その1 事故と後悔とアダルトショップと
第1章です。いくつかに分けて投稿する予定です。よろしくお願いします!
俺の名前は村上一。
どこにでもいるフツーーーーーの高校2年生だ。
そしていま俺は大変困惑しています。
どうしてだろうか? 勝手に体が動いている。
女の子を守ろうと、いつの間にか体が走り始めていたのだ。
そもそもの原因、それは横断歩道の前で信号を待っていたこと。俺が住んでいる町は大都市ということもあり、周りにはたくさんの人が信号が赤から青に変わるのを待っていた。
その時俺の近くから、小さな少女が飛び出したのだ。
彼女の前にはボールがころがっていた。
「危ない!」
そして彼女のすぐそばにはクラクションを鳴らす大きなトラックが・・・
だから? だからなのだろうか──
俺の体は動いていた。
いつの間にか俺は目の前にいる少女を危険から救うために、両手を使って彼女を押していたのだ。
キキッーーーーーーーーー!
車の音が聞こえる。
体が浮く。
悲鳴が上がる。
体が痛む。
何かに激突する。
──そして体から血が抜けていく。
あっ、 ヤベー。熱い? 寒い? 分からない。
それにめちゃくちゃクラクラする。
「は、早く救急車を呼べー!」
「キャー!」
「マジかよー!?」
そして色々な声が聞こえてきた。
あーそうか。そうか。そうなのか。俺死ぬんだ。
ぼんやりと。そう、感じた。
そして次の瞬間、俺の中で後悔や未練が心の中から溢れ出していく。
いやだ。死にたくない。まだ、あの子との約束を守ってないんだ。
約束したんだ。大切な、大切な幼い時の約束。俺はそれを破れないんだ──
でもダメそうだ。気持ち悪い。
体内から血が抜けすぎたせいなのか、どんどん体から力が抜けていく・・・
そしてその時、俺は気づいた。
マジか、俺が激突した家って、エロゲーを売ってる店じゃないか。
そう、目の前にはR18の大人の店が堂々と建っていた。さらに俺がぶつかった衝撃のせいか、アダルトゲームが道の周りに散乱している。
こんな運命があるのか。
自分が死ぬところが、まさかアダルトショップだったなんて。。。
あっ、近くに可愛い女の子が描かれたパッケージのゲームがあるな。
こんな子と恋愛する未来もあったのかな? いや、それでも俺は・・・約束守りたかったよ。
そんな色々な思いに包まれて。後悔して──
そして俺は死んだ。