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初恋メール

作者: 葉月羽音

 一通のメールに綴った気持ち。勇気を持って押した英字。最後の最後で押せなかった送信ボタン。

 未だ私のスマホの中で眠っている古びたメール。送っても届かない事を知っている。遠く離れた場所にいる君へ、この声を電波に乗せて届けるのは簡単なのに、気持ちを乗せたメールを届けるのは難しい。

 いっそ君からリアクションをくれたら、なんて、叶わない夢物語に溺れてる。それだけ君の事が好きなの――なんて乙女心を抱いても、現実の私はそんなに可愛い子じゃない。

 男勝りで女らしさの欠片もなくて、優しさも家庭的な部分も存在しない。ただのガサツな女の子。

 そんな私が思いきって告白してみても冗談や友達止まりで終わってしまう。多少の気まずさは残るけど、時間が立てばまたちゃんと友達同士に戻れていたから耐えられた。だけど、君だけは別。ううん、君だけは、違う。

 告白して玉砕してしまうなんて耐えられない。君ともあんな風に終わって友達の関係に罅を入れたような、修復後の残る関係になってしまうのだけはどうしても、受け入れられない。

「だから今のままでいいと、今のこの距離のままでいたいと思うのは、普通の事だよね」

 そう言った私に周りの友人は逃げているだとか、立ち向かえだとか言ってくる。肯定してくれる答えなんて誰も出してくれやしない。それも当然だ。私だって分かってる。

 振られるのが恐くて逃げてるだけ。立ち向かう勇気なんて最初から持ってない、ただ想うだけで満足したフリをしてるだけ。もしも君に好きな人が出来て、その人と結ばれでもしちゃったら、きっと私は簡単に死んでしまえる。嘘偽りなく、本当に死んでしまえるんだよ。

 それくらい君の事が好きなんだ。

 今までの好きとは違う。恋なんて生温いものでもない。私の、本当の、初めての「はつこい」

 逃げちゃ駄目だって、立ち向かわなきゃって、聞き飽きるくらいに言われるまでもなく解ってるんだよ。なけなしの勇気を掻き集めてでも逃げずに立ち向かわなければいけないこと。自分から動かなければ答えは差し出されないこと。指加えて待っていたって、人生は、人の気持ちは思い通りにいくものじゃないんだってこと。

 だけど、不安がつきまとう。私の足元から這い上がって泥のように纏わりつき、気付けば重りに変わってしまっている。

 君の好きと私の好きは噛み合わないんだって、友達でしかいられないんだって、告白したら傍にも居られないんだって――煩いくらいに囁く声は弱い私の幻聴だと知っている。そして私は強くないからその声を否定できない。不安に呑まれて潰されてしまう。

 それでも手放せない君に対する好きの気持ちを無くさないようにいつもメールに託すの。

 届けられない「愛してる」――たった一言の恋文。未送信フォルダに山となって積み上がる、君を愛してる日々の軌跡。

 今日もまた一通、届かない恋文をフォルダの中に収めて眠る。いつかきっと、届けられますようにと祈りながら。

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― 新着の感想 ―
[一言]  胸の中だけで膨らませると、最終的に後悔するような気がします。
2017/12/14 20:29 退会済み
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