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「…ジン。リリアラを困らせてはいけませんよ」
ジンはリリアラにすごい勢いで話しかけている。
「えー!だってさ!リリアラさんは兄ちゃんみたいに魔法使えるんだぜっ!?すごいじゃんか!」
「…魔法を使える人だっていますよ」
「…まぁ、そうだけどさ。俺、兄ちゃんとリリアラさんしか魔法使える人知らねぇもん!」
「…魔法を使える人は珍しいですからね」
「そのことですけど…貴方は帝国式の魔法を使われるているんですか?」
「ていこく?ていこくって何?」
首を傾げながら聞いてきた。
「…帝国はこの国、王国の隣にある国のことですよ。帝国と王国は仲が悪くてですね。よく…喧嘩をしているんですよ」
「喧嘩してるの?」
「…そうですね」
「…仲良くしたらいいのに」
「…ジンみたいに考えている人もいるかも知れませんが…お互いに殺し合いをしていますからね…もう仲良くするのは難しいのかもしれませんね」
「殺し合いの喧嘩してんのっ!?」
「…そうですよ」
ジンは驚いた表情をしている。
「…その帝国式の魔法をお使いなんですか?でも、帝国式の魔法とも…またちょっと違う様な…」
「…僕は帝国の人間ではありませんよ」
「…でも、王国式の魔法ではありませんよね?」
「…そうですね」
「…見たことのない魔法でしたので…詠唱はされていましたか?」
「…質問が多いですね」
「あっ!…す、すいません」
「リリアラ?困らせてはいけませんよ?」
「も、申し訳ありません!」
「えっと…お兄様でいいのかしら?」
サラさんは僕にそう問いかけてきた。
「…お好きにお呼びください」
「そうですか。でしたら、お兄様と呼ばせていただきますね。お兄様は魔法はどこで学ばれたのですか?」
「…そうですね。物心つくころには魔法を使うことが出来ましたので…よく覚えていませんね」
「そうですか…」
「っ!そ、そんな幼い頃から魔法を使えたんですかっ!?お、おかしいですっ!!」
「そう…言われましても…使えたのは事実ですよ?僕の魔法は帝国式とも王国式とも違うようですので…どうして使えるのか…自分でも不思議でありませんよ。ですが…生きる為には、使えるものは使わせてもらっています」
「た、確かに…どちらでも無さそうでしたが…魔法に精通した方なら…その魔法も解明することが出来ると思いますが…」
「…申し訳ありません。僕には興味ありませんので…」
「で、ですがっ!その魔法が解明できたら!王国式の魔法も格段にレベルが上がるのですよっ!?もしかすると…帝国の魔法を…」
「リリアラっ!」
「っは!…す、すいません」
「リリアラが興奮してしまって、すまない…」
「…いえ、かまいませんよ」
リリアラが僕に詰め寄ってきたが、
バルバロがそれを止めてくれた。
「リリアラは魔法のことになると、周りが見えなくなってしまうんだ」
「す、すいません。気をつけます…」
「そろそろいいんじゃないかしら?それとも、まだ休まないといけないぐらい疲れてるわけ?」
「いや、そうだな…彼女の言う通りだ。そろそろ出発しようか」
エルナが面倒くさそうに言ったおかげで、
休憩を終えることにした。