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僕はお爺さんと一緒に館の中を歩く。


周りでは盗賊団と衛兵、傭兵が戦っている。

どちらなのかわからないが、

死体が転がっている。


「何故、殺し合わせばならんのか…」


お爺さんはポツリと呟いた。


「お、おい!あんた!何やってんだっ!そいつは盗賊団のお頭だぞっ!」

「…違うのではないですか?」

「な、なんだとっ!?」

「人質に取ったところで襲われているじゃないですか」

「そ、それは…」

「…関係ない人を巻き込むのはやめてください」

「っく!クソっ!」


盗賊と戦いながらも悪態をついている。


「俺は許さないからなっ!っぐは!」


話しながら戦っているから…

盗賊に腹を突き刺されて倒れてしまった。


「くっ!兄ちゃん!大丈夫!?」

「…そちらこそ大丈夫ですか?」

「お、おう!俺たちは大丈夫だぜ!」

「はい!なんとか生きてます!」


傭兵として戦っていた二人と話していると、

盗賊達は僕達が敵なのかどうか悩み出した。


「…では、僕は失礼しますね」

「おう!兄ちゃん!あんがとな!」


僕はお爺さんと歩きはじめる。


「あんな子供まで…戦って生きねばならぬ世界になってしまったのか…」

「そういう世界ではないですか?」

「そうだな…ワシが若い頃とは…もう時代が違うんじゃな…」


お爺さんと一緒に家に帰った。


「わざわざ迎えにきてもらってすまんのぉ」

「…いえ、ご無事でなによりです」

「青年は聞かぬのか?」

「何をですか?」

「ワシが盗賊団と関わりがあったのか…」

「貴方自身が関わりがないと仰っていたじゃありませんか…」

「そうじゃ…ワシは盗賊団の人間ではない。だが、この領主を襲っているのはワシのせいじゃ」


お爺さんが語りはじめた。


「たまたまだったんじゃ…死にかけている青年を助けたんじゃ…マルコ…彼は…そうお主のような心優しい青年じゃった。マルコは真面目でなぁ…ワシの孫娘と結婚してくれてなぁ…幸せに暮らしておったんじゃ…じゃが、あの日…あの日で全てが変わってしまった」


お爺さんは悲しい瞳で語っている。


「領主の息子がのぉ…ワシの孫娘を見初めんじゃ。結婚もしたはずなのにのぉ。それが許せないと殺されたんじゃ。そうマルコから奪ったんじゃよ…それからマルコは変わった。人が変わったように魔物との戦いに明け暮れてなぁ…気付いたら盗賊団を作って…領主を襲いはじめたんじゃよ。だから、盗賊団のお頭の家族というのは本当なんじゃ…じゃが、ワシでは人質にはならん。マルコはもう…もう…」

「…そうですか」

「それってさぁ、自業自得じゃないの?」


エルナがお爺さんにそう言った。


「領主が好き勝手にした結果、襲われてるんなら自業自得じゃない。お爺さんのせいじゃないでしょ?」

「そう…なのかのぉ」

「幸せを奪ったやつから幸せを奪い返すことの何が悪いのかしら?」

「それじゃ…幸せにはなれぬではないか…」

「私は元々、幸せにはなれないの。そういう人間だっているんじゃないかしら?」

「…エルナ」

「…わかったわよ」

「お爺さん。僕には何もわかりません。マルコさんの気持ちも…お爺さんの気持ちも…。幸せを奪われた人間が…どうしたら幸せになれるのかも…ですが、幸せにならなければならないのでしょうか?マルコさんは復讐をすることで生きていられるのではないですか?」

「そう…なのかも…知れんのぉ」

「マルコさんはマルコさんの人生を生きています。でしたら、貴方も貴方の思うように生きたらいいのではないですか?」

「そう…じゃな」


お爺さんはそう呟いた後に、

何かを決意したような顔で僕を見つめた。


「お主に何でこの話をしたのか…わかったかもしれん。ワシはマルコに会いにいく。復讐なんか終わらせて…ワシと幸せに暮らそうと…伝えてみるつもりじゃ…」

「…そうですか」

「その時は…お主も…一緒に暮らさぬか?」


優しい声で、そう言ってくれた。

でも、僕は…


「ありがとうございます。ですが、僕はこの街に居続けるつもりはありません。お気持ちは嬉しいのですが…」

「…そうか。お主もまた抱えているものがあるのじゃな…」


それからお爺さんは何も言わなかった。


「では、青年よ…いつか…いつかまた会える日を楽しみにしているぞ」

「はい…」

「ワシはもう行く…元気で暮らすのじゃぞ」

「はい…ありがとうございます」

「ではな…」


お爺さんはそう言って、

歩き去っていった。

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