第三楽章【春】
―次の日・・・
キーンコーンカーンコーン・・・
カレン 「おっはよー」
マキ 「あ、おはよ」
カレン 「・・・??あれ、どうしたの?なんか様子が変だけど」
マキ 「・・・社会の教科書、家に忘れた」
カレン 「えー!珍しいね。隣の人に見せてもらいなよ」
マキ 「うん・・・」
ガラガラ・・・
先生 「は~いホームルーム始めます」
マキ (あれ。隣の人休み??)
― 一時間目
マキ 「先生。」
社会の先生 「どうしました黒川さん?」
マキ 「すいません・・・教科書忘れました」
社会の先生 「珍しいですね、うーんと・・・あ、高野君の隣もお休みみたいだね。よし、高野君、黒川さんに見せてあげなさい。黒川さん今日だけ移動して。」
マキ 「ありがとうございます」
高野 (ええええ・・・!!)
マキは筆箱とノートを手に、高野の隣の席へ移動した。
マキ 「ごめん、宜しく」
高野 「お、おう・・・」
生徒 「ラッキーだな高野~♪」
高野 「な、なんだよっ」
社会の先生 「では、授業始めます~」
―三十分後・・・
社会の先生 「・・・という事なんですね。では、図の1を見てみてくださーい」
高野は教科書をマキへ近づけた。
高野 「・・・はい」
マキ 「あっ、ありがと」
高野 「お、おう」
高野はちらっとマキの様子を伺った。
ノートの字はとても整っている。試験前の時期になると、他の生徒が彼女のノートをコピーしたいと集まってくるが、それはただ彼女が人気だからというだけの理由ではないだろう。
しかも、朝の光がちょうどいいくらいにマキの黒髪を照らしていて。
まるで映画のワンシーンみたいに、彼女が一層美しく見える。
高野 (あー・・・やっぱり美人だなぁ)
社会の先生 「高野?・・・高野!!」
高野 「へ?」
高野はふと前を向いた。
周りの友達もニヤニヤしながらこちらを見ている。
社会の先生 「答え分かった?」
高野 「え!俺当てられてました!?」
生徒 「あはは・・・!」
高野は赤面しながらも、必死に何かそれらしい答えを言おうと、教科書の単語を急いで探した。
すると小さくマキがノートに何かを書いて、
そっと高野のほうへ寄せた。
高野 「・・・じっ・・・十七条の憲法・・・」
社会の先生 「正解だ!なんだ、ちゃんと聞いてたんだな」
生徒 「やるじゃん高野~」
高野 「いやぁ、あっぶねぇ~♪」
みんな 「ははは・・・!!」
高野は、先生がまた話し始めたのを見て、解放感と安堵でため息をついた。
高野 (あ・・・あっぶね~マジで!)
マキは何もなかったかのような顔をして、またノートをとり始めていた。
高野 「ありがとうな!助かった・・・」
マキ 「ん。」
― 二十分後・・・
キーンコーンカーンコーン・・・
社会の先生 「じゃ、終わります!」
みんな 「ありがとうございました~!」
マキは自分の持ち物をまとめて、椅子をしまった。
マキ 「ありがとう」
高野 「あ、うん」
―放課後・・・
カレン 「いや~今日も疲れた!」
マキ 「うん、まぁよかったよ。明日は学校休みだし、教科書もなんとかなったし」
カレン 「うん!・・・高野の隣になったね」
マキ 「ごめん、なんか」
カレン 「なんで!私は関係ない・・・し」
マキ (好きなんだなぁ(笑))
カレンの頬がほんのり赤く染まったのを見て、マキはくすっと笑ったのだった。