第5章 – ルメリアへようこそ
レント・カエンダの歩みは続く。場所は相変わらずで、青い毛玉の絶え間ないおしゃべりも続いていた。
だが……。
レントの目は以前よりもさらに冷めていた。彼が一歩踏み出すたびに、すぐ背後から小さな跳躍音が聞こえてくる。今やファイア・バンは隠れようともしていなかった。レントの歩調にぴったりと合わせたジャンプだ。
「モロ……」
彼のかすれた声が再び響く。
『はい、何でしょう、ご主人様?』
「俺はモンスターを釣り上げちまったのか? こいつ……」
レントは視線の端で後ろをちらりと見た。
「いつまで俺についてくるつもりだ?」
モロはレントの顔の横に並んで飛んだ。
『さっき説明した通り、それは精霊自身によりますよ、ご主人様』
「はぁ……」
レントはため息をつく。
「上等だ。今や、いつ俺を食うか分からない生き物に尾行されてるわけか。また一つ、心の重荷が増えちまった」
『そんなに悲観しないでください、ご主人様! これは一般的に「従魔」と呼ばれるものなんですから!』
「また新しい専門用語か。余計なものを増やすな、モロ」
レントは無表情に返した。
『ダメですよ! だって、これが今のご主人様とファイア・バンのステータスなんですから!』
モロが反論する。
『えへん。つまり「従魔」というのは、主人と精霊の間の共鳴の絆を示すステータスなんです。それぞれの魂には独自の繋がりがあって、もちろん、精霊との共鳴は一方通行では成立しません』
モロは少し後ろへ下がり、レントの足元でピョンピョンと跳ねているファイア・バンの真上で止まった。
『もう一方の個体、つまり精霊のパートナーからの承認が必要なんですよ、ご主人様』とモロは続けた。
「はぁ……ああ、それで?」
モロは再びレントの横に戻ってきた。
『つまり、結論から言うと。ご主人様とファイア・バンの力学は、すでに双方からの承認を終えているということです。ご主人様からも、そしてファイア・バン自身からも! ですから、お二人は正式に「従魔」として結ばれているんです!』
レントはモロを横目で見た。
「俺がいつ、このウサギを承認したんだ?」
『ええと……ご主人様がさっき、三回もあいつを助けた時からですよ』
「俺が助けたのは、あの穴や岩の間に炎のウサギの死骸を残したくなかっただけだ。あいつが死んで、周囲を火の海にするのを見たくなかったからだ」
レントは淡々と答えた。
『はぁ、ご主人様はご自身では気づいていないのかもしれませんね。でも、ファイア・バンがご主人様を認めたのは、ご主人様自身の内にある「温かい」感情を感じ取ったからなんですよ』
「ふざけるな」
レントは即座に否定した。
「俺のステータスが何だろうと知ったことか。だがな、ここの生き物たちが自分の馬鹿な真似で無駄死にするのを見るのは気分が悪い。ただそれだけだ」
レントが自身の感情に対してあまりにも頑固なため、モロはただ小さく首を横に振った。
『分かりました、ご主人様。大丈夫ですよ、これ以上は説明しませんから』
「いい心がけだ。二度とその話はするな。お前の講釈にはもううんざりなんだよ」
レントはきっぱりと言い放った。
レントは空を見上げた。太陽はすでに頭の真上にある。時間は正午を示していた。
『ご主人様!』モロが突然叫んだ。
「どうした?」
『もうすぐ新しいエリアに入ります! 信じてください、そこはとても美しい場所で、この辺りの文明に入る前の最後のエリアなんです!』
モロはレントを置いて、前方へと飛んでいった。
「ふむ。また新しいエリアか」
レントは歩くペースを速めた。
ファイア・バンもジャンプのペースを上げ、レントのブーツが残した足跡を正確に追っていく。
三人の歩む道はついに変化した。
今度は、まるで旅のルートとして人工的に作られたかのような、きれいに舗装された石畳の道を踏みしめていた。
彼らはついに、モロが言っていた新しいエリアに到着した。これまでの二つのエリアとは全く異なり、はるかに色彩豊かな場所だった。
左側には、鮮やかなピンク色に光る花畑が広がっている。風が吹くたびに、星屑のような光の粒子を吹き出す花もいくつかあった。右側には遠くに山脈がぼんやりと見え、この辺りの空気は暖かいにもかかわらず、その頂は雪で覆われている。
モロはレントの肩のすぐ上、耳の横を低く飛びながら道を案内した。
『この道に沿って歩き続ければ、最寄りの文明に到着します。ルメリアという街です。一番近い冒険者の街で、最も安全な場所ですよ、ご主人様!』
レントはポケットに手を突っ込んだまま、長くため息をついた。
「ふむ。ついにもうすぐ到着ってわけか。あとどれくらいだ?」
『すぐですよ! ちょうどこの先の谷を下ったところです、ご主人様!』
モロが元気よく答えた。
(ようやくか。ふかふかのベッドに背中を預けられるかもしれないな)
レントは心の中で呟いた。
モロが振り返ってレントを見た。
『ご主人様、お腹は空いてませんか?』
レントは振り向かずに答える。
「いや。まだ腹は減ってない」
『えっ、お腹いっぱいなんですか? 普通、新米の冒険者、それも遠くから来た人なら、すぐに近くで食べ物を探すものなんですが……。ご主人様、最後に食事をしたのはいつですか?』
モロは不思議そうに尋ねた。
「俺の後ろにいるコイツに追いかけられ始めてから、食欲が完全に失せたんだよ」
レントは無表情に答えた。
『あ、ああ、なるほど。外的要因で満腹なんですね。了解しました!』
モロは嬉しそうに震えながら返した。
「はぁ……もういい」
彼らは歩き続けた。見渡す限りの広大なエリアで、レントは何度も左右に視線を走らせた。
星屑のような粉で覆われた広大な花畑は、まるで絵本のおとぎ話の夢のように感じられた。
レントが石を一つ蹴り飛ばした時のことだ。
飛ばされた石は地面に落ちず、地面のすぐ上をわずかに浮遊していた。まるで何かが石が地面に触れるのを防いでいるかのように。
レントはその石をじっと見つめ、目を少し細めた。
(この石、地面に触れようとしない。このエリアは魔法に満ちているのか?)
レントは心の中で呟いた。
「面白い」
前を飛んでいたモロがレントを振り返った。
『どうしましたか、ご主人様? なぜ立ち止まったんですか?』
レントは再びモロを見た。
「いや。何でもない。先を急ごう」
『うーん?』
モロは不思議そうに浮いている石を見て、それから前を向いて歩き出したレントを見た。
『待ってください、ご主人様!』
戦場となった草原から始まり、岩の谷の道、そして花畑の谷を抜け、歩き続けること一時間弱。
ついに急な下り坂に差し掛かり……そして、壮大な景色が開けた。
レントは突然足を止めた。
眼下には広大な緑の谷が広がり、その中央にルメリアがそびえ立っていた。
白い城壁に囲まれた都市。細長い塔、青い石でできた吊り橋、そしていくつか湾曲した屋根を持つ家々。
中心に広い広場を持つ大都市。周囲を緑の丘に囲まれた谷間に佇む街。
レントは思わず瞬きもせずに見入っていた。
表情は相変わらず平坦だったが、その奥にある感嘆の念を隠し切ることはできなかった。
空を、巨大なワイバーンが横切っていく。
レントの頭のすぐ上を通過し、そのまま真っ直ぐ飛んで右へと旋回していった。
「あれは……鷲か」
レントは低く呟いた。
レントの肩の横に浮かぶモロが、小さく震えた。
『ふふっ、どうですか? 美しいでしょう? あれはワイバーンです。ドラゴンの一種ですが、いくつか違う特徴があるんですよ』
「ふむ」
後ろで跳ねていたファイア・バンも、空を見上げて耳をピクピクと動かした。
レントはモロを見た。「いいだろう、モロ。あそこが、お前の言う文明のある場所なんだな? で、俺はあの中で何をするんだ?」
モロは素早く頷いた。
『もちろんです! ルメリアは異種族の交差点となる中心都市なんですよ。人間、獣人、それにエルフも何人かいます。そして二つ目の質問ですが、まずは新米の冒険者が無料で泊まれる宿を探します。それと同時に、身分証も作らなきゃいけません、ご主人様!』
「身分証?」
モロは再び頷いた。
『はい! 新規の来訪者として、身分証明カードのようなものを作る必要があるんです。お察しの通り、ここのお役所仕事は……かなり厳しいですから』
「もし断ったら?」
モロはパニックになって小刻みに震えた。
『ダメですよ! 脅威かスパイだと見なされてしまいます! 僕を信じてください、ご主人様!』
「はぁ……」
レントはジト目を向けた。
「やっぱりな。異世界に来てまで、身分証から逃れられないってわけか」
下り坂はさらに険しくなっていった。道は石ころだらけになり、丘の側面からは木の根が這い出ている。ファイア・バンは根から根へと軽快に飛び移っていた。
彼らはルメリアの外門に近づいた。遠くに門番の姿が見える。モロが素早く回転した。
『さて、ご主人様。あの二人の門番とは僕が話します。最高のガイドである僕に任せて、ご主人様はいくつか簡単な質問に答えるだけで大丈夫ですからね!』
「勝手にしろ」
街から吹く風が、食べ物の匂いと違った種類の土埃の匂いを運んでくる。目の前に広がる最初の文明の雰囲気は、大自然のそれとはあまりにも対照的だった。
レントの足取りが少し遅くなる。彼は無表情のまま、この見知らぬ街の周辺環境を観察した。
(ふむ……もっと人が多いかと思ったが。どうやら中の方が賑わっているようだな。さっさとこれを終わらせるに限る)
目の前には、三階建ての家ほどの高さがある城壁がそびえ立っていた。清潔に磨き上げられた白い石が頑丈なブロックを形成し、葉やツタのような彫刻で飾られている。
その中央には巨大な木製の門が大きく開かれており、両側には軽装鎧を身につけた二人の門番が立っていた。それぞれが槍を手にし、五芒星の花の紋章が描かれた赤いマフラーを巻いている。
「はぁ……社会のしがらみか。面倒くせえ」
レントはぼやいた。
モロが前に飛み出す。
『えへん。さて、ルメリアに到着しました。さあ、まずは登録を済ませましょう、ご主人様』
「お前が先に行け。俺は後ろからついていく」
門番たちは彼らが近づいてくるのを見ると、即座に警戒の眼差しを向けた。
「そこで止まれ」
一人が低い声で言った。
「目的は? 身分証は?」
モロが素早く前に出る。
『えへん。僕たちは西の遥か遠くから来ました。僕の後ろにいるこの冒険者はまだ身分証を持っていませんが、僕が案内してきました』
門番は目を細めた。
「領域外からの来訪者か? ふむ……」
モロはクルリと回転してレントを見た。(想像上の)片目をウィンクし、まるで『大丈夫、僕に任せて』と言っているかのようだった。
レントは、奇妙に上下に震えているモロを見つめ返した。宙に浮く毛玉にウィンクされたような気がしたが……。
(何をしてるんだあいつは? 笑ってるのか? パニックになってるのか? それとも何だ?)
レントには、顔のない毛玉の解剖学的構造が全く理解できなかった。
もう一人の門番が一歩前に出た。
「名前は?」
レントは振り向いた。少しの間、沈黙する。
「何か問題でも?」門番が尋ねた。
「いや、何でもない」彼は即座に答えた。
「レントと呼んでくれ」
門番は小さな手帳に書き込んだ。
「レント。よし。新規来訪者の登録所へ案内しよう。そこで存在の検知記録を取り、入市の印が与えられる」
「標準的な手続きだ。痛みはない、ただ共鳴を検知するだけだ。偽造や『影の次元』からの侵入者を防ぐために役立つ」
「影の……次元?」レントが呟く。
門番は頷き、槍を退けた。
「入れ。問題は起こすなよ」
門を通り抜けた瞬間、雰囲気が劇的に変わった。
ルメリアは、最も清潔で秩序立った形の都市だった。
メインストリートは大きくて不規則だが綺麗に敷き詰められた石板で作られている。店が整然と立ち並び、芸術的な木製の看板とドアの上の小さな魔法のシンボルが飾られていた。
子供たちが勝手に浮かぶ風船を持って走り回り、商人が宣伝のために燃える果物を実演しながら売り声を上げ、甘い食べ物の香りが空気に漂っている。
レントは黙って観察した。
(ここは……人が多い。そしてひどく異質だ。俺の脳がまだ完全に受け入れきれていないものが多すぎる。くそっ)
『ここは街の外側です、ご主人様』
レントの独白を破るようにモロが言った。
『ここは商業区画です。奥へ行けば行くほど賑やかになりますよ。でも、まずは登録所に行きましょう』
ファイア・バンはまだ後ろをピョンピョンと跳ねていた。周囲の喧騒など気にも留めない様子だ。
数人の通行人が彼らをじっと見ていた。驚く者もいれば、感嘆する者もいる。中にはファイア・バンを指差し、興奮してささやき合う子供たちさえいた。
レントは居心地の悪さを感じ始めた。
(はぁ。なんでこいつらは俺みたいな人間をジロジロ見る暇があるんだ? 物好きな奴らだ)
『ここです!』
モロが自身の体で指し示しながら言った。
小さな広場の中央にある、無地の黒い石でできた建物。クローゼット二つ分ほどの高さがある鉄の扉が、魔法のシステムによって開かれていた。
レントは顔をしかめた。「ここは何の場所だ?」
『身分証の登録所ですよ、ご主人様! さあ、中に入りましょう!』
オフィスの中では、クリスタルの眼鏡をかけ、焦げ茶色の髪をきれいにまとめたハーフエルフの女性が彼らを出迎えた。
「ルメリア登録所へようこそ」
彼女は愛想よく言った。
「新規の来訪者の方ですか?」
レントは頷いた。「そうだ」
「こちらのクリスタルの上に手を置いてください」
彼女は机の上にある青い水晶玉を指差して言った。
レントは手を置いた。クリスタルが少しの間光り、それから薄い緑色へと変わる。
光が放たれ、クリスタルの横にある紙の上に、魔法のルーンの印が自動的に刻み込まれた。
「ふむ、検知は安全ですね。ステータスは汚染なし。よろしい」
エルフの女性が続ける。
レントは首を傾げた。「もう終わりか?」
女性は微笑んだ。
「はい。これであなたは正式な一時市民です。これが『ルメリア・パス』――基本身分証です。これで街に滞在し、物を買い、仕事に登録することができますよ」
レントは、自分の名前が刻まれた銀色の小さなカードを受け取った。
【レント・カエンダ ―― 領域外の冒険者】
(悪くない)
女性は軽く頭を下げた。
「ルメリアへようこそ、レント・カエンダ様。あなたの旅が……新たなる光をもたらしますように」
レントは静かに頷いた。




