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黒髪のマキ  作者: Rainbowproject
17/18

第十七楽章【幻想】

―コーラスコンクール当日・・・


マキ 「・・・。」


マキは朝の光が、いつもより眩しく感じた。


マキ (とりあえず、学校に行って・・・練習してから会場行くんだっけ)


調子が悪いというわけでもないが、どこかふわふわしたような気持ちだ。





―予定通り学校で二、三回ほど練習をして、

マキ達は会場へと向かった。




カレン 「いよいよ・・・いよいよ本番・・・」


高野 「緊張してんなー」


カレン 「当り前よ!指揮者なんだからっ」


高野 「まぁ、気楽にやろーぜ」


カレン 「そうしたいけど・・・緊張~」


マキ 「・・・。」


カレン 「あ。マキちゃん、電車来たよ!乗ろう!」


マキ 「うん」


カレン 「も~昨日本当に寝れなかったんだから~」


高野 「あんなに練習したんだから平気だろ」


カレン 「励ましてくれてるのね・・・ありがと」


高野 「俺様がサッカーしないで歌に参加させられたほどの練習量だからな☆」


カレン 「はいはい、歌声に期待してるわ」


高野 「それにピアノは我らが黒川真希様だからな、これはもう優勝だろ」


カレン 「そうね!」








―三人は会場に着き、自分たちの席についた。


カレン 「はぁ・・・ラストだと、待っている間が長くて緊張しちゃう!早く終わらないかなぁ」


生徒 「ドキドキだよね~」


カレン 「手がガチガチになって振れなかったらどうしよっ」


生徒 「カレン~緊張しすぎだよー」


生徒 「そうだよ、いつも通りテンション高く行ったほうがいいよ!」


カレン 「う、うん・・・」






生徒 「高野、俺たちがデカい声出さないと勢いがつかないから頑張ろうぜ!」


高野 「そうなのかー?まぁ、声量とかポイント入りそうだけどさ・・・」


生徒 「マキ様とカレンちゃん、二人だけでも何度も特訓したらしーぜ!」


生徒 「くぅ~マジか!俺も混ざりたかった~」


高野 「ふっ、お前ら何言ってんだよ」


生徒 「高野ぉ~~お前だけずるいぞ!あの二人といつも一緒じゃないかっ。うらやましい・・・」


高野 「そうでもねーって!」


先生 「みなさん、もう少しで開演ですよ~」


カレン 「はああああう」


生徒 「カレン、声やばい・・・」


生徒 「まだ始まってからも時間あるから落ち着いて!大丈夫!」


カレン 「その待ってる時間が緊張するんだって~」







マキはカレンの隣で、静かに一点を見つめていた。


ブー・・・


開演の合図が鳴った。


先生 「はい、始まるよ~静かにー!」





音楽の先生が舞台上で、今日の審査員の紹介をしている。

真っ暗な空間の中、壁の木の色に包まれて、

どこか幻想的なステージだ。


さっそく中学一年生の発表が始まった。


♪~~~


マキはまだ、どこかぼんやりしていた。

今、目を閉じたらそのまま眠ってしまうのではないかと思うほどだ。


パチパチ・・・






―気が付けば、自分たちのひとつ前のクラスの発表が始まった。



カレン 「ねぇ、『次だからすぐ出れるように準備しておいて』って隣の人に伝えて!」


指揮者であるカレンが、こそこそと小声で伝言を回し始めた。


♪~~~


マキ 「・・・。」


パチパチ・・・


生徒 「続いて、高1A組のみなさんです」



カレン 「ひゃああああ」


生徒 「カレン!大丈夫!頑張ろう!」


生徒 「早く行かないと!さぁ!マキちゃんも!」


生徒 「緊張するな~」






―クラスの皆が舞台に上がり、カレンとマキも自分たちの位置についた。


ステージは思っていたよりも広くて。

そして、思っていたより眩しい空間だった。





カレンが手をあげ、クラス全員が半歩足を開く。

マキも鍵盤の上に手をのせる。


そしてカレンがマキを見て、頷いた。


手を振り始め、いつものように前奏が始まった。








―しかし、マキの視界は徐々に暗くなっていく。

このままではだめだ、と思いながら必死に鍵盤を叩く。

クラスの皆が歌い始めた。

自分がどこを弾いているのか、そもそも自分はここにいるのか分からないまま、頭痛と共に目の前に見えたのは、自分が忘れようとしていた光景だった。




上からバラバラと落ちてくるボールペンが、鍵盤に当たって自分の手を見えなくする。

乗り切らなくなったペンは、床に落ちて山積みになっていった。

過去の記憶が襲いかかり、恐怖と息苦しさで

呼吸が荒くなった。





生徒 「ねぇ・・・マキ先輩が・・・」


生徒 「えっ・・・」


ルイさん (マキちゃん・・・!)



―マキに内緒で見に来ていたが、彼女の異変に気付いた彼の隣には、マキの母親がいた。


カレン 「・・・!?」



親友の異変に気付いたカレンは、このまま演奏を続けるべきか、やめるべきか戸惑った。


―聞こえてきたピアノの音は、まるで子供が弾いているかのように不安定で、マキの音とは思えないほどガタついていた。




生徒 「黒川さんが・・・」


生徒 「何、どうしたの?」


生徒 「おい、やばくないか・・・!?」







ルイさん 「まさか・・・フラッシュバックしたんじゃ・・・!?」


マキのお母さん 「・・・!?」





カレン (なんとか音は出ているけど・・・このまま続けたらいけない気がする・・・)




乱れがちなテンポのまま、なんとか歌声をまとめようとカレンも必死に手を振った。

生徒たちも全員マキを心配そうにちらちら見ながら、歌っている。


♪~~~♪♪~





マキは必死に幻想を振り払おうと、演奏を続けた。

相変わらず視界は黒く、今にも倒れてしまいそうな苦しさだが、クラスの皆が一生懸命練習してきたことを、自分のせいで台無しにはできない。




マキのお母さん 「マキ・・・!」


マキの母親は思わず席を立った。


♪~~~




最後の盛り上がるフレーズに差し掛かるとき、

誰かが自分の手を支えてくれているように感じた。いつもの音色を取り戻し、客席からはため息が漏れた。




♪♪~~~♪


最後の一音を弾き終えると、会場はしんと静まった。





なんとかやり切った。カレンと目を合わせ、

安心したかのようなホッとした目で頷いた。




やはり、あれは予知夢だったのだろうか?


『未来はマキしだいだからね』


父の台詞が、ぼんやりとした世界に響いた。

―その後の事は、あまり覚えていない。



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