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第7章(前半):朝の憂鬱と、路地裏の甘い罠

朝の太陽がゆっくりと街の上に昇り、ルメリアを柔らかな黄金色の光で包み込んだ。 レントはゆっくりと目を覚ました……少なくとも、そう見えた。

ベッドから起き上がり、鏡で自分の顔を見る。そこには、うっすらとだがはっきりとくまができていた。


「悪夢を見た……」 彼は力ない声で呟いた。


ファイア・バンはまだベッドの隅で眠っており、続いてベッドの下からモロが姿を現した。

『ふぁあ。おはようございます、ご主人様。よく眠れ——』 モロの(想像上の)目が見開かれた。 『ひゃあ! ご主人様、その顔どうしたんですか!? もしかして昨日の夜、全然寝てないんですか!?』


「ああ」 レントは短く答えた。 「ここの浴室はどこだ? 今すぐ、この惨めな自分を洗い流したい」


『え、ええと、浴室はこの部屋のすぐ隣です。タオルは机の棚の中にあるって、昨日のお爺さんが言ってましたよ!』


レントは小さく頷いた。重い足取りで机に向かい、タオルを取り出して首に掛ける。 そして部屋を出て、隣の浴室へと向かった。

浴室の中で、レントは何度も何度も顔を洗った。自分の手を見つめ、再びこめかみを揉む。


「くそっ、なんで……あの不快なビジョンが頭から離れないんだ? まるで、自分自身を奇妙な視線で見つめ返しているような気分だった」 「はぁ……いや。昨日のあれは絶対にただの幻覚だ」


レントはもう一度顔を洗い、そこに備え付けられていた石鹸で体を洗い始めた。


数分後。 レントは少しさっぱりした体で部屋に戻ってきた。浴室の中で着替えた白いシャツを身につけている。 濡れた黒髪が少し目を隠していたが、シャワーを浴びたにもかかわらず、その視線は相変わらず死んでいた。


部屋のドアの外からモロが飛んできた。

『ご主人様!』


その呼び声で、レントはふと我に返った。ゆっくりと毛玉の方へ顔を向けるが、その死んだ魚のような目は少しも変わっていない。 「なんだ?」


『この宿のオーナーのお爺さんが、クーポンをくれました! 新規の宿泊客へのプレゼントだそうです!』 モロは空中で嬉しそうにクルクルと回った。


「ふむ。何のクーポンだ?」

『無料の食事券ですよ! 向かいの食堂に行きましょう。どうですか?』


「ふむ……」 レントはベッドの隅で静かにいびきをかいているファイア・バンをちらりと見た。彼自身の胃袋も、すでに文句を言い始めている。 「いいだろう。頭をすっきりさせるのにもちょうどいい」


レントは立ち上がり、コートハンガーへと歩いて濡れたタオルを茶色いジャケットのすぐ隣に掛けた。

レントは少し振り返り、丸くなって眠り続けるファイア・バンをもう一度見た。


(こいつ……本当にのんきに睡眠を満喫してやがる) (昨日のことなんか何もなかったかのようにな。全く、世話の焼ける生き物だ)

彼は心の中で毒づく。 炎のウサギをじっと見つめる。小さな口から漏れる穏やかないびきと、規則正しい呼吸。


「よく眠ってるな。くそっ、なんで俺はあんな風に眠れないんだ? チッ」 彼は嫉妬を込めた声で低く呟いた。

レントは顔を背け、再びモロを見た。 「行くぞ」


モロの体が元気よく震えた。 『行きましょう! ここのご飯がどれだけ美味しいか、僕が案内しますよ!』

青い毛玉が真っ先にドアの外へ飛び出していく。レントは短くため息をつき、その後を追った。

彼はゆっくりと部屋のドアを閉めた。

――ガチャッ。


ルメリア西区の朝の空気はとても涼しかった。 色鮮やかなユニークな翼を持つ鳥たちが、木々の上をゆっくりと飛んでいる。

周囲の花々はまだ朝露に濡れ、住民たちの活動が活発になり始めていた。きれいに整備された通りを行き交う人々。


レントは白いシャツとカーゴパンツ姿のまま外に出た。賑やかな周囲の雰囲気にもかかわらず、彼の目は虚ろなままだ。ただ真っ直ぐ前だけを見て、住民たちの間をのんびりと歩いていく。

レントの頭の奥深くでは、想像と現実が激しく衝突していた。昨日窓辺で見た非現実的な光景が、まだ彼の頭から離れない。


(昨日の少女……あれは本当に現実だったのか? それとも……ただの幻覚?) (なんで俺はまだ、あの窓での出来事をぐるぐると考え続けてるんだ?)


彼の心は、紫色の髪の少女の顔を再び視覚化していた。 美しい顔、アメジストの瞳、自分と同じ鼻……そして最後に、あの奇妙な笑顔と突然のウィンク。まるで『私を見つけてみて』とでも言っているかのような。

無意識のうちに、レントは左手で自分の頬を軽く叩いた。

――ポンッ。


ゆっくりと手が目の下へと上がり、なぜか少し熱を帯びている頬をそっと撫でる。

(馬鹿げてる。なんで俺はあの少女の顔を思い浮かべてるんだ? 目を覚ませ! あれは現実じゃない!) フラストレーションを感じながら、心の中で自分を強く叱責した。


先ほどからレントの前を飛んでいたモロが、ゆっくりと後ろを振り返った。失業した朝のようにストレスを抱え、ぼんやりとしている主人を見て。

『ええと……レント様?』


毛玉の声が、部屋にいた時のように再び彼の思考を断ち切った。レントは左手を左頬に当てたまま、モロを見つめ返す。

「なんだ?」 レントは平坦な声で答えた。


『ご主人様……何か考えてましたか? 昨日から、一人でボーッとしているのをよく見かけますが……何か悩んでいることでもあるんですか?』 モロは(想像上の)目を少し細めて、疑わしそうに尋ねた。


「いや」 レントは右手でモロを軽く払いのける。「食べ物のことを考えていただけだ。それだけだ」

『ふーむ……分かりました!』 モロはレントを追い越して飛んでいく。『近道しましょう、ご主人様』


レントの足が止まった。「近道?」

『はい、あそこの交差点の路地を抜けるんです。早く行きましょう! 朝ごはんが売り切れる前に!』

「勝手にしろ」


彼らは大通りを外れ、骨董品店と花屋の間にある細い路地へと足を踏み入れた。 中に入ると、レントの足音がわずかに反響した。

――コツッ。コツッ。コツッ。


ブーツが冷たい石畳を叩く音が、冷たく結露した大理石の壁の間で反響し合う。

『ご主人様、ここから交差点が見えるはずです。食堂への道は右のルートのはずですよ』

「本当か?」 レントは周囲を見回しながら答えた。「昨日のあのバカウサギに対するお前の推測のせいで、俺の信用度は下がってるんだぞ、モロ」 レントは面倒くさそうに冷笑した。


『あ、あははは』 モロは小さな羽で自分の毛玉頭を掻いた。『昨日の件はすみません、ご主人様。少し油断してました。でも今回は、絶対にこの道で合ってます! さっきこの場所を分析しましたから。だから心配無用です!』

「はいはい、信じてるよ」


細い路地をさらに奥へと進んでいくと、遠くに二股の交差点が見えてきた。右と左の道だ。 ずっと前を飛んでいたモロが、微かな良い匂いを感じ取った。

『クンクン……』

(どこにあるか分からない)鼻をピクピクと動かす。 『この匂い……石の壁の匂いとは少し違いますね。何かが……』


突然、右の交差点から目に見えない匂いの煙が立ち上り、微かな良い香りに代わって、モロの鼻孔に直接吸い込まれた。 その瞬間、モロの(想像上の)目が見開かれ、キラキラと輝いた。

『ご主人様! この匂い……間違いありません! もうすぐそこです!』 モロはレントの目の前でクルクルと回転した。


「匂い? 食べ物の匂いか?」

『はい!』 モロはレントの顔のすぐ前で止まり、前方の右の道を指差した。『僕が僕たちの分の朝ごはんを確保してきますね、ご主人様! お先に!』


あっという間に、モロは再びレントを一人残して電光石火の速さで飛んでいき、右の角を曲がって姿を消した。

「はぁ……あのクソ毛玉め」

レントはまだゆっくりと歩いていた。両手をズボンのポケットに突っ込み、時折左右を見ながら真っ直ぐ前を見つめて。


レントが交差点に差し掛かり、右へ曲がろうとしたまさにその時。 突然……。


――グイッ!


左の角から、細くしなやかな手が伸びてきた。そしてレントの袖を素早く、力強く掴む。

「なんだ……」

彼が状況を処理する間もなく、その力は彼の体を左の角へと強引に引きずり込んだ。レントの視界が一時的に回転し、そして――。


――ドンッ!


彼の背中が、石造りの路地の壁に激しくぶつかった。 「うっ……!?」 痛みはなかったが、石の冷たさが白いシャツ越しに伝わり、彼は思わず息を呑んだ。


突然の力に引かれ、レントの目はまだきつく閉じられていた。背中は壁に押し付けられている。しかし……。


――ダンッ!


彼の左耳のすぐ横で、別の衝撃音が鳴った。 その打撃音は反響し、壁を伝ってレントの背中を震わせる。危険を察知した彼の背筋が凍りついた。壁ドンだ。

見知らぬ甘い香りがレントの鼻腔をくすぐる。先ほどモロが嗅ぎ取ったのと同じ匂いだが、今回は……近すぎる。あまりにも近すぎる。


(なんだ? 何が俺を引っ張った? なんでこんなに甘い匂いがするんだ?)

パニックに陥ったレントは、目を半分閉じたまま、反射的に両手を前に突き出して手探りした。何か掴めるものはないか、あるいは目の前に何があるのかを確かめるために。


だが……。 彼の手が触れたのは、硬い壁や手すりではなかった。 両手は、ぶら下がっている見知らぬ何かを捉えた。

彼の指は……柔らかい何かに沈み込んだ。 温かく。 そして、弾力のある……。


(なんだ……これ?) (俺が触ってるこの変な物体は、一体なんだ?) レントは混乱した。驚きでまだ目はきつく閉じられている。


無意識のうちに、レントの指が動いた。その感触を確かめるように、対象を軽く掴んでしまう。


――ムニュ。

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