30
「アンタ…剥ぎ取るの下手くそすぎないかしら?」
エルナはジンのことを、
可哀想な人を見る様な目で見ている。
「そんな言われたってさっ!初めてだから仕方ねぇじゃん!!」
「それにしても…うん。それにしてもよ…」
「何だよっ!?それにしてもって!!」
「もう一回…教えてあげるわ…」
エルナは珍しく、
ジンに優しい声色で話しかけている。
ジンが剥ぎ取った素材は、
見るも無惨な姿だった。
うん。
これじゃ、買い取ってもらえませんね…
僕は心の中でそう思った。
「…違うわよ…こう。違うわ…だから、そこを…こうして…うん。アンタじゃ無理よ…」
「何でだよっ!言われた通りにしてんじゃんっ!兄ちゃんっ!姉ちゃんがさっ!」
「…ジン。頑張りましょう」
「だってさっ!無理だって言うんだぜっ!」
もう一度、剥ぎ取った素材も…
剥ぎ取られた素材が可哀想だ。
「…ジンは力が入りすぎているのではないですか?もう少し、肩の力を抜いて…」
「でもさ!力入れなきゃ、魔物が硬くてナイフも入らないよ?」
「…僕はナイフも使いませんからね」
「…兄ちゃんに聞いた俺が間違ってた」
ジンは僕に聞くのを諦めたのか、
エルナに何度も違うと言われながらも、
必死に剥ぎ取る練習を行った。
「まぁ…買い取って…もらえるかしらね」
「…そう…ですね」
ジンが頑張った結果を見て、
僕とエルナはそう呟いた。
「次はぜってぇ上手くしてやるからっ!」
「…また教えてあげるわ」
また、魔物を倒すことがあったら、
ジンにも練習させながら、
お金にも変えられるように、
僕とエルナは素材を集めていた。
剥ぎ取りはまだ上手く出来ていないが、
ジンは強くなってきている。
最近は、エルナに口うるさく言われなくなり、
一人で魔物を対処できる様になってきた。
「…はぁ…少しは強くなってきたから…教えることも無くなったと思ったのに…」
「…申し訳ありません」
「貴方が謝ることじゃないわ。…頼まれたからにはしっかりやり遂げるわ」
「…ありがとうございます」
エルナは優しく微笑みながらもそう言った。
「早く行こうぜっ!」
ジンは早く剥ぎ取りが、
出来るようになりたい様で…
僕とエルナを急かすのだった。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁあああああ!」
男性の叫び声が聞こえた。
「えっ!?な、何の声!?」
ジンは突然聞こえた叫び声に驚いている。
周りを見渡すと、
遠くの方で馬車が襲われていた。
「に、兄ちゃんっ!襲われてるっ!」
「…そうですね」
「た、助けなきゃっ!!」
「アンタね…学んでないわけ?」
「で、でもさ…やっぱり、助けてなきゃっ!」
ジンはそう言って、
馬車の方へと走っていった。
「…いいのかしら?」
「…いいのではないですか?」
「…そう。…貴方がいいなら、私はいいけど…」
「…ジンは学んでいない訳ではありません。それでも、人を助けたいと思うことは素敵なことだと思いますが…」
「…そうね。貴方の言う通りかもね…」
「…後は、どの様に行動をするのか…それを見届けましょうか」
「…本当に保護者みたいね」
「…今はジンの保護者ですからね」
「…そうね。なら、保護者の貴方の為にも…私も行動するわね」
エルナはそう言って、走り出した。
「…ありがとうございます」
僕は感謝の言葉を呟き、後を追った。
「大丈夫すかっ!?」
ジンは馬車の護衛に声をかけながら、
魔物と戦っている。
「だ、大丈夫だ!だが、君も危ない!すぐに逃げるんだ!」
「何言ってんすか!?俺だって戦えるんすよ!手伝いますっ!」
魔物の攻撃を避けながらも、
剣で斬りつけていく。
その姿を見て、戦えると判断したのだろう。
「す、すまないっ!助かるっ!」
彼もまた魔物へと剣で斬りつけた。
馬車にいる護衛は二人。
周りに殺された人間の数は四人…
結構、殺されてしまったな。
魔物の数は10を超える。
こんな数の魔物に襲われるのは珍しい…
「兄ちゃんっ!姉ちゃんっ!」
「仕方ないから手伝ってあげるわ…」
「か、彼らは!?君の仲間か!?」
「そうすよ!」
「助かるっ!」
ジンとエルナ、護衛の彼は剣で戦う。
もう一人の護衛は何か呟いている様だ。
「ファイヤーボール!」
もう一人の護衛が大きな声でそう言うと、
魔物が炎に包まれた。
ブックマーク登録してくださり、
ありがとうございます。
とても嬉しく思います。
こうしてお読みいただける方が
一人でも多く増えることに感謝しております。
大切な皆さまのお時間を、
この作品を読むためにお使いいただき、
ありがとうございます。
今度ともお楽しみいただければ、幸いです。