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それからジンはサラ王女に、

土下座する勢いで謝っていた。


「ほ、本当にごめん!じゃなくて、ごめんなさい!じゃなくて!えっと…え、えっと…」

「ジン…そんなに謝らないでください。黙っていたのは私たちの方なのですから…」

「で、でも、さ、サラ…様?…サラ王女?に対してさ!その…し、失礼なこと?したって言うか…」

「ジンは私の命の恩人なのですよ?それに…同じぐらいの歳のお友達も少ないですので…その…ジンと仲良くなれて…私は嬉しかった…ですよ?」

「…そ、そうなの?ほ、本当に?俺、捕まったりしない?」

「はい!大丈夫です!ジンと私は友達…ですから!」

「じゃあ、今まで通りで…いいのかな?」

「はい!私のことはサラとお呼びください!」

「うん!じゃあ、そうする!へへっ!よろしくな!サラ!」

「ふふっ、はい!」


二人の会話を聞いて、

僕はバルバロに話しかけた。


「…と、言う事になっているようですが…大丈夫でしょうか?」

「…サラ様が…そう言われているからね」

「…そうですか」


バルバロには口を出す権利はなかったようだ。


「…では、護衛はもうよろしいですね?」

「ああ、ありがとう。だが、ここまで護衛してくれたからね…サラ様はどうお考えですか?」

「私もバルバロと同じ考えです」

「はい。でしたら…是非、王城へ案内させてほしいのだが…どうだろうか?」

「えっ!?マジでっ!?行く行く!!いいよな!?兄ちゃん!姉ちゃん!」


ジンは本当に行きたそうにしている。

そして、僕は出来れば行きたくはない…


「…ありがたい申し出ですが」

「えー!何でっ!?せっかくのチャンスじゃん!行こーよ!な!ダメ?」

「…はぁ…まぁ、王城に入れる機会などはそうそうありませんからね…ジンが行きたいなら」

「うんっ!行きたいっ!!」


すかさず、元気に笑顔で…

ジンは嬉しそうに答えた。


「すげぇっ!ひっろぉ!」

「ここを使ってくださいね」

「兄ちゃん見てよっ!こんなに大っきいベッドがあるんだぜ!知ってた!?」

「アンタね…はしゃぎすぎよ?わかってる?僕は子供ですって言ってるようなものよ?」

「そ、そんなこと言ってねぇぞ!」

「そう言っているのと同じようなことを言っているのよ…」

「そ、そうなの?」

「…そう…ですね」


ガーーーーーーンと効果音がつきそうな顔を、

ジンはしている。


何故、そんなにもショックを受けるのだろうか?

ジンはまだ、子供なのだから、

気にしなくてもかまわないというのに…


「ふふっ、ジンが喜んでくれたら、私も嬉しいです」

「お、おう!兄ちゃんと姉ちゃんに子供扱いされたのは…ちょっと、ショックだったけど…でも、すげぇ!嬉しい!!」

「よかったです!」

「サラ様…」

「はい…では、私はお父様にお会いしてきますので…こちらでゆっくりと休まれてくださいね」

「…ありがとうございます」


サラ王女はリリアラと一緒に立ち去っていった。


「…恐らくだが、王は君たちに会いたがるだろう。会ってもらえるだろうか?」

「…ここまで来て…会いたくありませんとは言えませんからね」

「…ありがとう。私からも話はするのだが…君たちが見てきた話もしてはくれないだろうか?」

「…領主たちのことですね?」

「ああ、そういうことになる」

「…知ってる範囲でなら、お話しますよ」

「ありがとう…助かるよ…では、私も失礼するよ」


そう言って、バルバロも立ち去った。


「…王…ね」

「…エルナ。王には会いたくはありませんか?」

「そうね。貴方もそうでしょ?」

「…そうですね」

「…これも…ジンの経験の一つかしら?」


僕は何も答えなかった。

しばらく、待つと王様と謁見することなった。


「貴殿らが我が娘を救ってくれた者か?」

「兄ちゃん!この人が王様なの?」

「…そのようですね」

「貴様らっ!王がお尋ねになっておろうが!」


側近の者が大きな怒声を上げた。


「…礼儀知らずの旅人ですので…ご挨拶等はなしにしていただきたい…。お尋ねの答えですが…僕たちはバルバロに護衛を頼まれましたので、護衛をしたまでです」

「何だとっ!貴様っ!」

「よい…」

「はっ!」


何ともお行儀の良いようで…


「そうであったか…貴殿らの名を聞いてもよいか?」

「俺はジン!」「…エルナよ」


元気よくジンは答えて、

エルナは面倒くさそうに答えた。


「貴様らっ!何だ!その態度はっ!」

「貴殿の名は何と申す?」

「…名乗るほどの者ではごさいません」

「き、貴様っ!王の御前ぞっ!答えろっ!名は何と申すっ!」

「…貴方に名乗る名はありません」

「な、ななな、なんだとっ!王よ!やはり此奴らは帝国の者ではございませんかっ!?」

「ま、待ってください!彼らは帝国の者ではございませんっ!」


バルバロが声を上げたが…


「口を慎めっ!バルバロ!」

「も、申し訳ございません…」

「王よ!名を名乗ることが出来ぬのは帝国の人間だからではないでしょうか?やはり」

「黙れぇい!」


王様が渋い声でそう告げた。


「旅人よ。余にも名乗る名はないか?」

「…はい。ございません」

「き、ききき、貴様っ!」

「よい…お主はちと、黙っておれ…」

「…はっ!」


王様には従順なようだ。

当たり前の話ではあるのだが…


「そうか…では、もう名は聞かぬ…。貴殿らが見てきた話を聞かせてはもらえぬか?」

「…わかりました」


僕は今まで見てきた街の話をした。


魔物を神と崇めている街や、

子供を虐待するような衛兵、

人の妻を殺すような領主の息子…


「そのようなことになっておったか…」

「…そうですね」

「民あってこその国だと言うことが…わかっておらぬようだな…サラからも領主の悪事は聞いておる…話してくれて感謝する」

「…これでもう用は済みましたね?」

「貴様っ!王自ら感謝の言葉を告げたのだぞ!なのにその態度っ!こやつを捕まえろっ!」

「伝令!王都東より魔物の大群が接近中!」

「な、なにっ!?」

「帝国か…皆の者!民を必ず守れっ!」

「はっ!」


バルバロ含め多くの騎士が声を揃えた。


「旅人よ…貴殿らの力も借してはくれぬか?」

「…ジンはどうしたいですか?」

「俺は助けたいっ!」

「…そうですか。では、お手伝いいたしましょう」

「すまぬ…」

「…エルナ。お願いできますか?」

「貴方の為なら…」

「…ありがとう。では、ジン…行きましょうか」

「おう!行くぜっ!」


多くの騎士達と共に魔物のもとへと向かった。

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