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「…行くのかしら?」
夜になり、また二人から離れようとしたら、
エルナから声をかけられた。
「…お願いしてもよろしいですか?」
「もちろんよ」
「…ありがとうございます」
感謝の言葉を伝えて、僕は離れる。
もう食糧は二人で一日分ほどしか、
残っていない。
その食糧はエルナとジンに残さなければ…
別に僕はその食糧を、
食べる必要はないのだから…
暗がりの中、一人で歩き続ける。
そして見つけた。
僕は全力で走り、それに近づく。
思い切り頭を殴り潰した。
熊のような魔物だったが、
僕が早く近づきすぎて、
気づいていなかったようだ
近くにいた魔物が仲間を殺されたことで怒る。
「グォォォォォォォオオオオオ」
全部で6体か…
僕は魔物の攻撃を避けながら、
一匹、また一匹と殴り殺していく。
そんなに時間をかけずとも、
全ての魔物を殺し切った。
僕は魔物の死体を一箇所に集め、
肉に齧り付く。
普通の人間は魔物を食べると、
死んでしまうらしい。
だが、僕は…
魔物の返り血で真っ赤に染まりながらも、
魔物を食した。
「に、兄ちゃん…?」
そう声がして、後ろを振り返る。
「…ジン。どうかしました?」
「に、兄ちゃん…な、何してるの…?」
「…見ての通りですよ」
「え…だ、だって…」
「見てわからないのかしら?彼は魔物を食べていただけよ?」
「…エルナ」
ジンの後ろからエルナが歩いてきた。
「彼は魔物を食べているの。見たらわかるでしょ?私達の食糧が減らないように…彼は魔物を食べてくれていたのよ?」
「で、でも…ま、魔物を食べたら…」
「それ以上聞くのはやめなさい。それ以上聞いたら…アンタでも殺すわよ?」
「…エルナ」
「…話す…つもりなの?」
「…いえ…ですが、僕は魔物を食べても死にはしません」
ジンは僕の話を静かに聞いている。
「…それが何故かは話せませんし、話しません。ただ、死なないということだけ…話しておきます」
「に、兄ちゃん…」
「…僕が怖いですか?」
真っ赤な返り血に染まっている…
肉を齧り付いていたので、
口からは血が流れ落ちている。
「…もし、僕と一緒に居れないようでしたら…一緒に居なくてもいいのですよ?それはジン…貴方が決めることです」
「お、俺は…」
ジンは悩んだ表情で僕を見つめる。
「俺…兄ちゃんと一緒にいたい…。兄ちゃんが何で魔物を食べられるのかわかんねーし…こうやって見ちゃうと…ちょっとだけ怖いって…思っちゃうけど…でも、でもさっ!俺のことをちゃんと考えてくれてることはわかんだっ!…爺ちゃんと…同じ空気を感じんだ…」
「…そうですか」
「だ、だからさ!俺っ!兄ちゃんと一緒に居てもいいかなっ!?」
「…ジンが…それでかまわないのなら…一緒に居ましょうか」
「う、うんっ!」
ジンは嬉しそうに強く頷いた。
「でもさ…これも俺のせいなんだよな…俺が食糧を減らしちゃったから…」
「そうね。アンタがバカなことをしたから、彼は魔物を食べているわね」
「そ、そうだよな…兄ちゃん…ごめんな…」
「…謝らなくてもいいですよ。別に一人で旅をしていたら、よくあることですので」
「でもさっ!俺はちゃんと兄ちゃんの秘密は守るからなっ!俺が仲間だからさ…見せてくれたんだろ?」
ジンのその問いかけに、
僕は何も答えなかった。