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話を進めるジュン兄さんとシキ様を止めたくて私は声を上げる。
「……ユウ…………?」
「兄さんはいなくて大丈夫!!」
――しまった。
思ったより大声になっちゃって、捉えようによってはここに兄さんが泊まるのを拒絶してるみたいに思われそう。
現に兄さんの顔は今、元から下がり気味だった眉毛がさらにふにゃ、と垂れ下がってて見てるこっちが切なくなってくる。
だけど“シキ様に他に相談したいことがある”なんて言ったら余計な心配をかけそうだし……
「ユウちゃんは、お兄さんの負担になると思ってるんだよね。でもユウちゃんだって、家族の人が傍にいてくれた方が安心でしょ?」
「えっと、」
シキ様がフォローを出してくれるけど、それに乗るわけにはいかない。
それは、私だって兄さんに傍に居てほしい。
だけど兄さんの目の前で“あんなこと”相談したら気にさせてしまうかもしれないし、シキ様に断られた場合には一瞬の希望さえ奪ってしまうことになる。
「ほら……私たち二人でお店やってるし、二週間も閉めちゃったらお金の他にも周りの信頼に関わるっていうか……」
だからなんとかそれっぽい理由を並べてみるけど、しどろもどろになってしまって、兄さんも納得出来ていないみたい。
それにこの言い方だとジュン兄さんのことだから、日中はお店をやって夜だけここで私の面倒を見るって言うに違いない。兄さんは左足のこともあるし、シキ様が言う通りこれ以上負担をかけたくない気持ちもある。
だからもう一押しほしいところだけど――そうだ!
「私、シキ様と二人っきりで夜を過ごしたいの!!」
知り合ったばかりだけど、普通ならまず関わることのない“最高魔導士”であるシキ様に興味があって、もっと話をしてみたいのは本当の気持ちだし、この言い方なら兄さんが夜だけ泊まり込むって言いだすこともない。
そう思ったんだけど――あれ?二人の様子が何か変だ。
「……ユ、ユユユ、ユユ、ユウ…………?」
ジュン兄さんはいつもより途切れ途切れに、というか心底戸惑ったように私の名前を呼んで、シキ様は、
「え……えっ?」
と、さっきまで一番冷静に話していたのに急に顔を真っ赤にしてうろたえだした。