出会い・1
・過度なグロ描写はないけどヒロインが出血、吐血しながら闘ってます。
・序盤殺伐としてますがこの物語はラブロマンスです。
『ユウは……大きくなったら何になりたい……?』
『……え?』
突然ジュン兄さんに将来の夢を聞かれた私は質問の意味はじゅうぶんに分かっていたけど、なんとなく答えるのが怖くて聞き返してしまった。
――あれ?
――これって10年くらいの前のことだよね。
――なんで私、今こんなこと思い出してるんだろう。
兄さんが私を連れて屋敷を抜け出して、私の大好きなロマンス小説の新刊を買ってくれた日の帰りのことだったと思う。
私たちの住む国を舞台にした最高位の貴族の魔導士様と平民の女の子のラブストーリーで、結婚相手を魔力の相性で選ぶこの世界の中でお互いの人柄だけに惹かれあって、身分違いの恋に落ちるっていうお話。
『……僕たちはもうすぐ……父さん達の家から出ていく。……貴族じゃなくなったらユウは……いや?』
口下手な兄さんがいつもより割とはっきり、でも不安そうに聞いてくるから、私はすぐにぶんぶんと首を振って否定した。
私は兄さんと手を繋いでない方の腕で抱えていた本をぎゅっと握りしめて、
『兄さんとずっといっしょにいたい……。……わたしね、大きくなったら本当は……』
と、なんとか本心を答えようとするけど、泣きそうになって言葉に詰まってしまった。
私たちが歩いて通り過ぎようとしている広場では、私より歳の小さそうな子たちが楽しそうに両手に持った水晶の中に淡い炎や水の渦など、それぞれの“属性の魔法”を顕現させているのが見える。
私があの水晶を使った時は何の魔法も現れなかった。
あれに力を込めれば、どんなに“魔力”の少ない人でも自分の使える魔法の属性が分かるって言うのに。
つまり、魔力の相性で結婚相手を探すどころか、そもそも私には魔力なんてちっともない。
そんな私がこのまま平民として暮らすことになったら、結婚相手以前に仕事も見つからなくて、この先もっと兄さんに迷惑を――――
『……ユウ、』
黙ってしまった私に色々と察したらしいジュン兄さんが、優しく私の手を握りなおして『きっと叶う……なんでも』って言ってくれたけど、私にはとてもそうは思えなくてうつむくしかなかった。
あのね兄さん、
ほんとは私ね――――……