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ステータスチートはロクでもない  作者: 西洋躑躅
第一章:"  "の勇者
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チートスキル(笑)がチートスキルと化した時のお話

「今度はゴブリン二体か。椿、スキルポイントは全部振ったか?」

「はい!敏捷に全部つぎ込みました!今ならゴブリンとも対等に戦える気がします!」

「そりゃ良かった。気休めにしかならないだろうが勇猛は要るか?。スキルポイントで取ったステータスは補正値じゃなくて基礎値に加算されてたし、もしかしたらステータスアップの対象になるかも知れない」

「はい!ぜひお願いします!」

「了解、それじゃ『勇猛』!!」


本日二回目のスキル発動、一回目の時同様俺と椿の身体を光が覆うのだが、その光が前回よりもハッキリとしているように見えた。


「あれ、なんかさっきより眩しくないかこれ?なぁ椿――」

「いっきますよー!」


異変に気付いて椿を呼び止めようとしたが、戦闘態勢に入った椿の耳には俺の声は届いていないようだった。

地面を踏みしめ、椿がゴブリン目がけて全力で駆け出そうと地を蹴ったその時、地面が爆ぜ椿の身体がすっ飛んで行く。


「「へ?」」


一体何が起こったのか理解できず俺と椿の口からそんな声が漏れ出す。

勢い良く飛び出した椿は予想外の勢いに体勢を崩し、身体は上下反転し足は空に向かって投げ出され、ゴブリン達には背を向けていた。


椿の装備を考えればゴブリン達程度なら何の問題も無いだろうが、あの勢いで地面に叩きつけられでもしたら大ダメージは避けられない。

しかも頭が下を向いているのだ、嫌な想像が俺の頭を過る。


「椿っ!!」


椿の名を叫びながら俺が咄嗟に手を伸ばした時、椿が空中で右足を振り上げ前方に居た一体のゴブリンの頭部目がけて右足を振り下ろし、その勢いを利用し椿は空中で態勢を立て直す。


振り下ろされた椿の右足の踵はゴブリンの頭蓋を砕き、ゴブリンの頭上でそのまま右足を軸に身体を独楽のように回転させすぐ脇に居たもう一体のゴブリンの頭部めがけメイスを振り抜く。


「っふぅ」


軽く息を吐くと共に椿がゴブリンの頭部から飛び降り地面に着地する。

飛び降りた椿の背後には頭蓋を砕かれ頭部は陥没し首は捻じれ曲がったゴブリンと頭部を粉々に粉砕されたゴブリンの亡骸が転がっていた。


目の前で起きた一瞬の出来事に脳の処理が追い付かず、伸ばした手を引っ込める事すら忘れる程にそれは衝撃的な出来事だった。


「明継さん?」

「はっ!?」


椿の声で我に返った俺は椿に詰め寄る。


「おいなんだ今の!?今までのポンコツ具合が嘘みたいな戦いっぷりは!?」

「え?そっちですか?。だってそりゃ私神様ですよ?明継さんが持ってるその力も元は私の力なんですからそれを扱えるくらいの技量は有りますよ。それよりも今は私のステータスを確認する方が先決じゃありません?」

「ぐっ…確かに」


あの椿とは思えない程の見事な戦いっぷりにそっちにばかり意識が行ってしまっていたが、それよりもまず地面を破砕したあの脚力とゴブリンを一撃で鎮めた攻撃力が問題だ。


「いきなりあんな力が出るもんですからビックリしましたよ」

「その力に即順応して体勢を立て直しつつゴブリン二体を瞬殺した椿に俺はビックリしてるよ。それよりもステータスの確認」

「分かってますよ『ステータス』」


俺に促され椿が自分のステータスを確認する。

ステータスウィンドウを上から舐めるように見ていた椿だが、視線が下に向かうにつれ頬をヒクヒクと引くつかせ、一番下まで視線が向いた頃にはその表情はピークに達していた。


「おい、何があったんだよ?」

「明継さん、ご自分のステータスを確認してみてください」

「俺?今は椿のステータスが問題であって」

「良いから言われた通りに確認してください」

「…分かったよ『ステータス』」


椿に言われるがまま俺はステータスを確認する。

パっと見る限り俺のステータスに変化はない。

レベルもまだ上がっていないし、ステータスも当然のようにウィンドウの外まで突き抜けている。


「見たぞ、それで一体何が問題――」


何が問題なんだと言おうとした俺だったがウィンドウの一番下を見た瞬間、それに続く言葉を失った。


――――――――――――――――――――

・スキル

勇猛:Lv146529

ファイアボール:Lv1

・状態

勇猛:全ステータスアップ(51915%)

――――――――――――――――――――


あれ可笑しいな、俺の目が腐りでもしたのだろうか。

ちょっと前に見た時より勇猛のスキルレベルも倍率も全然違うように見えるのは何故だろう。


「ゴ、ゴブリンって幻覚作用のあるスキルの使い手だったのかな?」

「幻覚じゃ無いですよ明継さん。第一明継さん戦闘に参加してないじゃないですか」

「いやいやいや、じゃあ何だって言うんだよこれ、なんでさっきまで誤差にも程があるとかdisられてたスキルがこんな超変貌を遂げる訳?why?」

「明継さん落ち着いてください。動揺し過ぎて違う人種が混ざってますよ」


椿のツッコミで俺は少しづつ冷静さを取り戻していく。


「落ち着いてよく考えてみてください。明継さんの勇者スキルはステータスアップ系、それが何故こんな短期間でこれ程の急激なレベルアップを遂げたのか」

「確かスキルの経験値の入りはそのスキルの本質をより効果的に発揮した時ほど多くなるんだったな」


ステータスアップ系スキルの本質、それは言うまでも無くステータスを上げる事だ。

ではそれが効果的に発揮した時とはどのような状態を指すのだろうか。


「そうか、ステータスの増加量か」


実際に上昇したステータスの総合値、それが勇猛の、ステータスアップ系スキルの経験値となる。

つまり最初に勇猛を発動した際、俺のウィンドウ外まで突き抜ける規格外のステータス、その50%分が勇猛のスキル経験値として加算されていたのだ。


「ステータスが高ければ高い程、倍率で上昇する明継さんの勇者スキルは効果的に力を発揮する訳ですが」

「効果的にも程があんだろこれ…二人で分けておよそ520倍って、単体だと1040倍じゃねぇか。バランスブレイクってレベルじゃないぞ」

「明継さん、それは今私達に掛かってる倍率であって二度目の使用でスキルレベルも上がってるでしょうし、今はもっと酷い事になってると思いますよ」

「スキル詳細を確認するのがこえーよ…どうすんだよこれ、迂闊に使えないぞ」


もしこのスキルによってステータスが上昇した状態で攻撃スキルを発動させようものなら間違いなく大惨事、俺だけでなくパーティメンバー全員漏れなくスキル使用禁止である。


「とにかく勇猛は封印だな。使う度に倍率が上がってどんどん扱い辛くなるのが目に見えてるし」

「ですね」


こうしてチートスキル(笑)だった俺のスキルは本物のチートスキルとなり、封印される事となった。

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