序章 第三話
帰り道に今日子が、美味いものを食べたいと言いだした。
もらった五百万は手つかずである。食事なんか少々高くても屁でもない。
「せっかくだから、銀座のお寿司屋さんはどう」と今日子。
「そんな高い店は知らないよ。それにここからじゃ遠すぎる」
「心配ないわ」
今日子は車を研究所の滑走路の横に止めた。ジェットヘリがスタンバイしている。
ヘリで銀座に寿司を食べに行くというのだ。豪勢なこった。
今日子は迷わずにコクピットに、私は助手席に乗り込んだ。
「ほう、ヘリまで運転出来るとはね」
「私が経験ないのは戦車と空飛ぶ円盤くらいかしら」
バラバラバラバラ。ヘリが一直線に上昇する。見事な腕前だ。
眼下にあの銀色に輝くドーナッツが見えた。
「前から聞きたかったんだけど、あれは何だ」
「あれがタイムマシン。絶対真空の空間を限りなく光速に近いスピードで未来に向かうマシーン」
「あぁ、あれが俺の棺桶か」
「少なくともモルモットとチンパンジーは、三日後の世界に移動できたわ」「多分大丈夫よ」
「多分がつくのが気になるねぇ。乗るのは俺だぜ」
あっという間に銀座上空についた。ビルの屋上のヘリポートから寿司屋の暖簾をくぐったのは夕暮れ時、ビルの陰に潜む男達に2人は気づいていない。