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「戻ったか」
バルバロたちは先に戻っていたようだ。
「リリアラたちは先に休んでいるよ」
「…そうですか」
「じゃあ、私も先に休もうかしら?」
「そうしてくれ。ジンくんも疲れただろう?ゆっくりと休んでくれ…」
「…いいの?」
「…はい。ゆっくり休んでください」
「…おう!じゃあ、また明日な!」
エルナとジンは先に部屋へと向かった。
「…君は休まないのかい?」
「…そうですね」
「…何か聞きたいことでもあるのかい?」
「…何故、あんな少人数で行動してたのですか?」
僕の問いかけに、バルバロは困った顔をした。
「…君は…今の領主たちをどう思う?」
そして質問されてしまった。
「…どう…とはどういう意味でしょうか?」
「いや、君から見て、今の領主たちはどのように見えるのか聞いてみたくてね」
「…そうですね。好き勝手にしてるのではないですか?」
「やはり…そのようだな…」
「…それを見てきたのですか?」
「ああ…その通りだ」
「…そういうことですか」
彼らがしてきたことが、わかった。
「君は…本当に話が早いな…」
「…そうでしょうか?」
「…すぐに理解してくれるじゃないか」
「…色々と…見てきましたからね」
「…そうか」
バルバロはそう答えてから、
何も話さなくなった。
「…バルバロもそろそろ休まれたらどうですか?」
「そう…だな…。うん。そうするよ…」
彼も休むために部屋へと向かった。
僕は窓から空を見上げる。
ここから見る夜空も星は見えなかった。
それから御者をして王都を目指す。
馬車の中ではジンとサラさんの、
楽しそうな話し声が聞こえてくる。
「アンタたちね…うるさいんだけど?」
「え?そんなにうるさくねぇじゃん!」
「え?う、うるさかったですか?」
「サラ!姉ちゃんはこうやって言ってるけど、本当はそんな風に思ってないんだぜ!」
「そ、そうなんですか…?」
「あのね…うるさいからうるさいって言ったのよ?思ってないことをわざわざ言う必要があるのかしら?ないわよね?」
「そ、そう…ですよね…」
「ちょっと!姉ちゃん!サラに冷たいじゃん!俺たちは護衛をしてんだぜ!サラは護衛対象なんだろ?ちょっとは優しくしろよな!」
「…はぁ、命は守るわ。でも、うるさいのは本当よね?わかってる?そこのお二人さんが冷や汗ダラダラ流してるんだけど?」
「え?うわぁっ!本当だ!ば、バルバロさん!リリアラさん!大丈夫すか!?」
「あ、ああ…ありがとう…だ、大丈夫だ…」
「いやいや!全然、大丈夫そうじゃないっすよ!どうしたんすか!?」
きっと、ジンのせいだろう…
僕はそう思ったが、何も言わなかった。
時折、魔物と遭遇はしたが、
無事に王都へと着くことができた。
「すげぇっ!でっけぇっ!!」
ジンは王都を見てはしゃぎ、
王城を見て、またはしゃいだのだった。
「え?え?何で城に行くの?」
「アンタって…ホントにバカなのね…ここまできても気付かないなんて…」
「ん?どーゆうことなの?」
「ジン…私は…この国の王女なのです」
「へ?」
ポカーンとした表情をしている。
「う、嘘だよね?」
バルバロに聞いたが、首を横に振っている。
「じょ、冗談だよね?」
リリアラに聞いたが、首を横に振っている
「だから、言ったでしょ?ここまできても気付かないなんて…バカなんじゃないのって」
「う、嘘だぁぁぁぁああああああ!」
それからジンはサラ王女に、
土下座する勢いで謝っていた。