幻
※これは東宝ゴジラシリーズの二次創作です。決して現実の団体や場所との関わりはありません
20XX年。
世界は平穏だった。
各国では巨大生物の存在が確認されていたものの、日本は長い間、その脅威から遠ざかっていた。
それは、終わりが始まる前の静けさだった。
---午前10時34分。--
関東地方一帯で震度4程度の地震が観測される。
しかし震源は存在しなかった。
地下深くで何かが動いている。
専門家がそう結論付ける前に、異変は始まる。
東京都心。
アスファルトが波打ち、ビル群が激しく揺れる。
「地盤沈下か!」
誰かが叫んだ、その瞬間だった。
地面が一直線に裂ける。
裂け目から姿を現したのは、淡い緑色に輝く巨大な背鰭。
一本ではない。
何本もの背鰭が、大地を押し上げるように前進していた。
その背鰭だけで、高層ビルを超えていた。
地球防衛軍・東京方面隊は直ちに非常招集。
「未確認巨大生命体確認!」
「全車両退避!」
「住民避難を最優先!」
命令が飛び交う。
そして――。
地面が爆発する。
轟音とともに、黒い巨体が姿を現した。
体高280メートル。
胸から尾の先端まで350メートル。
青みがかった黒い皮膚。
山脈のように並ぶ淡緑色の背鰭。
その姿は、まるで大地そのものが歩き出したかのようだった。
巨大生物はゆっくりと一歩踏み出す。
ただ、それだけだった。
それだけで道路は砕け、地下鉄は押し潰され、ビルは基礎ごと崩壊した。
誰も止められない。
誰も理解できない。
防衛軍は戦車部隊を展開。
「撃て!!」
砲弾が一斉に放たれる。
爆炎が巨体を包む。
煙が晴れる。
そこには、傷一つない巨大な姿が立っていた。
その赤い瞳がゆっくりと空を見上げる。
背鰭が淡く発光する。
光は次第に青く染まり、全身へ流れていく。
「熱線反応!」
「全機退避!!」
間に合わなかった。
口から放たれた青い一条の光。
それはレーザーでも炎でもなかった。
一本の青い破滅だった。
光は都市を一直線に貫き、数十キロ先まで地表を焼き裂く。
爆風が遅れて街を襲う。
街は炎に包まれた。
その後も巨大生物は何も語らず、何も求めず、ただ歩き続ける。
数時間後。
東京湾へ到達した巨大生物は、そのまま海へ沈んでいった。
残されたのは焼け野原だけだった。
世界はその怪物をこう呼ぶ。
ゴジラゼノ。
それは生命ではない。
星の終わりを告げる災害だった。




