姉のあおい
[あんた今度いつ帰る?]
姉のあおいからLINEがきている
[忙しいからしばらく帰らない]
今は忙しさのピーク
俺はIT関係の仕事をしていて、クライアントから依頼を受けて、制作する、チームで仕事をしている
暇な時は実家に週末の度に帰り、土日に泊まったり
ゆっくりしている
食べ物もあるし……その為に帰っているような部分もある
大学卒業と同時に家を出て一人暮らしを始めた
料理は簡単なものしか作れない
掃除もあんまり得意ではない。
掃除機くらいしかかけない。
あとはトイレ掃除だけ。
風呂もシャワーだし
洗濯も2日に1回くらいで事足りている
ゴミ捨てもようやく慣れてきて
最近は間違えずに済んでいる
姉のあおいがたまに様子を見にくるが、
なんか臭い!!と換気から始まり
たくさんのいい香りがするものを置いていく
年齢=彼女いない歴と言うところで
家族から心配されてはいる、
直接言ってくるのは姉だけだが。
あんまり女性が得意ではない
それなりに興味はあるけど
そこまで生活に支障をきたすことがないのだ
職場のチームにも女性はいるが、
可愛いと思ったり好きになったりすることはまずない
愛想もいい方ではないし物事をはっきり言う方なので
どちらかと言えば嫌われている方だと自分でもわかっている
[帰ってくる時連絡してよ]
また荷物運びか?
この前もデパートに付き合えと言われて
大量に服やら雑貨を買ってタクシーのような扱いを受けたことを思い出す
弟、というポジションは姉に振り回される定めか……
忙しくてなぎささんの“お礼”のことなどすっかり忘れてしまっていた
「ふぅ……ただいまー」
ドサっと荷物をおろして実家に帰ってきた
仕事の忙しさもピークを過ぎやっとゆっくりできる週末
「おかえりー!航、久々ね?少し痩せた?」
「お母さん、ご飯ない?」
「ふふ!あるよ、航の食堂みたいね笑」
朝の9時に帰ってきて、起きてから何も口にしていない
お腹が空いてご飯にがっつく
「お母さん、塾あるから行くね」
母は塾教室を開いていて、父は教師
意外とエリートというか、頭が良い家に産まれたけど
俺の頭の良さは普通
姉ちゃんは昔から人気者だったけど
俺は普通、
顔も姉ちゃんは割とちやほやされる方だけど
俺は至って普通の顔だ
俺は何の取り柄もない普通の男だ笑
「はぁ……食った……」
ここ数週間まともに食事していなかったから
満腹で眠くなってしまう、
リビングのソファに横になるとそのまま寝てしまう
――ヴーン――ヴーン、
携帯のバイブの音で目覚める、
電話か……
ムクっと起きて時間を見ると14時……
爆睡してた
着信者を見ると、姉のあおいだった
「……はい」
「迎えきて!すぐ!ショッピングモールまで」
「………………」
「今すぐにこい」
プッッと電話を切られる
あー、今の録音して姉ちゃんの彼氏に聞かせてー笑
姉ちゃんのわがままに耐えれる彼氏を尊敬するわ
車でショッピングモールに向かう
[着いた]
いつもの迎えの場所に着いてLINEを送る
「航、ありがとー!ジャーン、今日はサプライズゲスト!」
「……こんにちは」
なぎささんだった
今日も今日とて姉の遊びものだったんであろう
膝下丈のヒラヒラしてるスカートを履いている
可愛らしい格好をしていた
長い黒髪も巻いてあるのか
地味な姿とはかけ離れたモデルのようにしていた
「航、どう?服着替えさせたんだけど」
「うん、よくわからない」
「もーほんと、つまんない」
大荷物を乗せて車を動かす
「なぎささん家まで乗せてった方がいいよね?」
「なんで?うちでいいじゃん」
「は?俺今日泊まるし、帰らないけど」
「は?乗せてけばいいじゃん」
「……あおいさん!私帰りますっ!!」
「もうお母さんにご飯食べて行くって伝えてる」
あー、なぎささんも俺も被害者だな
このわがままの姉、あおいの
「じゃあ家に帰りまーす」
有無を言わさず家に帰ることに
「ただいまー!足が疲れたぁ!」
家に着くなりスタスタと姉が中に入る
「航さん、あの、これどうぞ!」
「え?」
紙袋を渡されて、俺の好きなお菓子やらコーヒー
ちょっとした食材などが入っている
「あおいさんに航さんの好きなもの聞いて購入しました、この間のお礼です」
至近距離で微笑まれて、
メイクの違いなのか目力も強い
ドキっとしてしまった
見た目に絆されるな!!!!
自分の気持ちを制御する
「……ありがとう、ございます」
「よかったです、受け取ってもらえて」
まじで、俺の好きなやつばっかだ……
「いただきます」
また5人でテーブルを囲む。
既に懐かしい光景だ笑
てか、ここ最近俺が帰ってくる度いるじゃん!
まだ2回目だけど、うちの子かよ!!
ご飯の時にビールを飲めない……
何のために泊まったと思ってるんだよ、
姉を見ると睨み返される
なんだよ……笑笑
「この前、航くんに助けていただいたんです」
おいおい、余計なこと言うな
「え!航が?!」
ほら、お母さんが食いつくじゃん
「婚活で出会った変な人に絡まれてたけど
なぎささんが蹴り入れて追っ払ってただけ」
「ぶはっ!ごめん!ご飯飛んだかも!!!」
お父さんが吹き出して笑い出す
「今日はお礼の品をあおいさんに一緒に選んでもらったんです。私の洋服まで選んでもらっちゃって、楽しかったです」
ふふッと笑いながら話すので楽しかった様子が伝わる
「かわいい〜!航となぎさちゃんチェンジで!!
妹欲しかったんだよー!!!」
「あおい、それは言い過ぎだよ」
お父さんがすかさずチェックを入れる
「航に迎えにきてもらってるんだからね?」
「航、ありがとー」
超棒読みだし、まぁ慣れてるからいいけど
「なぎさちゃんは婚活してるの?」
「はい、実はおばあちゃんが倒れてしまって、、
私の結婚相手を見届けたいみたいで
急いで相手を探してるんですけど、もう無理かなって感じです」
「っ!!航でいいじゃない!」
「言うと思った、お母さんのことだから」
すかさずツッコミを入れる
「航、こんな可愛い子またとないチャンスだよ?」
姉までそそのかしてくる
「もーいいって、なぎささんも困ってるし
送るから帰りましょうか」
「……私は航さんがいいなら……」
もーまた余計なこと言うなよ
「決まり決まり!!!」
「やだー、こんなトントン拍子に進むの?」
俺の意見は無視かよ
「はぁ……」
「おーい、りこちゃんもあおいも悪ノリしすぎだよ」
「……ごめんなさい」
「航、送ってあげなさい」
「うん」
車に乗り2人で沈黙する
「なぎささん、おばあちゃんに正直に話した方がいいんじゃないですか?急いで結婚相手を探してもすぐ離婚したら元も子もないですよ」
「そうですよね」
「俺はもう何もできませんよ、友達だからって限度があります」
「……私、航さんのこと好きですよ」
キキーッと赤信号で強めのブレーキを踏んでしまう
運転席と、後部座席だから顔が見えないけど、
今、好きって言った?!
「あの、友達としてですよね?」
「……もう、友達としてではないです
戻れないとこまで来てる、と思います」
「それ、本気で言ってます?」
「……はい、あの、会う度惹かれているのは事実です」
えぇ……、
どうしたらいいんだろ、これ
「すみません、勘違いの可能性とかって……」
「……航さんに触れたいって思ってます」
うわ、何今のグッと来た
「……ちょっと考えさせてください……」
弱い俺。断ってたらワンチャンもう関わらないで済んだかもしれなかったのに
強く突き放すことも、受け止めてやることもできずに
ただその場から逃げた
なぎささんを送り届けて家に帰る
みんなお風呂やら部屋に入っていて
誰とも会わずに済んだ
風呂に入り
俺の部屋はないのでリビングに布団を持ってきて眠る
ドキドキした気持ちや、嬉しかった気持ちがあるが
臆病な自分は付き合うことに対して怯えている
上手く立ち振る舞えなかったり、
女性と何をしていいのか何をして楽しませればいいのか
全くわからない。モヤモヤを抱えて
なかなか眠りにつくことができない航だった――――――




