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反英雄  作者: AI
第2章 ハルマゲドンガール
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第2話 世界を滅ぼす少女

 反英雄のアジトに突如現れた魔術師と少女――それはこれから起こるであろう、困難な冒険を予感させるものだった。


 マナレスはこの部屋に(おとず)れたもう一人の少女に目をやる。

 玲瓏玉(れいろうだま)のごとき美しい娘だ。年のころは十代前半、少女というよりまだ子供に近かった。とはいえ、意志の強そうな太い眉と幼いわりに鋭い目つきは、とても子供のものとは思えない。

 おまけに石像だらけの部屋にも怯えることなく、平然と構えている。


 その凛々しい態度にふさわしく、身なりも立派だった。シワひとつないワンピースは上質で、明らかに貴族の物とわかる。

 しかしなにより目立つのは、彼女の頭に載せられた花冠(はなかんむり)だ。と言ってもその花はひとつだけで、まだつぼみ状態だったのだが。

 それでもその頭に巻かれた草花は、彼女の幼いながらも美しい容姿をさらに引き立てていた。


 マナレスはうーんと唸りながら呟く。


「幼女か……ギリギリセーフだな」


 そう言ってゴクリと生唾を飲み込む。


「完全にアウトじゃねーか! お前ドラゴンのくせに、なにロリコンに目覚めてんだ!?」


 アルセストがそうツッコんで、持っていた盾でマナレスの頭をパーンとはたいた。

 それを見ていた魔術師のザザンが、喧嘩をなだめるように仲裁に入る。


「まぁまぁ、恋愛感情は悪いもんじゃないっスよ。『人間率』の高そうな行為ですって」


「にんげんりつ?」


 ザザンが放ったその聞きなれない単語に、アルセストは眉根を寄せて聞き返した。

 しかしザザンが答えるより早く、クリキュラが反応して喋りだす。この魔術師の噂を思い出したのだ。


「そうか、お前が『人間率』のザザンか。お前さんのような宮廷魔術師が、あたしら反英雄になんの用さね?」


「宮廷魔術師って、このヴレスランド王国のか? こんな若造が?

 しかもその『人間率』ってのはなんだ!?」


 アルセストが会話をさえぎって矢継ぎ早に疑問を並べ立てると、代わりにクリキュラが答え始めた。


「こいつは人間率という二つ名を持っていてね。その名の通り、他人の人間性を数値として見ることができるという噂さ」


「よくご存じで。僕は他人の人間率を見ることが出来るんスけどね、人はまさしく見かけによらないんですよ。着飾った貴族が豚にも劣る人間率しか持ってない、なんてこともよくありまして」


 ザザンはそう言って軽薄そうに笑うと、眼鏡をずらし、


「それと、人間かそうでないかも簡単に見分けられるんスよ。皆さん、なかなか面白い人間率をお持ちだ」


 その灰色の瞳で反英雄たちを値踏みするように見渡す。

 クリキュラはその眼を睨み返した。この魔術師の力が本物なら、自分の人間性も見透かされているということになる。それは決して心地の良いものではない。

 おまけに、どうせこの中では自分が最も低い人間率であろうことも容易に想像できる……。わかっていても人間ではないことを突きつけられるのは、彼女を苛つかせるのに充分だった。


 一方のマナレスは、このままでは自分がドラゴンか人間かバラされてしまうと思ったのだろうか。「ゲフンゲフン」とわざとらしく咳払いすると、話を変えようと慌てて喋りだした。


「いやいや、キミの能力は無駄使いしなくてよいから。それよりそちらのお嬢さんの紹介と、僕らの所へ来た理由を聞かせてくれないかい」


 するとザザンは、せっかくの能力披露の機会が奪われたことを少し残念そうにしながらも話し出そうとするのだが、それを待たずクリキュラが先に口を開いた。


「詳しい説明はいらないさね。どうせ修道院に預けられてた、隣国の貴族の娘の呪いを解いて欲しいってところだろ」


「なぜそんなことがわかるんだ?」


 驚くアルセストに対し、クリキュラは口の端を少しだけ上げながら説明する。


「その娘の姿や立ち居振る舞いは上級貴族、少なくとも伯爵令嬢以上に間違いない。

 おまけに、あたしは王立紋章院に登録されている紋章はほとんど覚えているが、その娘がしている指輪に描かれた紋章には見覚えがない。だとすればヴレスランドではなく、隣国の貴族であることは明らかだ。

 ところが手首の日焼けあとや荒れた手、爪の間に入った泥土は、常日頃から農作業をしている証さね。貴族の娘がそんなことをするのは、修道院に預けられていた以外にはありえない。

 その歳で王立の学院ではないということは、おおよそ父親との折り合いが悪くて修道院に押し込められたんだろうさね。それが呪いにかかって解決できず、まわりまわってこの魔術師に連れられてここに来たってとこだろう」


 クリキュラが自慢気に話し終えると、それを受けてザザンが横に立つ少女を紹介しだした。


「さすが話が早くて助かります。彼女はイノーヴァ嬢、隣国の公爵令嬢っス」


 イノーヴァという少女は「ああ」と(うなず)き軽く会釈をしただけで、やはり一言も喋ろうとしない。喋れないわけではなさそうなのになぜ黙っているのか……マナレスはそのことをいぶかしんだが、気にせず魔術師が話を続ける。


「今日皆さんの元にうかがったのは一つ依頼がありまして。イノーヴァ嬢の頭から生えているこの花が咲くのを、阻止してもらいたいんスよ」


 マナレスが花冠だと勘違いしていたもの――それはよくよく見てみると、確かに少女の頭から生えていた。

 ザザンはニヤニヤ笑いながらさらに話を続けたが、それはとんでもない内容だったのである。


「この花が咲くと魔王子が復活して、この島全土が滅んじゃうんでね」

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