20
「…おはようございます」
「ん?…あ、ああ…おはよう」
どうやら俺は寝過ぎてしまったようだ。
昨日の酒のせいだろうか?
例え、雨風がしのげる小屋だとしても、
魔物に襲われる可能性があるのだから、
ここまで熟睡することはなかったのに…
馬だけでなく…
俺まで安心させられたのかもな…
身体を起こすと、昨日の疲れは無く、
万全の状態になっていた。
「起こしてくれたんだな…すまない」
「いえ…雨も上がりましたので…そろそろ出発することができるのではないかと思いまして…」
窓から空を見上げると、
雨は上がって、少しだけ青空が見えていた。
「すまないな…ありがとう。俺は準備をするとするよ…」
小屋から出て、馬達に餌をあげてから、
馬車の荷物を確認する。
…何も無くなってはいない。
手荷物の中も確認したが、全て揃っていた。
安心して熟睡できたと思っていたくせに、
やはり疑ってかかる自分にため息をついた。
「よし、俺の準備は出来たぞ?兄ちゃん達はどうだ?」
「…大丈夫ですよ」
「そうか、なら近くの街まで乗っていくよな?」
「…よろしいのですか?」
「もちろんだ!それなら早く乗りな」
また二人を乗せ、馬車を走らせる。
「そういや、名前を教えてなかったな。俺はガイルだ。行商をやっている。旅人さん達は名前を教えてくれるか?」
「…名乗るほどの者ではありませんので」
「…そうか」
きっと、名乗ることが出来ないのだろう。
だが、俺は深く聞くことはなかった。
それからは何事もなく街に着いた。
「兄ちゃんのおかげで助かったよ。ありがとな」
「いえ…こちらこそ雨をしのぐことができましたので…食事もいただきまして…ありがとうございます」
「いや、礼を言うのは俺の方だ。ありがとうな」
彼はまた感謝を伝えてから、馬車を降りた。
「俺はもう少しこの街にいるからよ。また会ったら仲良くしてくれよ。そうだ!怪我した時の為に薬はいらないか?旅の必需品だろ?」
俺は薬を売り渡っている。
だからもし必要なら、
安くで売ろうと思ったのだが…
「いらないわ」
彼女にいらないと言われてしまった。
もしかしたら、
十分な量を持ち合わせているのかもしれない…
それなら確かに必要はないな。
「そうか。もし必要になったら行ってくれ。それじぁ、死ぬなよ?」
何故だろう?
ポロッと口から溢れ出た言葉が、
死ぬなよだった。
俺は彼らに死なないで欲しいと、
思っているんだろうか?
わからないが…
多分、間違いではないなと思いながらも、
馬車を走らせた。