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体調が悪くなった男性の元へと、
一緒に移動した。
「先生っ!父が昨日から変な様子でして…さっき体調が急変したんですっ!」
「っぐ…うぅ…」
男性は青褪めた顔で、
汗をダラダラとかいている
「これは…」
「ど、どうなんでしょうか?」
「そうだな…」
先生は男性を触診しながらも、
何の病なのか調べているようだ。
「先生…どうすか?」
「ふむ…。これは…私ではどうにも…仕方ない…か…」
そう言って、赤い液体が入った小瓶を、
鞄から取り出した。
「これを飲ませてくれ」
「は、はいっ!」
赤い液体を飲むと男性は少し顔色が良くなった。
「これで大丈夫だろう」
「先生っ!ありがとうございます!ありがとうございます!」
「いえ、大丈夫ですよ」
「やっぱり!先生はすげーっす!」
「ドン?ここには病でお辛い方もいるんだ…静かにしないといけないよ?」
「す、すいやせん…」
「これで大丈夫でしょう。2〜3日は様子を見て、安静にしていたら元気になると思いますので…また体調が悪くなるようでしたら、教えてください」
「わ、わかりましたっ!」
「では、私はこれで失礼するよ」
僕は先生と一緒に男性の家から出た。
「やっぱり先生はすごいっすよ!お客人も見てたでしょ!?どんな怪我も病だって治せちゃうんすよ!」
「ドン、何度も言っている様に、私だって治せないこともあるんだよ?」
「何言ってるんすかっ!俺だって先生に治してもらったから今があるんすよ?あの薬を使ったらどんな病だって治せるじゃないすか!」
「あれはね…数に限りがあるんだよ。だから、すぐに使っていい訳じゃないんだ。他の薬で治せるならそうした方がいいんだよ」
「そ、そうなんすね…高い薬なんすか?」
「そうだね…なかなか手に入れることが出来ない薬かな?」
「そうなんすか…」
「面白いものを見せていただきました。ありがとうございます」
「いや、それほどでもないよ。これからどうするんだい?」
「そうですね…とりあえず、今日のところは宿を取ろうと考えています」
「それならウチでよければ泊まらないかい?」
「ありがたい申し出ですが…」
「そうか…お客人のお話もお聞きしたかったが…よければ明日にでも聞かせてくれないか?」
「…わかりました」
「ありがとう。では、失礼するよ」
先生とドンは一緒に帰っていった。
さて…宿屋を探すか…
「宿屋なら取ったわよ」
「…僕が宿を取らないつもりだったらどうしたんですか?」
「それならそれでかまわないわよ。私が勝手にしたことなんだから」
「…そうですか」
「それで、どうするのかしら?」
「…お言葉に甘えます」
「そう…。なら、こっちよ」
僕はエルナについていき、
宿屋に泊まった。
夕食を食べながらこの街の話を教えてくれた。
「この街の人達はみんなあの先生に救われたことがあるみたいね」
「…そうなんですね」
「ちょっとした、街の英雄かしら?」
「…そうなるのではないですか?」
「貴方はどう思っているの?」
「…どう…とは何でしょうか?」
「別に話すつもりがないならそれでいいわ」
それからエルナは何も言わなかった。