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少し顔を赤らめたシキ様に言われて、私は慌てて視線を外す。私自身もかあっと顔が熱くなっていくのが分かった。
シキ様の目に見入ってしまい、気づいたら見つめ合うみたいになってしまっていた。……自分で言っておいてアレだけど、不思議なくらい綺麗って何!?シキ様はそういう意味で聞いたんじゃないよ!!
「……とにかく、本当に横流しなのかは置いておいて、この町の結界道具の管理が杜撰だったせいでユウちゃんが重傷を負ったのは事実です」
私が逸らしてしまった話をシキ様がそう言って戻してくれる。
「なので僕はユウちゃんのことを含めて、ここ数日の調査の結果を国王を含めた政府の方々に報告しました」
「王様にも……」
「うん、ユウちゃんがあの魔物を倒してなきゃ死人が出ていたからね。女の子がたった一人で闘ったって聞いてみんな驚いてたよ」
“普通の女の子”はナイフ一本で魔物を掻っ捌いたりしない。驚いて当然だ。
魔法が使えない代わりに、格闘術とかナイフの扱いとか、知り合いのおばあちゃんに体術という体術を叩き込んでもらった。
だけどその結果、ただでさえ魔力がないせいで結婚相手には向かないと周りの男性達に言われていたのに、この腕っぷしで更に結婚のチャンスが遠のいてしまった。
そして今回、お腹を貫かれたわけだから、そこに生々しい傷跡が残るのは絶対。
死ぬところだったことを思えば傷跡だけで済むのは幸運ではあるけど……。
――魔法は使えない、
――腕っぷしは異常に強い、
――おまけに、傷物の身体。
“お嫁さんになりたい”。諦めかけてはいたけど子供の頃から、兄さんにもないしょで見ていた夢はいよいよ叶わなく……
「……というわけで、ユウちゃんのお腹の傷跡まで完治させるのが、僕の役目になります」
「えっ?」
いつのまにか話が進んでいたらしい。
「傷跡まで治るんですか?」
「ユウ……。話はちゃんと、聞く」
「ごめんなさい……」
兄さんにたしなめられて謝る私に、シキ様が「えっと、」ともう一度言ってくれる。