ー起ー
サンタと真田って似てない?って言う思いつきから書き始めました。冬の陣のみです。
戦国最後の戦、大坂の陣。一人の男が大坂城に付随する要塞、真田丸に居た。彼の名前は、真田源次郎信繁、通称幸村である……と言いたいところだが、違うのである。彼は12月に入り師走暴走を計画していた大坂紅蓮隊の隊長、木下龍輔である。
彼を筆頭とした十二名が戦国の世に迷い込んでしまったのである。
「龍輔!今年もバイクで飛ばすんか?」二番手の大滝が言った。
「最近は厳しいから法律順守でツーリングでも行こうか。」
「どうしちまったんだよ。以前より丸くなったな。おい」
「俺たちももうすぐ二十歳。けりをつけなきゃいけねえだろ。それに暴走行為が主じゃないんだ。世にいうイベサーってやつよ。」
「あ?なんだそれ。イベリコ豚のサーロインか?」
「馬鹿野郎。豚にサーロインはねえだろ。悪かったな。イベントサークルのことだ。」
「ちっ。面白くねえな。もっと楽しませてくれよ。走りたいんだよ。俺は。」
「わかった。12月1日でいいな。行くぞ。大坂城へ。」
そうして、12月1日にサンタクロースの格好で大阪城までバイクを走らせたが、途中で道に迷ってしまった。
「嘘だろ。俺の住んでいる大阪で迷うことはありえないのに。どういうことだ。これは。」
いつの間にか和装の人達が見えてきた。明らかにおかしい。家屋もみんな典型的な和風建築である。大阪とは似ても似つかない建物の数々、彼らは目を疑った。
「隊長。どういう事っすか?これ。」力自慢の村江が木下に尋ねる。
「よく分かんねぇが。とにかく、江戸時代かその辺に迷い込んだみたいだ。前田。確かあんたは、大学で歴史学を専攻しているって話だよな。」
「はい。日本史を専攻しています。ですが、バイクで走らせて江戸時代に迷い込むなんてそんな馬鹿な事ありますか?」
「俺もそう思うが、あの城は俺達の知っている大阪城とは違うんだ。江戸時代だと思うしかあるまい。……よしお前達、取り敢えず城まで行こう。燃料はあるな。」
「はい。隊長。我々の力を見せましょう。どんな逆境でも負けません。」
「ただの暴走族じゃねぇ、頭脳も力も備わってる。大坂紅蓮隊の大勝負。始めようじゃねぇか。」
今、十二人の物語が始まろうとしていた。