3. 夜会での修羅場(カオス)
今回は少し長めです。
(訂正)
皇国を帝国に変更しました。どうやら帝国と皇国では君主の成り立ちが違うようでして・・・汗汗
無知な作者で申し訳ございませんっ(ノД`)
「ねえねえ! 今度帝国の第二皇子が花嫁選びのために夜会を開催するらしいわよ。なんでも他国の貴族でも妙齢の女性はどんな事情があろうと強制参加だとか! そうなると今年23歳のお嬢様も参加することになるわよね」
「あ〜たしかに。令嬢たちはとても張り切ってるって聞いたわ。なんせ身分、顔ともに申し分ない超優良物件だもの!」
え・・・・?
私は立ち話をしていたメイドたちの話を聞いて固まった。
皇国の第二皇子って、絶対クラン様よね・・・?
花嫁選びってどういうこと? どんな事情があれど関係ない?
どうしたら・・・! 私はもう二度とクラン様にも、仲間にも会うつもりはない。でもまた帝宮の敷居をまたぐことになってしまった。
その時、母が慌てた様子で駆けよってきた。
「セシリア! あなたも参加する、のよね? 大丈夫なの・・・?」
「ええ。しょうがないわ、そういう条件なんだもの。覚悟を決めるしかないわ。いざとなったら全力で逃げるから安心して、お母様!」
不安を取り除くかのように元気に言うと、母もいくばかほっとしたように、息を吐いた。しかしふと思いついたように尋ねてきた。
「それじゃあ、その間キースはどうするの?」
「・・・・連れて行くわ。ただでさえ父親がいなくて他の子よりも不安定なあの子を置いていくのは心配だもの」
「・・・分かったわ」
母と別れた後キースの部屋へ向かうと、ちょうど家庭教師から習った範囲の復習をしているところだった。
5歳になったキースには家庭教師をつけている。
「あ、おかあさま!」
私を視界に入れると、タタッと駆け寄ってくる。
「おかあさま。どうしたんですか?」
まだ拙い言葉で話し私を慕ってくれるキースが愛しい。
いくら危険だとしても、この子を一緒に連れていくと判断したのは私だ。もしクラン様に見つかったら、引き離されるかもしれない。どんな出自だろうと王族の子であることに変わりはないから。
夜会は一週間後だ。馬車での移動を考えると明日には出発しなければいけない。
一度キースをギュッと抱きしめてから話し出す。抱きしめると嬉しそうに抱きしめ返してくれた。
「あのね、明日私は夜会へ行くのよ。キースも初めての夜会、一緒に行きましょう?」
「やかい?」
「そうよ。夜会では、私から離れないでね。いつもより遠くへ行くことになるけど良いかしら?」
「うん、いいよ!」
夜会当日。周りがおしゃべりに興じている中、私とキースは一緒に壁の花に徹していた。なのに周りの視線が刺さる。私が子連れだからだろう。
他に私のような令嬢は見当たらない。
見た感じ、令嬢たちはほとんどが15歳から10代後半。20代ともなると、もうどこかに嫁いでいるのが普通だ。
今日の私は、故郷に戻ってきてからずっと伸ばし続けて腰まで伸びた金髪を緩くシニヨンでまとめ、ドレスは瞳の色に合わせた鮮やかな青のマーメイドドレスだ
キースは子供らしく、グレーの膝丈パンツとジャケット、紺色のベストに白のスカーフという格好だ。
ちょうどその時、第二皇子クランとその従者が入場してきた。皇后と皇帝は他国へ視察に出かけていていない。
懐かしい顔ぶれを目にして、離れる時の感傷を思い出してしまいそうになる。
♢
その頃のクランと従者3人。
「あれ、今なんか見たことある顔が見えた気がするんだが・・・・」
「どうしたのダーレン。とうとう頭までおかしくなちゃった? 夜会なんて他にも出たことあるんだから当然知った顔がいてもおかしくないでしょ」
「ひでぇ! クラ〜ン、ユーグが俺のこといじめる〜。助けて〜」
「・・・・・・・」
令嬢たちに聞こえない程度の声でやりあうユーグとダーレン、無口のアイク。シリルがいなくとも通常通りの従者3人。
「って、どうしたんだクラン。一点をずっと見つめて・・・・うわ!? クランが死んでる!? 目開いたまま気絶してる!?」
「俺、俺は・・・・なんて、こと・・・俺、は・・・・」
「うわあぁぁ!!! 戻ってこい、クラン!!」
「何がどうして・・・・」
ユーグも慌てて先程クランが一心に見つめ(?)ていた場所に目をやる。
そこには金髪に群青色の瞳の美しい女性と・・・・クランの幼少期にそっくりな濃い青髪の少年がいた。
「え、え・・・? クランにそっくり・・・・あれ、クランって兄弟いたっけ? 双子の・・・・」
ユーグまで混乱しすぎておかしなことを口走っている。
「誰かッ・・・クランとユーグを元に戻してくれーーー!!・・・・・ッ」
バタッ
そしてたまたま目に入った光景を見たダーレンはふらっと体を傾かせ倒れてしまった。
「きゃ、きゃあああぁ!!!」
倒れたダーレンを見て悲鳴をあげる令嬢。
「はっ・・・!」
その悲鳴をきいて我に帰るクラン。
「申し訳ありませんがが御令嬢方のみなさん。どうやら我が従者の一人が女性が苦手なあまり、気絶してしまったようなので皆は気にせずに、そのまま少しの間お待ちください」
自分の知らぬ間に不名誉な話に事実をすり替えられたダーレン。女性恐怖症の事実(?)が知られた今、今後ダーレンは女性に避けられることになるだろう。そして女性恐怖症の遊び人という事実(?)がこれから付き纏うことになるのだ。
クランも咄嗟に出た言葉だったので悪気はないのだ。ダーレンは気の毒という他ない。
「・・・・・・」
アイクは変わらず無言。こちらはこちらでその場の空気に合わない無表情がおかしい。
それを一部始終見ていたセシリアは、というと。
「え・・・あいつらなにやってんだ・・・・?」
無意識のうちに男装時の言葉遣いで引き気味にそう呟いていた。
リムシディア帝国の美貌の第二皇子とこれまた美形の従者3人。
大丈夫なのだろうか?
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