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反英雄  作者: AI
第1章 竜殺しの英雄
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第11話 森の中での作戦会議

 イザドラからの依頼を受けたアルセストとマナレスは、彼女を連れてすぐに馬で旅立った。

 二人は当初イザドラを街に残すつもりだったが、「案内役が必要だろ」ということで彼女も無理矢理ついてくることになったのだ。


 人捨て山は彼らの住んでいる混沌街から馬で三日程度の距離だったが、アルセストは馬を使いつぶす勢いで道を飛ばした。

 早馬を飛ばせば一日ほどで村につくだろうが、さすがについていくのがやっとのイザドラが不平不満をこぼす。


「なんでそんなに急ぐんだよ!?」


「奴らもまさか翌日に襲ってくるとは思わないだろ。騎士たちが油断しているとは思わないが、態勢(たいせい)を整えられる前に強襲して一気に片を付けるつもりだ」


 この盾の戦士はふざけてばかりじゃなく、意外と考えているんだと、妙なところで感心してしまう。いや、普通なら感心するところじゃないのかもしれないが……なにせ盾のことを恋人と思い込んでいるイカレ野郎なので、かなり心配だったのだ。


 街道を東に半日ほど進んで途中の街で休憩する。ドラゴンを名乗る変態マナレスから貞操の危機を守りつつ一泊し、それ以後は舗装されていない泥道を駆けていく。


 そして事前に地図で目星をつけておいた、村から少し離れた森に到着すると、その中で野営することになった。

 確かにその森は騎士たちからは見つからず、けれどもすぐに強襲できるような絶妙な距離にある。


 とはいえ、せっかくあれだけ馬を飛ばして来たというのに、なぜひと休みし出すのか。気を急くイザドラがアルセストに突っかかる。


「ちんたら休んでる場合かよ、一気に攻め込むんじゃなかったのかよ!?」


「日が暮れるのを待つんだ。行動するのは夜になってからだ。それに下調べも必要だしな。待つのも仕事のうちさ」


 夜襲のためにマナレスが騎士たちの駐屯地を偵察にいく、その間の隠れ場所として森の中を選んだのだ。


 森の大半はオークの木で、所々に(にれ)やトネリコが混ざっている。

 下生(したば)えはほとんどないものの、曲がりくねった木の枝が隙間なく折り重なり、少し先はもう見透かすことができなかった。

 確かに身を隠すのには適しているように思える。


 うっそうと茂る森の中は春の日差しも届かず、だんだんと日が暮れていくにしたがい不気味な闇の世界が広がっていく。

 乾いた風が吹くと木々がこすれる音が響き、それにコーラスでもするかのように「ホーホー」というフクロウの鳴き声が聞こえてくるのだった。


 そうこうしているうちに、斥候(せっこう)として別行動していたマナレスが騎士たちの野営地を偵察して戻ってくる。

 追跡されないように念のため、風の魔法を使って草と枯れ枝で足跡を消し去っていく。


「あんた魔法使えたんだね」


 そう素直に感心したイザドラに対し、


「まぁね、僕はエルフでドラゴンだからね」と矛盾した答えが返ってくるのだった。



 まだ日が落ちきる前の黄昏時、日持ちするようにした燻製肉を焚火であぶりながら、彼らは作戦を練る。


「しかしあんたら二人で騎士たちを退治することができるのかよ? 相手は50人以上いるんだよ。やっぱり無理なんじゃ……」


「村を救うのに騎士たち全員を相手取る必要ないだろ。むしろ戦う必要もない」


「え? どういうこと? 話し合いで解決できるような雰囲気じゃないってば」


 騎士たちを村から追い出し竜の復活を阻止する、そのためには騎士たちを二度と歯向かう気が起きないくらいにコテンパンにぶっ飛ばすしかない――そんな風に考えていたイザドラは、アルセストの発言に面食らった。


「竜の復活を阻止するには、騎士団長が持ってる竜をあやつる魔剣を奪いとるだけでいいだろ。そうすれば騎士たちもあきらめざるを得ないってこった」


「あ、そうか! 例のドラゴンズクロー……か」


 イザドラは昨日マナレスの神業を見たばかりだった。

 あんな臨戦態勢の中で、六人の騎士の剣を気づかないうちに奪い取る……その腕があれば確かに騎士団長から剣を奪い取るのも難しくはなさそうだ。


 しかも奪った魔剣をアルセストがぶっ壊してしまえば、二度と竜を復活させるなんてことも不可能になる。


 ところが喜ぶイザドラを尻目に、マナレスが怪訝(けげん)な表情でアルセストに質問する。


「ところで盗んだ魔剣はどうやって処分するんだい……」


「昨日の騎士たちと同じように、魔剣も叩き折ってしまえば問題ないだろ。あとは闇にまぎれて退散しちまえば追手も撒けるさ」


「いやいや、そもそも魔剣なんてへし折ったことあるのかよ!? 普通の鉄製と違って魔法で防護されてんのよ。無理なんじゃないのか!?」


 アルセストは少し思案気(しあんげ)な面持ちをしたものの、舌を出して笑顔で回答する。


「ま、なんとかなるでしょ……」


「お前それ、絶対なんとかならないパターンだろ!? 処分に困って魔剣抱えたまま、騎士たちに追いかけ回されるオチじゃねーか!」


「いいじゃねぇか、魔剣を盗んで逃げ続けりゃさ。いざとなればマナレスがドラゴンに変身してドバーンと騎士たちをなぎ払えば」


「だから今は呪いのせいで元に戻れないって言ってんだろ! 完全に僕だけ貧乏くじ引かされてんじゃないか……」


 頭を抱えるマナレス、能天気なアルセスト、そのやり取りを見てだんだん不安になってくるイザドラであった。


 そんな沈み込む気持ちを振り払うべく、彼女はマナレスに尋ねる。


「――クリキュラって『絶対行かん』って断言してたけどさ、あのとき私が彼女を怒らせなければ来てくれたんじゃ……。やっぱ私のせいかな……」


「いや、イザドラちゃんのせいじゃないさ。クリキュラはちょっと天邪鬼(あまのじゃく)なだけなんだよ。だけど、きっと後からやって来てくれるはずさ」


 そのマナレスの言葉に、アルセストが両肩を上げて異を唱える。


「あいつが情に流される玉かよ」


「――確かにそういうタイプじゃないのはわかってるよ。でも、だからこそ種は仕込んどいた……。あとは、その花が咲くかどうかはクリキュラ次第さ」


 マナレスは目を細めてそう語ったものの、やっぱり期待はできそうになかった。

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