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ステータスチートはロクでもない  作者: 西洋躑躅
第一章:"  "の勇者
7/27

職業選択と装備調達をした時のお話

あれから俺達はギルドの近くにあった宿で一泊し、朝食を食った後すぐに教会に向かった。

教会に向かった理由は勿論、職業を覚えるためだ。

俺は勇者というメイン職業があるがサブ職業は以前空白だし、椿も同様に何の職業にもついていない。


「椿はなんかなりたい職業とかあるのか?」

「何があるのか分からないので何とも言えないですけど、まず絶対に前衛には立ちたくないので魔法使いとかそんな感じのですかね」

「椿も魔法使いなのか?俺もせっかくファンタジー世界に来たんだから魔法使いたいと思ってたんだが…魔法使い二人のPTって大丈夫かよ」

「明継さんのステータスならパーティバランスなんて気にする必要は無いと思いますけどね」

「…それもそうか」


そんな事を話しあいながら教会の中に入って行く。

教会の奥に何やら大きな水晶体が浮いており、その前に数人の人間が列を成していた。

俺と椿もすぐにその列に並ぶ。

5人程前に並んでいたが、10分としないうちに俺の番が回ってくる。


前の人間がやっていた事を見様見真似でやってみる。

水晶に手を触れステータスと唱えると、目の前にウィンドウが現れ、現在習得可能な職業が一覧に表示される。


■初級職

・村人  Lv1

・戦士  Lv1

・剣士  Lv1

・魔術師 Lv1

・僧侶  Lv1

・盗賊  Lv1


どうやら最初に覚えられるのはこの6つらしい。

確かエメリアさんの話では中級、上級職はそれぞれ前提となる職業のレベルを上げていけば覚えられるって話だったな。

それと特殊な条件で覚えられる特殊職なる物もあるって話だったが、流石にまだ覚える事は出来ないようだ。


(まぁ、とりあえずこの中だと魔術師一択だな)


ウィンドウ内の魔術師の部分をタッチすると、ウィンドウが何時ものステータスウィンドウに切り替わり、勇者のスキルツリーのタブの横に魔術師のスキルツリーのタブが追加され、ステータスの表示も変化する。


――――――――――――――――――――

名前:神多明継 Lv1

メイン職:勇者  Lv1

 サブ職:魔術師 Lv1

HP :708136142822566345079094785139…

MP :131945816607722840935750132684…

攻撃:247869953129872580531037646041…

防御:347282601612830994493075618557…

魔力:123197834562932175102318730017…

精神:513307615840491729680532296478…

敏捷:437225302576878939004669115814…

・スキル

勇猛:Lv1

ファイアボール:Lv1

――――――――――――――――――――


よし、これで第一目標である職業と魔法の習得は完了だ。

俺は覚えたての魔法に思いをはせながら、ルンルン気分で椿に番を譲った。










「はぁぁぁぁぁ………」

「おい椿、元気出せって」


俺は今、教会を出てすぐの所で地面に体育座りをしている椿を必死に元気づけようとしていた。

何故こんな事になっているかと言えば…。


「明継さんは良いですよねー…六つの職業から好きな物を選べて…私なんて村人一択ですよ…」

「そんな落ち込んだって仕方ないだろ、ステータスALL1じゃ適正無くて村人以外は選べないんだからさ、むしろ村人になれただけでもラッキーって思っておこうぜ?」

「何がラッキーなもんですか。職業ボーナスも無ければ固有のスキルも何もない、こんなのどうしろって言うんです、無職と何ら変わりないじゃないですか…」


困ったな、想像以上に落ち込んでいる。

どうにかしてやる気を出させないと、このままじゃ魔物討伐はおろか街の外に出るのも一苦労だ。


「こんな状態で魔物に出会ったら間違いなく死ぬ未来が見えますよ…」

「いや、そこは装備で何とか補ってだな…ほらHPだって2000あるし、装備を揃えれば十分戦えるようになるって!椿の装備最優先で揃えるからさ、とりあえず装備を買いに行こうぜ?」

「うぅぅぅ…防御力が高い装備でお願いしますよ…」


ほんの少しではあるがやる気を見せた椿を連れて冒険に役立つ店が集まっているという東区を目指す。

取り合えずまず最優先で防具が欲しいという事で、金属系の防具を扱っている店に来た。


「とにかく防御が高いの!高いのをお願いします!」

「防御が高いと言ってもなぁ…こんだけあるとどれが一番高いのか分からんぞ」


そもそも王様からある程度は貰っていると言っても、防具だって決して安くはない。

この後武器も買う事を考えればある程度は残しておく必要がある。


「おう兄ちゃん、防御力が高い装備をご所望かい?」


俺達のやり取りを見ていた店の店主が声を掛けてくる。


「えぇ…こっちも予算があるんで、10万リーユくらいで買えるオススメの防具ってありませんか?」


ちなみにだが、初心者用の金属鎧が3万リーユくらいだと考えれば、そこそこの物が買えるはずだ。


「10万リーユで一番防御が高いのって言えば…これだな」


そう言って店主が取り出したのは一つのプレートアーマーだった。


「これなんてどうだ?」


店主はそう言ってプレートアーマーをこちらに差し出してくる。

見た目は確かに頑丈そうだが、正直見ただけではどれだけの防御力があるか分からない。


「これ、どれくらいの防御力があるんです?」

「あぁ?兄ちゃん達、装備のステータスの確認の仕方知らねぇのか?」

「えぇ…最近ここに来たもので」


俺がそう答えると、店主が一瞬何か考えるような素振りを見せた後、ハッとした表情になる。


「兄ちゃん達、もしかしてこの国の勇者か?」

「あー、はい…そうですけど」

「あーダメだダメだ!勇者がこんな装備付けてたら俺達の国が笑われちまうぜ、ちょっと待ってろ!」


店主はそう言うと防具を持って店の奥に引っ込んでいく。

俺と椿が所在なく佇んでいると、店主が戻ってくる。


「待たせて悪かったな、コイツはどうだ?」


店主が持ってきた防具、それは先ほどの物と比べると装甲も薄く、非常に軽そうな見た目の胸当てだった。


「見た目こそさっきの防具の方が頑丈そうだが、コイツはこの薄さで防御力は殆ど変わりない」

「何が違うんです?」

「デメリットさ、さっきの防具は装甲が分厚い分装備すると敏捷にマイナス補正が入る。コイツにはそのデメリットが無い」

「なるほど…でもその分値段も高いんじゃ」

「定価は30万リーユって所だが、特別に10万リーユで売ってやる。変わりに魔王討伐頑張ってくれ、応援してっからよ」

「ありがとうございます!…って、勝手に話進めちまったけど椿はこれで良いか?」

「とにかく防御力さえ高ければ私は何でも良いです…」

「それじゃ、その鎧下さい」

「毎度あり!頑張ってくれよ!」


店主から防具を受け取った俺達は、その足で今度は武器を買いに来た。

店の中には剣や短剣、弓にボウガン、メイスやハンマーなど多種多様な武器が取り揃えられていた。


「さてと、武器は何を選ぶ?」

「武器…?いえ、防具さえあれば私はそれで充分ですが」

「いや、武器無いと戦えないだろ」

「私は後ろで丸まってるので武器なんて必要ありません!」

「それ居る意味ねぇじゃねぇか!そんなんじゃずっとレベル1のステータスALL1のままだぞ」

「うぅぅ…それは嫌です」


椿はそう言うと渋々武器を選び始める。

俺も防具はともかく、武器くらいは持ってないと怪しまれそうだしな。


桁外れなステータスのおかげで武器なんて何でも良いのだが、やっぱり魔物と戦うと考えるとカッコいい武器を持ちたいと思うのは男として仕方のない事だろう。


そんな事を考えながら店内を物色していると壁に飾られた大きな剣を見つける。

それは刃の部分だけで1メートル以上はある大きなツーハンドソードだった。

横には木札に値段が書かれており、最初は15万と書かれていたのだろうが、すぐ横に赤字で大きく5万リーユと書かれていた。


(随分と思い切った値段にしてるな…どれどれ、どんな武器だ?)


ここに来る前、防具屋の店主に装備やアイテムの情報の見方を教えて貰ったのでそれを試してみる。

やり方は簡単で対象に手を触れてステータスと唱えるだけだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名称:ツーハンノソード

攻撃:+150

敏捷:-30


・詳細

通販タレントの勇者が伝えた装備『ツーハンノシリーズ』の内の一つ。

何だかんだと理由を付けて値段を釣り上げた後、何だかんだで値段を定価まで落とされた両手剣。

購入者はお得感を感じる事が出来るが、実際は定価通りの性能でしかないため損もしなければ得もしない。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ツーハンノソードって、ツーハンドソードとかけたダジャレかよ…」


そもそも通販タレントの勇者ってなんだ、廃課金の勇者といいロクな勇者が居ないじゃないか。

俺がそんな事を考えていると、店の奥から店主が現れ声を掛けてくる。


「いやーお客さんお目が高い!その剣はなんと!あの有名な『通販タレントの勇者』が考えた逸品なんですよ!」

「有名って言われても今さっき知ったばかりなんだけど」

「その剣は両手で扱う事ができ、さらに!攻撃力は片手剣と比べても非常に高くピカイチの代物なんです!」

「両手剣なんだから当たり前でしょ」

「定価15万リーユの所を今ならなんと!初めてのお客さんに限り5万リーユでご提供いたします!このチャンス!逃す手はありませんよ!」

「要らないです」


俺がキッパリとそう答えると、先程までテンション高く販促を行っていた店主が近くの椅子にドカッと腰掛けて気だるげな表情を浮かべる。


「はぁぁぁ…ですよねぇー…まぁ、お兄さんがソイツのステータス見てた時点で買う気は無いだろうなとは思ってたんだけどね」

「なんか一気にテンション落ちましたね」

「これが素なんですよ…大体あんなアホみたいなテンションが素とか在り得ないでしょ?」

「じゃあさっきのテンションは何だったんだ…」

「『ツーハンノシリーズ』の装備を売る時はああやって売るのが決まり事なんですよ。なんでも通販タレントの勇者が『ツーハンノシリーズ』はこうする事で真価を発揮するだとか何とか言い残したそうでね。全く面倒臭いったらありゃしない」


勇者ガチャといいツーハンノシリーズといい、なんで歴代の勇者は本当にロクな物を残して行かないんだ。


「明継さん」

「ん?椿か、武器は選び終わったのか?」

「はい、これにします」


そう言って椿が見せたのはメイスと盾がセットになった物だった。


「てっきり弓とかボウガンを選ぶと思ったのに、そんな前衛向きの装備で良かったのか?」

「本当は嫌ですけど、私のステータスじゃ弓やボウガンなんか使ってたら倒すまでに何発必要になるか分からないですし、その間に接近される事を考えたら防御力が上がる武器が良いなぁと思いまして」

「なるほど、それじゃ椿はそれで決まりとして俺の方は…コイツで良いか」


そう言って近くにあった手ごろなロングソードを手に取り、ロングソードとメイスと盾のセットを購入し店を出た。


「さて、とりあえず最低限の武具は揃えたが…なんかまだ埋められる装備欄あったっけ」


ステータスウィンドウから装備の一覧を表示させ、装備可能な部位を調べる。


「武器、防具…それと装飾品スロットが3つか」


俺は武器だけだが椿は武器と防具、それと王城で貰った首飾りで装飾品一つが埋まっているはずだ。


「装飾品二つくらいならまだ買えるか?。でも消耗品なんかも一通り買い揃えときたいしな…なぁ椿はどうしたい?って、あれ?」


隣を歩いていたはずの椿の姿が見えず、俺は辺り見渡す。

すると背後の方から椿の声が聞こえてきた。


「ま、待ってくださーい!」


その声に後ろを振り返ってみると人混みに揉まれながら必死にこちらに呼びかける椿の姿があった。

どうやら考え事に夢中で椿が途中で人混みに飲まれていた事に気付かなかったようだ。


なんとか人混みを抜けた椿がゆっくりとした足取りでこちらに向かってくる。


「明継さん酷いですよ…私を置いていくし、何度声を掛けても気付いてくれないですし」

「悪かったって、ちょっと椿の装備をどうするか考えてたんだよ」

「装備ですか?もう装備は揃えたのでは?」

「いや、まだ装飾品を二つ付けられるはずなんだ。HP以外にもまだ補強しときたいステータスはあるか?」


まぁ椿の事だから防御の上がる装飾品一択だろうな。


「補強したいステータスですか…それなら敏捷を上げておきたいです」

「あれ、敏捷?防御じゃなくてか?」

「はい、実はさっき明継さんに置いて行かれた時、すぐに追いかけようとしたんですが…どうやら駆け足所か早歩きも出来ないみたいで…」

「は?じゃあもしかして今まで歩いてたあれが全速力になるのか?」

「みたいです」


まさか敏捷1というのがこんな所に影響を及ぼしているとは思わなかった。

ゲーム的に言えば命中や回避、後は会心率くらいにしか影響が出ないと思っていたのだが…今度エメリアさんに詳しく聞いておくか。


という訳で俺達は敏捷が上がる装飾品を買うためにその手の商品が扱ってそうなお店を探し回った。

装飾品という事で真っ先にアクサセリーの類を扱ってるお店を覗いてみたが、ステータスアップよりも状態異常無効などの特殊効果が付いた物ばかりで思って居たような物は売っていなかった。

しかしそこの店員さんからそういった装飾品を取り扱っているお店を教えて貰い、現在俺達その教えて貰ったお店である雑貨屋に来ていた。


「手袋に靴、ブレスレットとアンクレット、そして外套」

「手足を守る防具が無かったのは装飾品扱いだったからなんですね」

「みたいだな」


相づちを打ちながら俺は店内の物を見て回る。


「敏捷に影響しそうな装飾品と言えば、靴かアンクレットのどちらか…っと、早速見つけた」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名称:クイックグリーブ

防御:+15

敏捷:+15


・詳細

クイッカーの皮で作られた革製グリーブ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名称:クイックアンクレット

敏捷:+30


・詳細

クイッカーの頭髪で編まれたアンクレット。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


クイッカーというのは魔物か何かの名前だろうか。

しかし装飾品も意外と値段が高い、これ二つとも買ったら金に余裕が無くなりそうだな…。


「なぁ椿、この後消耗品なんかも買う予定だからあんまり無駄遣い出来ないんだ。どっちか一つ選んでくれ」

「んー…それじゃあグリーブの方で」

「了解」


俺はグリーブを片手にカウンターまで行き、金を支払ってグリーブを手に入れた。

その後は回復薬や周辺の地図など消耗品や冒険に必要そうな物を購入して回った。


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