4. 再会の挨拶は初めましてで
「ゴホンッ、では再開しましょうか。お待たせして申し訳ありません」
数分の後、クラン様が告げた言葉により再び視線が前に向く。
「では改めてまして、私はリムシディア帝国第二皇子のクランです。皆様にはこれから、それぞれ特技を披露してもらいます。魔法で演出するもよし、歌でもよし、なんでも構いません。強いていうなら、自分らしさというのを表現してもらいたいです。では順に、王族の方から順にお願いします」
え? なんか意味があるの?
だんだんクラン様の意図が分からなくなってきた。
自分らしさと言ったらやっぱり私は弓だだ。皇族の従者をやっていたくらいだから当然、剣の腕腕も鍛えていたが、得意なのは弓だ。従者だったときは普段は剣を腰に提げていたが、他のユーグやダーレン、アイクと訓練をするときには魔法で創り出した弓を使っていた。
でも弓が好きなのは、従者を辞めた今でも変わらない。
だったら前みたいに得意な氷魔法で創った弓を、魔法で出した氷の結晶を大量に集めて創った竜に向かって放てば、結構なパフォーマンスになるのでは?
氷魔法も弓もどちらも私が得意とするものだ。
考えていると、他国からきた王女が前に進み出たところだった。
「お久しぶりでございます、クラン殿下。カウェーボ王国第17王女リレアでございます。わたくしは魔法を披露したく思います」
優雅にカーテシーをしてそう言った。カウェーボ王国って確か、10人くらい側室がいるハレムで有名な南の国だったかしら。
そのあと、リレア王女は見事な火魔法を披露してくれた。
順番に他の王族の姫たちも特技を披露していったが、もう私の順番は次だ。
爵位は公爵という王族を除けば実質、貴族の中では最高位なので順番も早い。
「キースはここで待ってるのよ? ここから動かないでちょうだいね」
「わかった!」
元気よく返事をするキースに安心して、私は前に出た。
これでもう隠すことはできない。
「初めましてクラン殿下。ラスバルト王国ユッカルト公爵家が娘セシリア・ユッカルトでございます。以後お見知りおきください」
それでは披露しましょうか。
まずは魔法で出した氷の結晶をどんどん集めて、大きな竜の形を作っていく。
これはかなり魔力を使うから、魔力量が豊富じゃないと魔力切れで倒れてしまう。
完成した竜を泳がせ、それと同時に氷の弓矢を創る。パキパキと音を立てながら弓矢が出来ていく。
竜が他の人たちの目の前を通ったときには、悲鳴をあげた令嬢もいた。
弓矢を竜に向け、竜が警戒する様子を演出する。そして弓をぐっと引き矢を放てば刺さったと思った瞬間、私の手元にあったはずの弓も一緒に竜が突如霧散し、キラキラと輝きながら結晶が舞った。
こんな感じかしら?
最後にカーテシーをして元の場所に戻る。
再会の挨拶は初めましてになってしまったけれど、これでクラン様に本来の私はバレてしまった。
面白い、続きが気になるという方はブクマと評価をつけていただければ嬉しいです!