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歴史の陰で生きる異種族  作者: 青枝沙苗
5章 過去への扉

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21話 龍の神殿③~扉を開いた年代~

 目を覚ましたマナは、龍の神殿が雲の上にある事やミッテ大陸の大地の一部がある事に驚きを隠せなかった。何より流王と対面した時、()()()()()()()()()()()()と、直観で理解したという。そしてこの地は、人間が来ていい場所ではない。それは龍の神と対面した時に察したのだ。


「よく来てくれた。時期流王、マナ姫よ」


「マナ・フール・レイトーマです。お目にかかれて光栄です、龍神様」


「ふむ……。脳に負荷が掛かり、頭痛に悩まされているようだな。これを飲むといい」


 マナの目の前に突如現れたティーカップ。その中にはキラキラと青白く輝く液体が入っていた。得体のしれない飲み物を人間が飲んでもいいのだろうか。だが、何も言っていないのに頭痛だと見抜いたのだから、神のいう事を信用して飲むべきだろう。マナが数回に分けて液体を飲み干すと、嘘のように頭痛が消えた。


(これが神様のお薬なのかしら。これがあれば地上の薬は……)


 地上の薬は何もいらなくなる。そんな事を考えたが、それではダリス帝国と同じだ。彼らは龍族を捕えて万能薬を作ったりしているのだから。そんな傲慢な事は考えてはいけない。


「では、これからの事を話そう。皆の者よ、そこに座るといい」


 龍神が顔を向けた先には庭があり、空から光が指している。茶会をするような準備をしており、紅茶やクッキーなどの菓子があった。四角い長テーブルでは、マナは流王の隣に座り、その対面にはがフォルトアと緋刃、そして緋媛がいる。龍神とイゼルが対面する形となった。


「皆はこの世界、クレージアの理は知っているな? 百年周期で王という名の人柱を交代している事を」


 やはり王は名ばかりで実質生け贄のようなものなのだとマナは思う。それでも天命であるために抗う事など出来ない。もし自分でなければ、他の誰かがやる事になっていたのだから。


「人柱の役目は、二つの時空の扉の監視と開いた際の対処だ。ごく最近の事だが、その内一つの扉が開いた。この理由は言うまでもなく知っているだろう」


 マナの顔が青ざめる。自分のせいだと――。


「マナよ、お前が責任を負う必要はない。お前はあの時操られていたのだ。意図しない事をやらされていたのだから」


「ですが、私はそれでも扉を開いてしまいました。過去へ行くという禁忌に手を貸してしまったのです。それに私は何も知らず龍族の肉を……!」


 食べてしまった、と言いかけたところで自身の口を塞いだマナ。急に罪の意識が湧いて、話してしまった彼女の頭を撫でた流王は、にっこり笑う。恐る恐る緋媛達の方を見るが、彼らは怒っていない。ただ、確認したいことはあるようだ。


「なあ、姫。一応聞くけど、ダリスにいる間、食事を持ってきたのは誰だ? ダリス城にいたなら、メイドなり兵士だよな」


「ええ、メイドの方がお持ちに……」


 父親の司が食事を出していない事にほっと一安心した緋媛は、小さく息を吐く。だが食事の内容は知っていたはずだ。ダリス六華天の長であるならば。同族を喰う、などという愚かなマネはしないだろうが、見ていて何とも思わなかったのだろうか。


「その話は後にしてくれ。問題は過去へ行った破王達の事だ。龍神様、彼らはU()S()2()0()4()7()()へ向かったそうです。ここにいるフォルトアと緋媛、緋人に追わせたいのですが――」


「US2047年? それは違うのではなくって?」


 流王の瞳が金色になり、過去を探っている。彼女曰く、その時代には辿り着いていないという。ではどこへ行ったのだろうか。その答えはマナしか知らない。


「理由は言えませんが、実はU()S()2()0()6()5()()へ繋ぎました。何故かは言いたくても言えないのです。とにかくUS2065年へ繋ぐようにと、頭の中に……」


 マナには司の事は一切他言しないようにという暗示が掛かっている。緋倉では、それだけは解除出来なかったのだ。彼の能力値以上の強い暗示であったために。頭の中にある、というだけでフォルトアと緋媛は何となく司が関わっていると察した。


「US2065年は……、ミッテ大陸の緑がほとんど無くなった頃か。それとナン大陸の里が出来てから十年以上たってる。US2047年は異種族がごっそり減った年で、緋倉様とゼネリア様が生まれた年……。もしかして破王は、次期破王となるゼネリア様を殺そうとした……?」


「フォルトアといったか、察しが良いな。そうだ、アレはゼネリアを始末する為に、まずUS2047年を選んだのだ。その時代に生きる龍族を捕えるついでに」


「何故、ゼネリアを狙うのですか?」


「つーか、そもそも破王の目的もおかしくね? 俺らが聞いた話だと、未来の為って言ってたよ。それだけなら、別に悪い事じゃないと思うんだけどなあ」


 質問するにしても空気を読めと緋刃にいいたい緋媛は、頭を抱えてため息をついた。いちいち注意するのも面倒臭くなってきたようだ。だがこれは確かに聞くべきである。最終目的ではないにしろ、通過点としても

 何故ゼネリアを狙うのか。


「うむ。ならば奴の過去から説明するとしよう」


 龍神より語られる破王の過去は、マナにとって聞き覚えのある話であった。



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