第四話 真の森の覇者
リビングデッドの登場でブラッディスライムの護衛が必要なくなり、俺はオークの群れを駆け回って手傷を負わせに負わせまくる。
形勢は五分に持ち直したが、それはオーク小隊長が仲間を巻き込まないように魔法を使わないでいるからだ。
オークの数が減れば、小隊長の爆炎魔法が飛んでくるだろう。
今までの傾向から見て、爆炎魔法は攻撃対象に木の枝などの物理的な攻撃を加えるのが発動条件に思える。木の枝が刺さった途端に燃え上がったり、爆発したりといった効果だ。
炎棍というのがどういう技能か分からないが、爆炎魔法の一種だろう。
ある程度オークを減らして技能:連携が形骸化したところで襲い掛かるとしよう。
近くにいたオーク部隊長の股下を潜り抜けた直後に回れ右して背後から強襲を掛ける。首筋に噛み付いて技能:噛み千切るを発動すれば、一撃で仕留める事が出来た。
口の中の肉を吐き出すと、白い骨がみえた。ついにオークの骨まで噛み千切れるようになったらしい。
ステータスを見ている暇はないが、この戦いでLVも上がっているのだろう。
戦いの中で強くなる。それがワイルド系渋カッコいいパグである。
オークの死体が転がる森の中、俺は足を止めた。
転がる死体の数は三十を下らない。それでも、俺達を囲むオークは小隊長以下二十ほど。だが、もう増援はないようだ。
そろそろ、決着をつけようじゃないか。
俺が前に立つと、オーク小隊長は憤怒の表情で俺を睨み付けてきた。
魅力値マイナスの効果もあるだろうが、それ以上に仲間を目の前で殺された事が響いているのだろう。
オーク小隊長が棍棒を振り上げる。棍棒には渦状に炎がまとわりついており、触れた木の葉が燃え上がった瞬間灰になった。
かなりの熱量があるように見えるが、実際は精神の値である程度レジストできる。
オーク小隊長の精神値が1522、対する俺は今見てみたところ1322だ。差は200、どう効いてくるのかは分からないものの、木の葉のように触れただけで灰になる事はあるまい。
「ブアフォォオオ!」
オーク小隊長が雄たけびをあげ、地面に積もった木の葉を俺に向かって蹴り上げる。
目くらましかと思えば、木の葉にはすべて火がついていた。
慌ててその場から走って逃げると、木の葉は地面に落ちた瞬間小規模な爆発を起こす。爆竹程度の威力だが、まともに喰らったら足を止めるしかなかっただろう。
オーク小隊長が俺に向かって跳躍し、棍棒を振り降ろしてくる。
素早く避けた俺は、地面に触れた棍棒が放つ熱気を受けながらオーク小隊長の右に回り込んだ。
俺を追って、炎を纏った棍棒が横薙ぎに振り抜かれる。棍棒の振り抜かれた軌跡に沿って地面が燃え上がり、扇状に地面から煙が上がった。
迂闊に近付くのはまずい。
俺はやむを得ず一度距離を取るが、オーク小隊長は左足のつま先を地面に突き刺し蹴り上げる。土礫に威力は皆無だが、それが炎を纏っているとなれば話は別だ。
全力で回避した俺を背後から爆風が襲う。土礫に込められた爆炎魔法が地面に当たった瞬間に発動したのだ。
予想以上に強い。
オーク小隊長の攻撃を掻い潜り、どうにか足元に爪撃を食らわせたいところだ。少しでも傷を付けられればブラッディスライムの異型輸血からのコンボが決まる可能性もある。
「ブフォッ」
逆袈裟に棍棒を振るったタイミングで、俺は一気に距離を詰める。
歩幅は小さく、いつでも離脱が可能なように力を溜めながらも加速。
「グルアッ」
強く後ろ足で地面を蹴り前足で爪撃を繰り出す。
オーク小隊長の右足の脛に爪が掠った瞬間――地面が爆ぜた。
吹き飛ばされ宙を舞いながら、俺は視界に入ったオークの足元の状態から何が起きたのかを推測する。
あのオーク、自分のダメージ覚悟で足元を吹き飛ばす全方位攻撃をしてきやがった。
俺の速度に付いて来れないから、俺が攻撃するために接近するのを待っていたのだ。逆袈裟に振った棍棒はフェイント。俺をおびき出すためにわざと隙を作ったのだろう。
「ブフォ」
空中の俺に対して、オーク小隊長が勝ち誇ったように棍棒を横薙ぎに振るう。技能:大振りの一撃で威力を増した必殺の一撃だろう。
だが、甘い。
オーク小隊長よ、お前に恨みを持っているのは俺ではないのだよ。
「――ぎう」
がら空きになったオーク小隊長の背後にキラーゴブリンが現れる。影から湧いて出たかのように、寸前まで気配を一切感じさせない隠密だった。
そう、俺が仕留める必要なんてない。むしろ、お前が仕留めるべきだ。
種族:キラーゴブリン
LV:85
筋力:550+150
精神:670
魅力:95
技能:噛み付く 短剣遊び 薬草採取 落石 擬態看破 短剣投擲 短剣術(中) 投げ飛ばし 致命の一撃 連携
称号:姫騎士 ブス専(中) 岩石ラット殺し 魔蜘蛛殺し 短剣の使い手 殺し屋
ははっ、連携の技能が増えてやがる。
オーク小隊長が棍棒を振り抜くより先に、キラーゴブリンが短剣を深々と背中に突き刺した。
分厚い脂肪を貫き、内臓に短剣が達し、技能:致命の一撃の条件を満たす。
棍棒が纏っていた炎の渦が掻き消え、オーク小隊長の手から棍棒が抜け落ちた。
どすん、と重量級の音を響かせて、オーク小隊長の死体が地面に転がった。
「ぎっぎう!」
「ワオォオン!」
勝利の雄たけびをあげて見せると、オークたちがあからさまに怯んだ。
爆炎の魔術師の称号を持つオークはあの小隊長一体だけ。他のオークは筋力に物を言わせるパワーファイターで魔法の技能は持っていなかった。
間違いなく、オーク小隊長はこの場のオークで最も強い一体だったのだ。
統率者がいなくなったオークの群れが俺たちに背を向け潰走を始める。
「ワウ!」
逃がすな!
俺の一鳴きに応じて、キラーゴブリンやブラッディスライム、途中参加のリビングデッドが追撃に移る。
しかし、爆炎の魔術師の称号こそ持っていないもののLV112に達しているオーク小隊長が仲間を逃がすために俺たちの前に立ちふさがった。
種族:オーク
LV:112
筋力:896+400
精神:958+500
魅力:754+150
技能:叩き潰す 大振りの一撃 棍棒撃 連携(中) 粉砕 仁王立ち
称号:オーク小隊長 砕きし者 人類の敵 歴戦の勇 オークたちの憧れ オークたちの兄貴分
こいつ、仲間を逃がすことに慣れているのか、仁王立ちなる技能を持っている。群れが敗北した際、戦闘を継続する間筋力が上昇していく効果があるようだ。
しかも、時間経過や逃げていく仲間の数に比例して効果が上昇するとんでもない性能である。
そりゃあ、オークたちも憧れるわ。かっけえもん。おっさんの俺から見ても生き様がカッコいい。
あ、称号:パグの憧れが追加された。
こいつはやべぇ。大河ドラマで戦国武将が合戦で死んでいく様を思い出してしまう。スルメをかじりながら日本酒を飲む独り身のおっさんに漢とは何かを突き付けてくるあのシーンだ。自分が情けなくなってくるんだ。
思わず男惚れしちま――あ、キラーゴブリンの恋敵、ブラッディスライムの恋敵の称号が追加された。
「ブモ?」
オーク兄貴も違和感を覚えたらしく、キラーゴブリンとブラッディスライムを恐々とした様子で見比べた。
その瞬間、オーク兄貴に称号:嫉妬対象(特大)が付いた。特定の対象と対峙する場合に限り精神:-1800の恐ろしい効果である。
「ぎう……」
キラーゴブリンとブラッディスライムがオーク兄貴ににじり寄る。カラ鍋なんて正統派のヤンデレじゃない、もっと恐ろしくおぞましい何かの気配を纏うキラーゴブリンとブラッディスライムにオーク兄貴が後ずさった。
オーク兄貴が怯えている……だと?
直後、キラーゴブリンが短剣を投げつける。オーク兄貴は咄嗟に躱したものの、右肩にわずかな切り傷を付けられていた。
その切り傷にブラッディスライムの異型輸血が炸裂する。
「ブフモ!?」
オーク兄貴の身体にジンマシンが浮かんだ。
これはいけない。オーク兄貴が無様な死に方をしてしまう。
俺は咄嗟に地面を蹴り、オーク兄貴の喉元に食らいつく。
「……ブモ」
オーク兄貴の眼が俺に語っている。戦いの中で死なせてくれてありがとう、と。
俺は涙した。オーク兄貴と真っ向から男同士の戦いを挑めなかった俺の優柔不断に嫌悪した。
オーク兄貴が絶命したのを確認し、俺はオークへの追撃を中断する。
せめて、オーク兄貴が守った物だけは汚さないでおこう。そう思ったのだ。
森の中に取って返した俺は背後を振り向く。
キラーゴブリンとブラッディスライムが付いてくるのはいつも通りだ。
だが、リビングデッドのお姉さん、あんたも付いてくるのか?
「ヴぁー」
あぁ、言葉は話せないのね。
リビングデッドのお姉さんが持つ判官贔屓の効果は魅力がマイナスになっている者に加勢した場合に限り筋力が増加するというものだ。増加する量は加勢対象の魅力の絶対値との事。魅力-100なら筋力に+100って事か。
俺と一緒にいる限り、このリビングデッドさんの筋力が凄まじい事になるわけだな。
また濃いメンツが増えちゃったなぁ。
まぁ、いいか。
俺は棲家に帰るべく森の中を歩く。
さすがに疲れた。今日のところは棲家で今後の事について考えよう。
今回のオークたちは明らかに俺を狙ってきていた。俺の勢力拡大が気に入らなかったのだろう。
話が通じるわけでもないし、ここは森を出ることも視野に入れた方がいい。
今回はオーク小隊長が相手だったが、明日からはオーク中隊長とか出てくるかもしれないしな。
だが、俺の予想に反して事態は展開するようだ。
棲家に到着した俺を待っていたのは、オーク王を筆頭にしたオークの大部隊だった。
「ブフォ」
ようやく帰って来たか、と野太い声で言ったらしいオーク王が俺の寝床からケツを上げる。
俺がこの一年、集めに集めた毛皮で作ったあたたかフワフワな寝床はもう見る影もなかった。オーク王のケツの臭いが染みついた煎餅布団になってしまった。
沸々と怒りがわき上がる。
このオーク王にはオーク兄貴のような尊敬すべきところなど欠片も見当たらない。
他所様の寝所を荒らす奴は絶対に許さん。
オーク兄貴に免じて森から出て行ってやろうと思っていた俺の考えはどこかへ吹き飛んだ。
喧嘩は売らない。だが、買う。それが俺のワイルド系渋カッコいいパグ道だ。
「ガウ!」
オーク王のステータスを技能:閲覧で見る。
種族:オークキング
LV:229
筋力:2758+200
精神:1322
魅力:150
技能:叩き潰す 大振りの一撃 棍棒撃 連携(中) 粉砕 仲間を呼ぶ 大咆撃 地揺らし アースクロー
称号:オークの王 人類の天敵 両刀使い 仲間殺し 森の覇王
仲間殺しも持ってるのか。オーク兄貴はこんな奴の命令で……。
マジ許すまじ。
ところで、両刀使いってそう言う意味でいいのんけ? ノンケじゃないのんけ?
オーク兄貴、まさか……。
ひとまず、俺は交戦の意思を見せて仲間たちに戦闘態勢を取らせる。
オーク王は部下のオークたちに俺たちを取り囲む様に命じる。
「バウ!」
「ヴぁー」
俺が駆け出すと同時にリビングデッドが大剣を担ぎ、俺の援護に回ってくれた。
手近なオーク部隊長をリビングデッドが大剣の一薙ぎで牽制し、俺は死角から襲いかかる。
同時に、キラーゴブリンとブラッディスライムが攻撃を開始。俺達を取り囲もうと動いたオーク部隊の右側を足止めする。
噛み千切るを連発して、俺はふと、肉を丸呑みしてしまえば連続で噛み千切るが使えるのではないかと閃いた。
さっそく試してみようと、オーク部隊員の足をすれ違いざまに噛み千切り、丸呑みする。コンマ三秒程度の時間で丸呑みした俺は右足を軸に反転、空になった口にオーク部隊員の腹の肉を頬張った。
俺のステータスに技能:丸呑みと食い荒らすが追加される。
よし、きた。久しぶりの新技能取得である。
俺は新たな技能:食い荒らすを乱発する。
オークたちが次々と体の一部を噛み千切られて悶絶し、リビングデッドの強烈な一撃で両断されていく。
判官贔屓の効果で筋力が大幅に増加したリビングデッドは、オークが自らを庇うためにクロスさせた両腕さえも真っ向から斬り裂き、オークそのものをも斬り殺す。
どこの呂布だと言いたくなるほどの無双ぶりを発揮し、リビングデッドは大剣を振り回しまくっていた。
俺の頭上を大剣が幾度となく薙ぎ払う。大振りで大剣を振り回すリビングデッドに生まれる隙を小回りの利く俺が巧みにフォローする。
俺とリビングデッドに近付く事の出来るオークは存在しない。
オークたちも接近するのは無理と考えたのか、弓矢による遠距離攻撃に切り替え始めた。
リビングデッドは大剣を盾に防ぐが、反撃は出来ずにいる。
俺はリビングデッドから離れ、大地を疾駆した。
無数の矢や投石が俺に向かって飛んでくる。
しかし、後方から赤い液体がいくつも飛び出し、矢も石も残らず叩き落とした。
ナイスだ、ブラッディスライム。
弓や石を構えていたオークたちに接近した俺は、技能:食い荒らすを発動する。
肉おいてけ!
犬歯を喰い込ませたそばから噛み千切り、丸呑みして次の獲物へ。
悶絶するオークたちは俺に追いつけてきたキラーゴブリンが致命の一撃を叩き込んで始末する。
いつの間にか、俺達は技能:連携(中)を得ていた。
パグを筆頭にした群れの誕生である。互いを支え合い、生き抜くと誓った群れだ。
この戦いはオークの群れとパグの群れによる生存競争。オークで統一された連中と、一切種族が被っていない寄せ集めの俺たち、どちらが強い群れかを示す戦いなのだ。
俺たちの猛攻を受けて、オークたちの連携に乱れが生じ始めた。
こちらはたったの四体だが、各々が高LVの高ステータス、しかも戦闘方法を個別に確立している。
統率されてはいるものの仲間で囲んで倒すのが主な戦闘方法のオークたちは、俺たちの高速戦闘に対応しきれていなかった。
その時、俺の後方でリビングデッドがうめき声を上げた。
「ヴァアー」
体の芯から響かせるようなそのうめき声に振り向く。
種族:スプリンクルデッド
LV:100
筋力:856+200
精神:587+300
魅力:860
技能:大剣術(強) 連携(強) 殺陣 大振りの一撃
称号:腐りかけの矜持 誇り高くも腐った者 判官贔屓 オーク殺し 殺し屋 忠義者 パグに首ったけ
スプリンクル、振りまく?
死を振りまくって事か。物騒だな。
LV100に到達した事で進化したらしい。
まさかと思い、俺はキラーゴブリンたちを見る。
種族:スローターゴブリン
LV:100
筋力:950+150
精神:1670
魅力:895
技能:噛み付く 短剣遊び 薬草採取 落石 擬態看破 短剣投擲 短剣術(強) 投げ飛ばし 致命の一撃 連携(強) 殺陣
称号:姫騎士王 ブス専(高) 岩石ラット殺し 魔蜘蛛殺し 短剣の使い手 殺し屋 オーク殺し 瞬殺家 虐殺者 パグにメロメロ
種族:ゴーリィスライム
LV:100
筋力:279
精神:675
魅力:975
技能:美醜反転 草花運搬 貫通攻撃無効 形状変化 包み込む 吸血 輸血 異型輸血 抗体精製 アレルギー誘発 アナフィラキシーショック 連携(強) 殺陣 物理攻撃耐性(強) 魔法攻撃耐性(強)
称号:歪な石コレクター 醜い草花コレクター 吸血鬼 輸血の心得 アレルゲン オーク殺し 殺し屋 血みどろ パグに骨抜き
なんだか、物騒の度合いが増してしまった。
スローター、殺戮者か。称号の姫騎士が姫騎士王になってる。短剣術も強化されていた。
ゴーリィ、血みどろなスライムはステータスの値こそ貧弱だが、耐性技能が付いて耐久力が上がっている。
しかも、みんなオーク殺しの称号持ち。パグに何ちゃらの称号は触れないでおこう。
もしかして、俺も魔狼に進化してるのではないだろうか。
期待しつつ、ステータスを見てみる。
種族:パグ
LV:112
筋力:620
精神:1285
魅力:-3075-100
技能:噛み付く 爪撃 遠吠え 閲覧 噛み千切る 落石 擬態看破 丸呑み 食い荒らす 連携(強) 殺陣
称号:魔蜘蛛殺し 岩石ラット殺し 敵だらけ 四面楚歌 キング・オブ・パグ 憎悪されし者 オーク殺し パグ・ザ・ゴッド
うん、そんな気はしてた。
進化したら魔犬ですらなくなって、ただのパグかよ。
パク・ザ・ゴッドってなんだよ。史上初LV100に到達したパグってどうでもよすぎる。
ちょっと泣けてきた。
「ガルル」
もういいや。開き直ってオークを全滅させる。
俺は必死に仲間の建て直しを図っているオーク王を目指して走った。
ミサイルのようにオーク王へ一直線に駆けた俺をオークたちが足止めしようとするが、のろ過ぎて話にならない。
オークたちを巧みに潜り抜け、俺はオーク王に到達する。
「ブフォオオ!」
俺を見つけたオーク王が右足で地面を踏みつけた。
技能:地揺らしの効果か、ぐらぐらと地面が揺れる。体感で震度3くらいだろうか。地震を経験した事のない生き物ならパニックに陥りかねないが、日本人にとっては大したことはない。あ、揺れてんな、くらいの感想だ。
足を止めることなくオーク王の腹に噛み付き、噛み千切る。
地揺らしにまったく怯まない俺が意外だったのか、オーク王は噛み千切られた腹を片手で押さえながら棍棒を振り抜いてくる。
飛び退いた俺は、地面に違和感を覚えてすぐさま跳躍した。
直後、俺が立っていた地面から鋭利な爪を思わせる三本の棘が隆起する。技能:アースクローか。
絶えず移動を繰り返しながら翻弄する作戦に切り替え、オーク王を守ろうとしたオーク中隊長などすれ違いざまに食い千切っていく。
キラーゴブリン改めスローターゴブリンたちも進化した事で増した力を十全に発揮し、オークを圧倒し始めていた。
「ぶふ……ヴフブ」
形勢不利を悟ったオーク王が俺に背を向けて逃げ出す。仲間へは足止めに残るように命令しているようだ。
戦場から逃げ出し、贅肉をぶるんぶるんゆらしながら走り去ろうとするオーク王のなんて情けない事か。オーク兄貴の方がよほど王の器を備えていたように思う。
オークたちも同じことを考えたのか、オーク王に向かって走る俺を誰も止めようとはしなかった。
俺は逃げるオーク王にとびかかる。
技能:食い荒らすを発動。
オーク王の息の根が止まるまでその体を喰いまくる。
オーク王がピクリとも動かなくなった頃には、他のオークたちも奮闘むなしくスローターゴブリンとゴーリィスライム、スプリンクルデッドの餌食になっていた。
「……ワフ」
勝ってしまった。
「ぎう!」
「ヴぁー」
姫騎士王スローターゴブリンと忠義者スプリンクルデッドが勝鬨を上げる。声を出せないゴーリィスライムは何度も形状を変化させて喜びを表現していた。
俺は彼女たちの下に戻る。
何とも濃いメンツが集ったものだが、共に死地を潜り抜けられる仲間というのは悪くない。
いまだに魅力が下がり続けているが、この世界の全てが敵ではないと彼女たちが証明してくれいる。
うん、悪くないパグ生だ。
ステータスさんもそう思うだろ?
種族:パグ
LV:115
筋力:636
精神:1398
魅力:-3150-100
技能:噛み付く 爪撃 遠吠え 閲覧 噛み千切る 落石 擬態看破 連携(強) 殺陣
称号:魔蜘蛛殺し 岩石ラット殺し 敵だらけ 四面楚歌 キング・オブ・パグ 憎悪されし者 オーク殺し パグ・ザ・ゴッド 統率者 愛されし嫌われ者 天下一の果報者 おかしなハーレム主
ワイルド系渋カッコいいパグの称号はまだのようだな。