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「なぁ、兄ちゃん?あそこに困ってそうな女の人がいるんだけど?」
ジンは突然、そう言った。
僕はジンの指差した方を見ると、
確かに足をおさえている女性が見えた。
「助けてあげた方がよくない?」
「…どうでしょうか?」
「助ける必要なんてないわ」
「姉ちゃんっ!何でそんなこと言うんだよ!困ってる人は助けてあげなきゃダメだろ?」
「…本当に困っているのかしらね?」
「ふん!姉ちゃんにはわからねぇんだ!俺っ!助けてくるっ!」
ジンは走って女性に近づいていった。
「…いいの?」
「…好きにさせたらいいのではないですか?」
「そう…。貴方がいいのならいいわ…」
僕とエルナもその後を追う。
「なぁ、大丈夫か?怪我してんのか?」
「あ、う、うん。そうなの?助けてくれる?」
「もちろんだぜっ!兄ちゃん?薬草使ってもいいか?」
「…それはジンにあげた分ですので…好きに使ってかまいませんよ」
「わかった!ほら、この薬草使えよっ!」
「あら?優しいのね!ありがとう」
「へへっ!いいってことよ!」
ジンは嬉しそうに笑っている。
「ねぇ、もしよかったら私も一緒に連れて行ってくれない?」
「もちろんだぜ!な?いいよな?」
「…ジンの好きな様にしてください」
「ほら!いいってよ!」
「ありがとう。本当に優しいのね!」
それからその女性に肩を貸してあげながら、
ジンは僕たちの後をついてきた。
「兄ちゃん!そろそろ休もうぜ!このお姉さんが疲れちまってる!」
「…そうですか。もう歩くのは無理ですか?」
「ご、ごめんなさい。今日は…もう…」
「ほらなっ!いいだろ?」
「…わかりました」
それから休む準備をしていると、
ジンは食糧を分け与えていた。
「ほら!これ食べなよっ!」
「い、いいの?」
「食べるのないんだろ?いいぜっ!」
「ありがとう!」
「へへっ!いいってことよ!」
ジンは本当に上機嫌だ。
「アンタにあげられる食糧はもうないわよ?」
「わかってるって!」
「…本当にわかっているのかしら?」
エルナはため息をついていた。
「…足りなくなったら、僕の分をあげますよ」
「…いいの?それだと…」
「…かまいません」
「…そう」
女性の名前はドゥーサと言うようだ。
魔物に襲われて、怪我をしてしまった所に、
僕たちが通りかかったようだ。
「本当にタイミングがよかったな!俺らがいなかったら危なかったんじゃねぇか?」
「うん!本当にそうなの!だから、助けてくれてありがとうね!」
「いいってことよ!へへへっ!」
「…ジン。そろそろ休む時間ですよ」
「あっ!ワリィ!じゃあ、俺は寝るな!おやすみ〜!!」
ジンはそう言って、身体を休めた。
「貴方達は休まないのかしら?」
「…そうですね。魔物に襲われてもいけませんので」
「そうなのね…」
「…そうですね」
彼女はそれから何も言わなかった。
「…貴女は休まないのですか?」
「そ、そうね。そろそろ休もうかしら?」
彼女はそう言って、ジンの近くへと移動した。
「いってぇ!」
突然、ジンが大きな声をだした。
ドゥーサはジンの腕を切りつけた後、
首元にナイフを突きつけているようだ。
「な、ななな、へ?ど、どゆことだよ!?」
「武器を捨てなさいっ!早くっ!」
ドゥーサをそう言った。
周りからゾロゾロと男性が現れる。
「え?ど、ドゥーサ?ど、どういうこと?」
「ボクちゃん?ありがとねー!お陰様で食糧がた〜んまり手に入ったわぁ〜」
「へへへ、お嬢の美しさに男は黙ってられやせんもんね!」
周りの男性達が笑いながらもそう言う。
「な、だ、だって…け、怪我して」
「あんなの嘘に決まってるでしょ?これだからボクちゃんは簡単に騙されるのよ?アンタ達は警戒してたようだけど?人質を取られたら何も出来ないわよね?」
「う、嘘だろっ!?だ、だって…」
「…アンタがバカなだけよ?勝手に盗賊を助けて人質になるなんて本当にバカね…これじゃあ、バカな人に失礼だわ。このまま死んだらどうかしら?」
「ね、姉ちゃん…」
「…ジン。人を助けることは素敵なことかもしれません。ですが、それで自分の身を危険に晒すのは違うのではないですか?」
「………」
「…ジンの行動で…ジンだけでなく。僕やエルナが殺されていた可能性もあるんですよ?」
「ご、ごめんなさい…お、俺っ!」
「アンタらさぁー?私達を無視して話続けてないでくれない?殺されていた可能性じゃなくて、今から殺されるの?わかる?バカなの?」
ドゥーサはイライラしながらも、
僕にそう言った。
「…風よ」
僕がそう呟くとドゥーサが吹っ飛んだ。
その隙に、エルナが周りの男性達を斬り殺す。
僕も男性達を殴り殺しながら、
ドゥーサの元へと移動した。
「っつ!ま、魔法使いかっ!」
「…ありがとうございます」
「な、何の感謝だよっ!?」
「…また一つジンの経験になりました」
「だ、だったら、私を助けてくれよっ!もうこんなことはしないっ!な、なんなら私の身体を好きにしてもいいっ!だ、だからっ!」
「…興味ありませんね」
「な、なんだってっ!?」
「…殺すつもりなら、殺されても仕方ありませんよね?」
僕はそう尋ねながら、彼女の顔を殴り潰した。
もとの場所へ戻ると、
一人の男性の足を切り落とし、
クスクスと笑っているエルナがいた。
「…エルナ」
「あら?もう終わったのね…残念」
そう言って、彼を切り殺した。
ジンはエルナと僕が殺していく姿を見て、
震えていた。
返り血の浴びた僕たちが怖いのかもしれない。
「兄ちゃん…姉ちゃん…ご、ごめんなさい。お、俺の…俺のせいで…」
「…その通りよ?アンタのせいで面倒なことに巻き込まれたの。わかってるかしら?」
「う、うん。ほ、本当に…ごめんなさい」
「なら、彼の邪魔だけはしないで」
「わ、わかった」
ジンは何度も何度も…強く頷いていた。