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歴史の陰で生きる異種族  作者: 青枝沙苗
3章 隠された真実

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10話 ダリス六華天

マナの相手が決まり、それから一ヶ月経った頃、ダリスでは帰還したアレクと――


「クレアよおおおお!」


 クレアとレーラの報告を受けるところだった。


「急に何言い出すのよ」


「誰かアタシの事をアレクって言ったの! あんたたちだって思ったでしょ!?」


 アレクがキーキー言うのはいつもの事である。


 場所はダリス帝国場内の会議室。そこにはダリス六華天が揃っているのだが、一人足りない。それを聞いたのは五番目のコロット・ココット。彼こそ、マナが江月へ行く前に演説をした時に襲撃をかけた人物なのだ。


「ボスはまだづら?」


 ボスとは、六華天の一番目の事である。一番強く、一番権力がある六華天の長だ。


「あの方と話があるから遅れてくるそうだ。先に始めてくれと言っていたぞ」


 コロットの問いに答えるのは二番目の森内キルク。緋媛が始末したシドロの上司に当たる。


「けーっ! ボスがいねーなら帰っていーいー? 俺様暇じゃねーんだけど」


 テーブルの上に足を放り投げているのは、四番目のジョー・アクレラン。ダラダラと椅子に座っている。暇じゃないと言うジョーに、レーラは鼻で笑った。


「あんたの忙しいは、家畜に構う忙しいでしょ? 笑っちゃう」


「あんだと!? 」


 ガタンと立ち上がるジョーに、キルクは一喝した。


「座れジョー!」


 舌打ちをし、レーラを睨みつけて座った。キルクが話を始める。


「集まって貰ったのは、江月が金の瞳を持つマナ・フール・レイトーマを手に入れた事だ。レイトーマの監視役であり、龍族との連絡役である片桐緋媛が動き出した結果がこれだ。シドロからは隙がないと聞いていたので、拙者らも慎重になり過ぎたかもしれん」


 キルクから緋媛の名前が出るだけで、アレクの目はピンクのハートマークが浮かんでいる。そんな彼を無視して話を続けるキルク。


「そこでアレク、コロット、レーラを向かわせたが、揃いも揃って引き上げてくるとは、情けない……」


「だーって、あんなイケメン達に相手じゃ本気出せないわよ。そのお姫様もいたし、つい怒っちゃった♪」


 口を尖らせてプイッとそっぽを向くアレク。今度はコロットが言う。


「タイミングが悪かったづら。それに緋媛の縄張り意識が強過ぎるづら。あれ以上いて捕まったらレイトーマと紛争になるづら。引き際も肝心づら」


 コロットに関しては“あの方”の命令だったが、現場での判断だと言う。これに関しては彼らのボスも納得していた。そして、足を無くしたレーラ。


「あたしのは完全に読み違い。奴らの幹部の緋倉は致死量の五倍じゃ足りないみたいで、毒が効くまで時間がかかったの。でもあれは確実に死ぬものだから、例え生きてても時間の問題よん」


「足と引き換えに緋倉に毒盛っただけかよ。クソだろ」


「何だってえ!?」


 ジョーの毒舌に怒って立ち上がるレーラだが、キルクが睨むと大人しくなった。


「成果が出たのはレーラだけだが、マナが江月に入ってしまってはどうしようもない。ナン大陸ではゼネリアを始め、緋倉とフォルトアが常に徘徊している。軍を率いて攻めるしかないが、レイトーマと繋がっている以上、迂闊に手を出せん」


「考える暇あったらさっさと攻めりゃいいじゃねーか」


「あんたバカ? レイトーマも敵に回したいの?」


 ジョーの浅はかな発言に、レーラとコロットが反論する。


「新たな国王はマナの弟で、奴らの所にいた事があるづら。マナがある状態で仕掛ければ、レイトーマも進軍するづら」


 ぐうの音も出ないジョーは、段々不機嫌になっていく。トドメにアレクが言った。


「だからお姫様を手に入れようとしたんじゃないのよー」


「うっせーよ! オカマ野郎!」


 お前にだけは言われたくないとばかりに、ジョーは声を張り上げた。アレクはぶーと頬を膨らませて不貞腐れた。大きなため息をついて冷静になるジョー。


「……で、どーすんだよ。結界が邪魔で入れねえし、家畜を連れてった所で森番がいるから返り討ちに遭って家畜取られるぜ」


「俺が行こう」


 そこで、会議室の扉が開き、アレクの瞳をがピンクのハートに変わり、心臓が脈打つようにハートの眼球を出し入れしている。


「ああん! ボスううう!」


 ボスという男は、駆け寄って抱きつこうとするアレクを躱した。アレクは壁に激突して鼻血が出る。


「俺が江月に行く。王と話をつけてきた」


「ボス自ら? 拙者が行きます!」


「お前はこいつが暴走しないように纏めておけ。マナが手に入ったら世界を変える。その準備をしろ」


 キルクはボスの単独行動をさせたくはなかった。しかし、あの方、いや王の命令ならば仕方がない。


「レーラ、お前の義足もそろそろ出来上がる。付けてみて調整しておけ」


 レーラから頼んでもいないのだが、ボスは彼女の為を思って手配したのだ。それにきゅんと心を鷲掴みにされるレーラ。


「ボス……、ありがとうございます」


「ジョー、あまり家畜を虐めるなよ。数が少なくなっている」


「へーい」


 そんな命令はさらさら聞く気がないジョーは、小指を耳に入れて掃除していた。


「コロット、アレク。お前らは鍛えておけ。万が一ゼネリア達が出てきては手も足も出まい。少しでも強くなっておけ」


「わかったづら」


「ボスのためなら! アタシの緋媛に会えるなら!」


 ボスは会議室から出て行った。何をしにきたかと思えば、ボスは命令をしに来ただけなのだ。すぐに江月へ旅立つため、時間を掛けたくないという。


 ボスの出現に皆が締まった後、ジョーは疑問が湧いた。


「江月に行くって言ってたけど、結界はどうすんだよ」


 この答えを知っているのはキルクだけだが、アレクだけは感づいていた。


「あらぁ、知らないの? ボスは龍族なのよ。あのイケメン顔、誰かに似てると思わなぁい?」


 なぜボスがダリスにいるのか、その理由は不明だが、利害が一致しているためダリスに、六華天に置いているらしい。時々里に戻っては情報を王や六華天に流している、いわゆるスパイなのだ。


 その男は今、首から下げているロケットの中の写真を眺めていた。



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