなれてないからな!兄ちゃんと姉ちゃんのそばにいて強くなりてぇんだ!」
「そう…ですよね。いつか…いつか…絶対に帰ってきてくださいね?」
「おう!俺は死なないって!そんなに心配しなくてもいいのに…」
多分、ジンとサラ王女は、
少しだけ話が噛み合っていない。
「心配…しますよ。私は…ジンのこと…」
「え?なに?俺のこと?」
「いえ!な、何でもありません!」
「?…そ、そっか」
「はい…いつかまた会いましょうね」
「おう!約束な!」
「はい!約束です!」
ジンとサラ王女は手を強く握り合い、
再会の約束を交わしていた。
「本当にありがとうね」
バルバロはそう言って、
食糧とお金の入った小袋をくれた。
「これは護衛の報酬だよ。旅を続けるんだろう?どこかの街で食糧の補充に使うといいよ」
「…こんなにいただいて、よろしいのですか?」
「ははは、これじゃ少ないぐらいだよ。王女の命を救ってもらったんだからね」
「…そうですか。では、ありがたく…いただきます」
「そうしてくれ」
バルバロから受け取った報酬を、
僕は三等分に分けた。
「…エルナ」
「ありがとう」
「…ジン」
「え?お、俺は受け取れねえよ!」
「は?何言ってんのよ?もともとアンタが受けた依頼でしょ?それを受け取れないってね…」
「…ジン。エルナの言う通りですよ?これはジンも一緒に受けた依頼の報酬です。ジンには受け取る権利があります。それに…今後はお金の使い方も学んでもらいたいと思っていますので…受け取ってください」
「ほ、本当にいいのかな?だって、俺さ…」
「…いいんですよ」
「そうよ。そう言うことは一人前になってから言いなさい」
「う、うん。わかった!ありがとな!」
ジンは嬉しそうに報酬を受け取った。
「…では、僕たちは行きますので」
「ああ、また何かあったらここを尋ねてくれ…我々に出来ることであれば、力を貸そう」
「…ありがとうございます」
それから王都の街を歩く。
「…ここで装備品を買っておきたいのですが」
「…珍しいわね?何か必要な物でもあったのかしら?」
「…はい。今後、何があるかわかりませんからね…念には念を入れておかなければ…」
僕は王都にある装飾品を扱う店を巡った。
「なぁ、兄ちゃんは何を探してるの?」
「…魔法から一度だけ、身を守ってくれる装飾品ですよ」
「へー!そんなのあるの?」
「…はい。今後、何があるかわかりませんからね…」
見つけた。
ブレスレットとネックレスが、
それぞれ一つだけ置いてあった。
「…これですね」
「そうなの?…って、たかっ!え!?これを買うのっ!?」
「…そうですね」
「え?でもさ、さっきの店にも似たようなの置いてあったじゃんか!」
「…先ほどの店のは偽物です。それに同じような金額でしたよ」
「え?で、でもさ…本当にその効果があるのかもわからないのに…買うのは…ちょっと…」
「…僕が買いますからね。それに見たらわかりませんか?」
「え?本物か偽物か?」
「…はい。見るだけでわかると思うのですが…」
「それがわかるのは貴方だけよ…」
「…そうですか」
僕はブレスレットとネックレスを買った。
「まいどあり〜」
店を出ると、
ジンは信じられないような顔をしていた。
「ほ、本当に買っちゃった」
「…命を守る物ですからね。高くても仕方ありませんよ…今後、魔法を使う人間と敵対することもあるかもしれませんからね…」
僕はそう言って、
ジンにブレスレットを渡した。
「え?何で俺に渡すの?」
「…これはジンの為に買ったものですよ?」
「えっ!こんな高いのっ!使えねぇよ!」
「…ただ腕につけるだけですから」
「で、でもさ…そ、それなら俺がお金出さなきゃ!」
「…僕からのプレゼントですよ」
「で、でも…本当にいいの?」
「…もちろんです。今後、いい装備に変えたい時は自分で揃えるんですよ?」
「う、うん!わかった!兄ちゃん、ありがとな!」
「…いえ」
僕はそう答えた後にエルナに話しかけた。
「…エルナにはこれを」
「私にくれるのかしら?」
「…はい。エルナにはお願いしてばかりですからね…感謝の気持ちです」
「私は私の為にしているだけなのだけど?」
「…それでもです。エルナに死んでもらっては、困りますからね」
「…そう。なら、ありがたくいただくわ。付けてくれるのよね?」
「…わかりました」
僕はネックレスをエルナに付けた。
「…ありがとう」
「…いえ、僕も感謝していますよ」
「兄ちゃん!姉ちゃん!美味そうなのあるぜ!」
ジンは屋台を見ながら、
嬉しそうに僕たちを呼んでいる。
「…はぁ、アンタね!買ってもいいけど、買い過ぎないようにしなさいよ!」
「わかってるって!」
「本当にわかってるのかしら…」
「…どうですかね?」
エルナはジンを見て、ため息を吐いた。
「…行きましょうか」
「そうね…あの子が待ってるものね」
屋台を嬉しそうに眺めているジンのもとへと、
僕たちは歩いて近づいた。
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