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「や、やった〜!!街に着いたっ!」
ジンは嬉しそうにはしゃいでいる。
久しぶりの街なのだから、
仕方ないのかもしれないが…
「アンタね…はしゃぎすぎなんだけど…」
「だってさ!嬉しいじゃんかっ!」
「街に着いただけで、そんなに喜べるものかしら?」
「…ジンは旅をしてから、初めての街ですからね」
「だとしても、はしゃぎすぎよ…うるさくて仕方ないわ」
「…そうですね」
「兄ちゃん!姉ちゃん!あそこから美味そうな匂いがしてくるぜ!なぁ、見に行ってもいい?」
「…かまいませんよ」
「やったー!ちょっと、見てくる!」
ジンは屋台を見に行った。
だが、すぐに引き返してくる。
「…俺…金、持ってないや…」
ジンはションボリとした表情で呟いた。
「…そうですね。ジンにもお金を稼ぐ方法を教えてあげないといけませんね…」
「えっ!いいのっ!?」
「…はい。まずは魔物の素材を剥ぎ取って買い取ってもらう方法ですが…剥ぎ取り方は、エルナが教えてくれますか?」
「…わかったわ」
「…これなら、一緒に旅をしていてもお金を稼ぐことができますね」
「自分で稼いだお金は好きに使ってもいいのかっ!?」
「…アンタね…そのお金で食糧も買い揃えなきゃいけないのよ?自分で稼げるようになったら、アンタの分の食糧なんてもう用意してあげないからね?」
「わ、わかってるよ…」
「アンタのことだから、屋台で使い切ってしまうんじゃないかしら?」
「お、俺はそんなことなんかしねぇって!」
「…本当かしら?」
「ホントだってっ!!」
ジンはちょっと不貞腐れながら、そう言った。
「…とりあえずは、その方法で稼いでもらいますが…いつか自分一人で生きていく方法なら、他にもありますよ。傭兵として生きていくか…衛兵として生きていくか…。衛兵はいい領主の元でないと苦労すると思いますが、死ぬ確率は傭兵よりは低いですね。逆に、傭兵は死ぬ確率は高いかも知れませんが…お金は多く稼げるかもしれません。行商の護衛など、さまざまな仕事がありますからね」
「そうなんだね…」
「…別にこれだけではありませんよ?知識がいりますが、行商として生きていく道もありますし…それは今後、ジンが興味のあることを調べてみたらいいと思いますよ」
「う、うん…わかった」
「…とりあえずは、一人になっても死なないぐらいには強くなりましょうか?」
「…が、がんばります」
「アンタがそれだけ強くなるまでに…どれだけ時間がかかるでしょうね?」
「…がんばるよ」
「言葉で言うのは簡単なことよ?」
「わ、わかってるって!そんな何回も言わなくてもいいじゃないか…」
「何回も言わせているのはアンタでしょ?それとも何?私が口うるさいやつだって言いたいのかしら?」
「そ、そんなこと言ってないじゃん!」
「私にはそう聞こえたんだけど?」
「違うってっ!」
エルナとジンは口喧嘩をしているが、
仲が悪いわけではないのだろう…
エルナはからかっているように話していて、
ジンは本当に不貞腐れている。
エルナがジンのことを切り捨てないように、
なってくれるとありがたいのだが…
「…とりあえず、素材の買い取りをしてもらいに行きましょうか?」
「…そうね」「うん、わかった」
エルナとジンは同じタイミングで、
返事を返した。