第五楽章【風】
―次の日・・・
今日も快晴。絶好の休日だ。
マキはいつものようにコーヒーを堪能して、
朝の爽やかな時間を楽しむ。
マキのお母さん 「あら、今日も早いのね」
マキ 「なんか起きちゃった」
マキのお母さん 「そ。いい天気だし、散歩でも行ってきたら?」
マキ 「そーするよ。」
マキのお母さん 「んじゃ、ついでに牛乳とパン買ってきて☆」
マキ 「はいはい」
― 十五分後・・・
マキ (どこ行くか・・・)
春の心地よい風が、北鎌倉の朝を包む。
マキはなんだか高揚して、走りたくなった。
タッタッタ・・・
マキ (あ、なんかいいかも)
すると、後ろからクスっと笑い声がするのが聞こえた。
振り向くとそこには高野がいた。
マキ 「た・・・高野」
高野 「おはよ・・・ぷっ・・・」
マキ 「な、なんだよっ」
高野 「はは・・・ごめん、マキ、笑顔だったから(笑)」
マキ 「は、はぁ!?私だってそんなときもあるよ」
マキは少し照れたように下を向いた。
高野 「珍しいなって思ったんだよ(笑)・・・毎日散歩してんの?」
マキ 「まぁ、たまに?」
高野 「そうなのか~。俺も身体鍛えなくちゃいけないからランニングしてたとこだ☆」
マキ 「そうなんだ。邪魔したね」
高野 「呼び止めたのは俺のほうだからな・・・あ、もしよかったら一緒に走らないか?」
マキ 「いいけどさ、カレンに見つかって疑われても知らないから」
高野 「え、アイツは・・・その・・・」
マキ 「はいスタート!」
気づくとマキはささっと走っていった。
高野 「あ、待てよー!」
タッタッタ・・・
高野 「意外と走るの早いんだな」
マキ 「そう?」
高野 「サッカー部の俺と同じペースなんてなかなかだぜっ」
― 十分後・・・
二人は小さな公園に着いた。
マキ (ふ~・・・疲れた。)
子供 「あ、高野おにいちゃん~」
高野 「よ。」
子供 「このひとだーれ?かのじょ?」
高野 「こらっ(笑)学校のおともだち。マキってゆーの」
子供 「へ~かっこいい~」
高野 「だろ?」
マキ (子供好きじゃないんだけどな・・・(苦笑))
子供 「お兄ちゃん、遊んでよ」
高野 「んああ・・・いい?」
高野は裾を子供にひっぱられながら、マキの方を見た。
マキ 「いいけど」
子供 「やった~!」
マキ 「じゃあ、私座って待って・・・」
そう言いかけた時、マキも子供たちにグイっと引っ張られた。
子供 「お姉ちゃんも~」
マキ (え・・・)
子供 「きてきて~」
マキ 「ちょ、ちょっと私はいいから」
子供 「いいの~~きて~!」
マキ 「うわっ・・・」
マキは砂場へ連れてこられた。
子供 「お兄ちゃん、お姉ちゃん連れてきたよ~」
高野 「お~・・・ははは、連行されたか」
マキ 「ちょ、ちょっと高野!笑ってないでこの子たちどうにかしてっ!」
高野 「・・・もしかして、子供嫌いだったりする?」
マキ 「っ・・・」
高野 「あ、図星か」
マキ 「うるさいっ」
子供 「ね~泥団子つくろ~!」
子供 「いぇ~い!」
子供 「わー!!」
子供 「きゃーー!!」
マキ 「はぁ・・・」
― 一時間後・・・
高野 「お、もうこんな時間か。みんなまた会おうな!」
マキ (あぁ・・・やっとここから抜け出せるみたい・・・)
子供 「うん、ばいば~い!」
子供 「今度はサッカーしようね!」
高野 「おう、じゃあな!」
マキたちは公園を出た。
マキ 「はぁー・・・」
高野 「はは、疲れた?そんなにマキが子供嫌いって知らなかったから・・・(笑)」
マキ 「もーすっごい疲れたんですけど」
高野 「ごめんごめん(笑)でも、楽しかっただろ?」
マキ 「んー・・・」
高野 「へへ。じゃ、俺たちも帰るか」
マキ 「うん。また学校で」
高野 「おうっ」
マキは家に帰った。
マキのお母さん 「お帰り!いつもより長かったわね」
マキ 「疲れた~子供の遊び相手させられたし・・・(苦笑)」
マキのお母さん 「いいじゃない♪・・・で、牛乳とパンはー?」
マキ 「あ」
春の少しヒヤリとした風が、北鎌倉の朝を包む。