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あれからジンはエルナの言うことを
よく聞くようになった。
「何度言ったらわかるのかしら?周りを見なさいと言っているのだけど?」
「ご、ごめん!わかったよ」
エルナはジンが出来ていないことを、
的確に伝えている。
こうやって見るといい師弟関係に、
思えるのだが…
「はぁ…アンタに教えるのは無駄な時間に思えて仕方ないわ。もういいんじゃないかしら?」
「…エルナ」
「…わかったわよ」
すぐにジンを切り捨てようとしてしまう。
「お、俺っ!頑張るからさっ!」
「なら進歩の一つぐらい見せて欲しいのだけど?全く進歩が見えないわ」
「ね、姉ちゃん…ごめんなさい」
「謝る時間があるなら鍛えなさい」
「ご、ごめんっ!わかったっ!」
そろそろ日も落ちてきたので、
野宿の準備をしている。
「…そろそろ食糧がなくなるわね」
長い間、街に寄ることもなく旅を続けていた。
その為食糧が底を尽きかけているのだ。
「…街に寄れていませんからね」
「ご、ごめんなさい…俺が…俺が…」
ジンはドゥーサに食糧を分け与えたことを、
後悔しているようだった。
「た、足りなくなったらさ!俺は食べなくても大丈夫だからさ!兄ちゃんと姉ちゃんが食べてくれよな!」
「…アンタってさ…死にたいの?」
「いや…だってさ…」
「はぁ…ただでさえお荷物なのに、これ以上お荷物になりたいって言ってるのかしら?」
「…で、でも」
「…ジン。大丈夫ですよ。食糧が無くなる前に街につけるようにしましょう」
「…う、うん」
ションボリしながらもジンは頷いた。
焚き火の前でエルナとジンが食事をしはじめた。
「兄ちゃんは食べないの?」
「空腹でない時に食事をとる必要はありませんからね」
「そ、そっか。じゃ、じゃあ、俺もっ!」
ぐぅー
ジンのお腹の音が鳴った。
「あっ…」
「ジンは食べてください。しっかり食べないと明日も動くことが出来ませんよ?」
「…いいの?」
「もちろんですよ」
「うん…。兄ちゃん、ありがと…」
ジンは食事をとると、
草の上に寝転がり眠りについた。
「ねぇ、あの子のこといつまで面倒見るつもりなのかしら?」
「…頼まれましたからね」
「次の街で傭兵にでもしたらいいんじゃないかしら?」
「…それを決めるのはジンですよ。ジンの人生ですから…ジンが自分で人生を決められるようになるまでは…」
「…それはいつになるのかしら?」
「…さぁ、ジン次第ですかね?」
「そう…。貴方がそれでいいのなら、私はそれでかまわないけれど…それより食事はとらなくてもいいのかしら?」
「…どう…ですかね?」
「今なら大丈夫だと思うけれど?ジンも寝ているのだから…仕方ないから面倒は見ておくわ」
「…お願いできますか?」
「貴方の為なら面倒ぐらい見るわ」
「…ありがとうございます」
僕は立ち上がり、
二人から離れた場所へと移動した。