表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
豆柴海内無双  作者: 福本真理
5/14

豆柴、悩む

俺は助けようか迷っていた。


あの雨の日、小屋に落雷が落ちたらしく、冒険者達は重度の火傷をし、苦しみもがき唸声を出していた。


俺は、聖人君子でもなければ、神仏でもない。


踵を返す。

鼻を血のニオイをかすめる。

耳が唸声を捉える。


助けてくれ。

痛い。

誰か。

頼む。

死にたくない。


ギリッと歯がなる。

ジャリッと土がなる。


何回も言う。

俺は聖人君子じゃない。

俺は神仏でもない。


「あ…ぁ…」


ペロ。

ペロペロ。

ペロペロペロペロ。


酷い所だけを、酷い人を先に舐めて治癒する。


「あの…と…きの…」

「すまな…い」

「あ…りがと…う」

「傷…が…」

「っ…エウフロン!大丈夫?」

「…回復魔法ありがとう!」

「犬君、ありがとう。後は、私達が回復魔法で回復出来るから休んでいてね?」


返事すらしないで、俺はスピードMAXでその場を離れた。


「っ!待って!」

「…仕方ないよ…私達は犬君に酷い事をしたんだから。なのに、舐めて治癒してくれた」

「……うん」




涙が溢れた。どうして、涙が出たのか流れたのか分からない。

助けた安堵なのか、助けたのが許せないのか、助けて良かったのか。見捨てれば確実に死んでいたはずなのに。


そう、死んでいたんだ。

一時の感情で見捨てていたら、彼等を見殺しにして…。


『っわ…わぅっ!』


良かった。どうであれ、俺は彼等を助けて良かった…。見捨てていたら死んでいただろう。


それでも、俺はやはり、神仏でもないし聖人君子でもない。




今までは軽快に歩いていたが、トボトボと歩き、水面に映る顔は酷く憔悴していた。


あの日助けたことは正しかったけど、俺の考えが一歩間違えていたら、それを考えるたび吐き気がして食欲は無くなる。

こんな時、友人や親がいてくれたなら良かったのにな。


川の水をペロペロと飲んだら、ノソノソ歩き木陰で休み歩くを繰り返すと、村が見えてきた。


『わぅ(人に関わり合いたくない…)』


ぼーっと眺めていたら聞き慣れた声がした。


「あら!わんちゃん!」

「イヌコロじゃないか」

「久しぶりね」

「元気だったか、イヌ?」


振り返る俺を見て、彼等は走り寄り抱き締めてくれた。




沢山泣いて泣いて泣いて、そして川で身体を洗ってもらい、温かいスープを飲んだ。

そして、何も言わず傍に居てくれた。


「大丈夫か?イヌ」

「まー、旅してれば色々あるしな」

「わんちゃん、大丈夫?」

「どうしたんだろ…」


人の温もりが優しさが、そして直感的に皆と旅をしたいと感じた。

でも、話すことができたら皆は怖がるだろう。


『……わふ…』

「んー…イヌコロ、お前さ何かあったか?」

『わん…』

「悩んでるのか?」

『…わん…』

「旅をして辛いこととかあるだろ?

俺達もさ、話せない悩みやらあるぜ。大量にな。だけど…それをあえて聞かずにいてくれて、ただただ傍にいてくれるだけでかいけつしたりもする。

イヌコロはまさにそれだな。俺達が今はいてやんから」

「急ぎのクエストないしね!」

「そうね。今は急ぎはないしゆっくり野宿を楽しみたいわ」

「分かった!なら、暫らくはイヌと俺達で…キャンプだ!」

「「「やったー!」」」


リーダーは俺を抱き上げウインクした。





読んでいただきありがとうございます。


誤字脱字、感想等よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ