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馬車の御者は僕がすることにした。
「君は御者もできるんだね」
「…馬達が僕の言葉を聞いてくれるだけですよ」
「そ、そうか…」
バルバロは困った表情で呟いた。
「お姉様は剣がお強いのですね」
「お姉様って…やめてくれるかしら?様付けされるのは気持ち悪いわ。私はエルナよ」
「も、申し訳ありません…」
「謝らなくてもいいわ」
エルナはサラさんに対して、
面倒な表情で話している。
「え、エルナさんは剣がお強いようですが、何処かで学ばれたのですか?」
「なに?学ばなきゃ使っちゃいけないわけ?」
「え?い、いえ…そういう訳では…」
「彼にも聞いてたけど、生きる為に身につけただけの話よ?それが悪いのかしら?学ばなきゃ使っちゃいけないのかしら?」
「…エルナ」
「…はいはい。そうね。私も彼も生きる為に身につけただけなの。どこで学んだのかって聞かれたら、自分自身で学んだんじゃないかしら?」
「そ、そうだったのですね…も、申し訳ありません!…その…私…」
「…謝る必要はありませんよ。気になってしまうことは聞きたくなりますよね?…ジンもよく聞いてきますので…ですが、生きる為に…試行錯誤して必死に生きている人が大半ですので…お聞きになる際は、そのことを考えた上でお聞きになった方がよろしいかもしれませんね」
「そ、そうですね…今後は、気をつけますね」
「俺は俺は!?」
「え?な、何がですか?」
「えー!兄ちゃんと姉ちゃんには聞いてるのに、俺には聞いてくれないわけ?」
「え、で、でも…」
サラさんは悩んだ表情で僕を見ている様だ。
「…聞いてあげてください」
「は、はい。でしたら、ジンさんは」
「あー!さんって言わなくてもいいぜ!俺もサラって呼んでいいかな?」
「え、えっ!?」
「え?ダメ?」
「い、いえ…だ、ダメじゃありません…けど…」
バルバロは少しだけ困った表情をしていたが、
ジンはその事には気付いていないようだ。
「で、では…その…じ、ジンはどこで剣を学ばれたのですか?」
「俺はね!姉ちゃんに教えてもらった!姉ちゃんってさ!めっちゃ強いんだぜっ!もうさ!ビューって走ってバッシャーって魔物をやっつけていくんだ!」
「そ、そうなのですね」
「すげぇ強いのっ!そんな姉ちゃんに教えてもらったからさ!俺も強くなったんだぜ!」
「教えてくださるのはエルナさんだけなのですか?」
「んー?兄ちゃんは色んなことを教えてくれるかな?お金の稼ぎ方とか、焚き火に火をつける方法も教えてくれたし…あっ!知ってるか?人ってな!気配ってのがあんだぜ!魔物にもあるみたいでさ!まだよくわかんねーんだけど…そういうことも教えてくれたりするぜっ!」
「お二人とも、お優しいのですね」
「うん!だからさ!姉ちゃんって口が悪いからさ…サラもビックリしちゃったと思うけど…姉ちゃんのこと嫌いになんないでよ…」
「…私は嫌いになんてなっていませんよ」
「本当に?」
「はい、本当です」
「よかったぁ〜」
ジンとサラが笑顔で話している姿を見て、
エルナは何も言わなくなった。
「…バルバロ。魔物が来ます」
「っ!」
僕がバルバロに声をかけると、
バルバロは驚いたようだったが、
すぐに戦闘体制に入った。