再会
「航宛に、手紙来てたよ?」
久しぶりに実家に帰ってお土産でもらったであろう
小袋に入った焼き菓子を食べていたら母親から話しかけられる
「俺に?」
「うん、便箋できてるけど……最近仲良くなった子でもいるの?」
可愛らしい封筒を裏返して見ると
俺の名前が記載してあった
「ふぅ〜ん、開けて見ねぇとわからん」
最後の一口を口に放り込み、もぐもぐと咀嚼する
「お母さん、買い物行ってくるから!今日泊まっていくの?」
「明日仕事だからなんでも済ませてから帰る」
「わかったー!行ってきまーす!」
バタンと玄関が閉まり
家に1人になる
リビングのソファに座り便箋を開けて見る
【こんにちは、突然このようなお手紙をお送りしてしまったことをお許しください。
以前、文通をしていた、なぎさという者です。
実は折行ってご相談があります。
ご連絡ください
080-XXXX-XXXX】
なぎさ……?
文通………………、
…………あ、思い出した
かなり昔の記憶を辿っていくと
1人の人物がでてくる
小学校低学年の時に、空手を習っていた時期があった
親が護身術の為と始めた空手
その時に優勝を総取りしてる女の子がいた
テコンドーも空手もその子が毎回優勝
この辺りで知らない人はいないほど有名な子だった
俺もそこそこ良いとこまではいっていたけど
年齢と共に周りの子が身体が大きくなり、
勝つことも減り、結局辞めてしまった
女子の決勝前に並んで順番待ちをしている時近くになり
手が震えていたので
「緊張してるの?」
と話しかけた
「……昨日手首を痛めてしまったけど
親にも話せてない」
それでよく決勝までこれたんだ、と子どもながらに感心したことを覚えている
その子と次の試合でまた会った帰りの車で
応援に来てくれた姉から
「航の友達から手紙渡しといてって頼まれたよ」
手紙なんて渡してくる友達なんていない
疑問に思いながら中を開けると
その女の子からの手紙だった
内容はなんか友達になってくださいとか
お返事くださいとか大したことは書いてなかったが
姉が面白がって最初の方は姉が文通相手をしていた
それでも何通かしかやり取りはしていないし
姉が文通相手をしていたのでほとんど記憶にない
折行ってご相談って、、
関わりもないのに面倒事は避けたい
ましてや少し話した記憶しかないのに顔も覚えてなければ文通の内容など、名前すらも曖昧な記憶なのに……
わざわざ小さい時の子どもの文通の
住所を引っ張り出して手紙を書くほどのことが
あったのか……?
気にならないかと言ったら嘘になる
試しに電話かけてみるか、
番号を打ち込み電話をかけてみる
プルルルル――プルルルル――
4コールくらい音を聞いたところで
やっぱり切ってしまおうかという気持ちになってくる
携帯を耳から離そうとした時
「もしもし」
なぎさという女性が電話に出る
「あ、俺、吉木航です。文通してた」
「ご連絡くださりありがとうございます」
声は落ち着いている印象だった
「あの、今日ってお時間あります?」
「ありますけど……」
今から会うことになってしまった
顔もわからない名前と昔の記憶だけの女性に
言われた通りカフェの前に待ち合わせる
隣にもずっと待ってる女性がいて
その人なのかなと思い、チラチラ見てしまう
フェミニンな格好をしていて、
テコンドーや空手をしていた感じとは結びつかない
でも、もしかして……と思い
話しかけようとしていたら
男性が歩いてきて合流して行ってしまった、
あぶねー、よかった!話しかける前で…
少しホッとして、緊張からなのか少し汗をかいていたことに気付く。
服をパタパタと中に空気が入るように動かしていると
「こんにちは」
後ろから話しかけられてビクッとしてしまう
こっわ!!!気配感じなかったぞ?!
振り返るとサングラスかけてマスクつけてるなぎささん?がいた
「なぎささんですか?」
「はい」
「よくわかりましたね、俺が」
「ずっと拝見していたら挙動不審だったので……」
「そりゃあ、そんな格好してると思わないんで……」
「わかりやすいかなと思いまして」
なんだこいつ……
グレーのパーカーに黒のスキニーパンツ、
シンプルでさっき見ていた人と比べると地味に感じた
正直、第一印象…ではないけど
不思議な人、という感じだ
「中に入りましょうか」
「……はい」
定員さんに案内されて席に座る
「コーヒーでいいですか?」
「うん」
ドサっと座って帽子を取る
なぎささんが定員さんを呼びコーヒーを注文している
「サングラス外さないんですか?」
「……あっ」
なぎささんがサングラスを外しマスクを外す
…………嘘だろ、、
めちゃくちゃ美人じゃねーか!!
パッチリ二重の目にスッと通った鼻筋
赤い唇に長いまつ毛
昔の記憶を辿るけど全く出てこない
化粧っ気もあまりなく素の美しさというのか
そんな感じだ
「……あの、実は私
婚活というものを始めたんです
この歳で恥ずかしながら男性経験もなくて
でも、結婚願望はあるんです、
婚活サイトに登録して、たくさんメッセージ
いただいたりしたんですけど、その……
変なメッセージが多くって……」
「コーヒーお持ち致しました」
コーヒーが運ばれて話が遮られる
「その、変な人に会うことになっちゃったんです
それで……恋人のフリをしていただけないかと」
「……は?」
は?なんで俺がそんなことしてやらないといけないんだ??
「私たちって、その友達ですよね?
私、その……友達が航さんしかいないんです」
「……友達って手紙交換したら友達なんすか?」
「えっ……」
「すみませんけど、文通してたのってうちの姉なんですよ、手紙が来て名前聞いても俺は全然覚えてなくて
だから、俺にできることは何もないんで他当たってくれません?
その婚活サイト辞めれば1番早いですよ
その変なやつにも会わなきゃいい話ですし」
一気に話してコーヒーをズズっと吸う
「っ、でも、友達になってくれるって……
なんでも話していいよって書いてあったんです」
「それ、うちの姉です
しかも、小学校の時の文通ですよね?
今掘り返して、鵜呑みにされても今更困りますって」
「……っすみません、
そうですよね、私ってこんなんだから友達もいなくて
」
「……帰っていいですか?」
「……お手数おかけしてすみませんでした。
ありがとうございました」
お金を置いていこうと財布を出すと
私が出すんでいいですと断られる
お札を1枚置いてお店を出る
「あ、」
被っていた帽子を忘れたことを思い出して
戻ってみると
なぎささんが静かに下を向いて泣いていた
なんか俺悪いこと言ったか?
間違ったこと言ってないと思うんだけど……
泣かせてしまったことは事実で
急に罪悪感が出てくる……
そりゃ、最初に話しかけたのは俺だけど
文通も姉が勝手にしてたことだし、、
手紙を書くなぎささんの姿を想像してしまう……
俺が今24だから……小学2年の時だったとして、、
約15年ぶり、、?!
そんなに友達いなかった人にきつく言いすぎたのかな
ぽりぽりと頭を掻いて同じ席にまた座る
「……すみません、酷い言い方して」
「……っ!!、私、コンタクトがズレて……!!」
「……嘘下手なんですね笑」
明らかに慌てた態度と嘘に笑ってしまった
「優しいとこは変わってないと思います
航さんは最初から優しいままです」
顔を上げて少し微笑んでこっちを見る
目があって、トスッと胸に矢が刺さるような衝撃を感じた
いやいや、見た目が美しいからって
絆されるな、俺
明らかに友達いなくて中身変なやつなのに、
本当はあんまり関わりたくない
見た目に翻弄されるな、、!!
思えば思うほど
自分が惹かれていることを肯定するようで
雑念を振り払う
こうして、
約15年ぶりの再会を果たした俺らだった――――




