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第14章 – 現代の奴隷労働施設(ギルド)と、どうしても離れない紫の影

西区から歩くこと約二十分。レントとモロはついに巨大な建物の前に到着した。 建物の左右には銀色の盾と剣の彫刻が施され、縁にはクリスタルストーンのランプがいくつか飾られている。


それが冒険者ギルド・ルメリア支部だった。


レントと、彼の肩の横に浮かぶモロは、その巨大な建物の入り口の真正面に立っていた。扉はピカピカに磨かれた銅でできており、二枚の正面扉の縁には木彫りの装飾が施されている。


モロは少し回転し、レントの方を向いた。 『ここがその場所ですよ、ご主人様! どうですか? なかなか立派でしょう?』 彼の丸い体が興奮で震えている。


レントはその巨大な建物を少しの間見つめ、ゴクリと生唾を飲み込んだ。 「モロ。ここがその場所だって……本当に確かなのか?」


モロは素早く頷いた。 『もちろんです! ここは新米冒険者たちが生計を立てたり、まあ、単にランクを上げたりするための場所ですからね』


「ふむ……まあいい。借金を返して、ぐっすり眠るためだ」と彼は呟く。 「行くぞ、モロ。さっさと終わらせる」


モロは(想像上の)片手を上げて敬礼のポーズをとった。 『了解です! 司令官!』


レントは深呼吸をして心の準備を整え、その重い銅の扉を押し開けた。


――ギギィィィッ。


彼を真っ先に顔面から殴りつけたのは、栄光などではなく、音の壁だった。


――ガヤガヤガヤガヤッ!


音。何百人もの人々が同時に叫び、笑い、値切り交渉をし、自慢話をする声。中の空気は分厚く生温かく、安いエール酒と錆びた鉄、そしてダンジョンから帰還して一週間風呂に入っていない男たち特有の悪臭が混ざり合っていた。


レントは入り口の敷居で立ち尽くした。顔が少し青ざめている。


「モロ」レントは囁いた。「ミッション中止だ。帰るぞ。今すぐ」


『ネガティブです、ご主人様! 撤退という選択肢はありません! あの掲示板を見てください! お金を見て! そして僕たちの未来を見るんです!』


「くそっ。見た目以上にうるさい場所だな」


レントは無理やり足を踏み出し、その混沌としたホールの中へと進んだ。ギルドの内部は非常に広く、まるで列車の駅のコンコースのようだった。右側には、真昼間から酔っ払った冒険者たちで溢れかえる酒場エリア。左側には、群衆が群がる巨大なクエスト掲示板。そして、真っ直ぐ進んだ先には……。


受付カウンターへと続く、綺麗に整列された長い行列があった。 クエストを通じて最初の資金を手に入れるための場所だ。


「素晴らしい」レントは皮肉げに呟いた。「お役所仕事(官僚主義)か。俺が最も嫌いなものだ」


彼は重い足取りで歩き、列の最後尾に並んだ。彼の目の前には、革のふんどしだけを身につけた身長二メートルのオークが立っていた。そのオークの背中から漂う生々しい獣の体臭ムスクに、レントは来週まで息を止めていたくなった。


五分が経過した。列は動かない。十分が経過した。目の前のオークが背中を掻き、古い角質の粉塵がレントの顔に向かって舞い散った。


レントは目を閉じ、内なる平和を模索した。 (我慢しろ。お前は強いぞ、レント。ただの臭いだ。実家で姉貴の食べ残しの生ゴミを何度も掃除したじゃないか。これもただの普通の臭いだ)


「退屈かしら、鏡さん?」


左耳のすぐそばでの囁き。彼の中の平和が瞬時に崩れ去った。


レントはパッと目を開けた。顔は向けない。その声には聞き覚えがあった。オークの汗の悪臭を突然切り裂く、そのラベンダーの香りにも。


純粋な恐怖の反射で、レントはゆっくりと左へ視線を向けた。


彼のすぐ隣には、まるで何時間も前からそこに並んでいたかのように、カエンシスタが立っていた。 少女は片手を腰に当ててリラックスした様子で寄りかかり、彼に向かって甘く微笑んでいる。


「お前……」レントは歯の隙間から息を漏らした。「ここで何をしてる? それに……なんで俺をつけてきた?」


「あら? なんで私がここにいるかって?」カエンは親指で後ろの長い列を指差した。「あなたと一緒よ。私たちパートナーでしょ、覚えてないの? 借金のパートナーよ」


「いつからだ? お前はただの借金を運んできた女であって、パートナーじゃない」レントは一言一言を強調して言った。「列の後ろに行け。お前の後ろにいる髭面のドワーフが、殺意を込めてお前を睨んでるぞ」


カエンシスタは振り返り、列に割り込まれて文句を言おうとしていたそのドワーフを鋭く睨みつけた。少女のアメジストの瞳が冷たく光る。ほんの数分の一秒だけ放たれた、捕食者の目。カエンシスタからの純粋な威圧の視線だった。


ドワーフは即座に目を伏せ、何の問題もないズボンのベルトを直すふりをした。


「ほらね?」カエンは再び無邪気に微笑んだ。「あのお髭のおじさん、何も気にしてないわよ。それに、もし私がパートナーじゃないなら。後で誰がお金を稼ぐのを手伝ってくれるって言うの? ん?」


「お前……本当に、もういい。勝手にしろ」レントは平坦に返した。


レントは彼女を無視しようと、受付窓口を真っ直ぐに見つめた。しかし、カエンシスタには明らかに『パーソナルスペース』という概念が欠如している。彼女は近すぎる位置に立ち、時折彼女の肩がレントの腕にぶつかった。


「で、」カエンが再び囁く。「いくら必要なの?」


「50銅貨だ。そしてそれは全部お前の借金だ」


「はぁ?! 私はあなたの誘いを受けただけじゃない! 馬鹿!」


「ああ。あれは俺の馬鹿げた誘いだったな。その時の君の腹の音が、あまりにも哀れだったからな」


カエンの顔が瞬時に真っ赤になった。 「あ、あんたね! うっ! そのことは思い出させないでよ! あれはただの偶然よ! 意地悪!」カエンは赤くなった自身の頬をさすりながら言い返した。


「なら黙ってろ。もうすぐ着く」


煉獄での一世紀のように感じられた長い時間の後、彼らはついに受付窓口の前にたどり着いた。


受付嬢は、疲れた目をした眼鏡の若い女性だった。まるで三日間寝ていないかのように見える。彼女の名札には「ミラ・シレンダ」と書かれていた。


「次の方」ミラは書類から目を上げることもなく、ロボットのような単調な声で言った。


レントは一歩前へ出ると、銀色のカードを木のカウンターに叩きつけるように置いた。 「クエストを一つくれ。仕事は何でもいい、ランクのことはよく分からないが、一番報酬が高いやつを頼む」


――バンッ!


レントの手のすぐ隣に、別の手がカードを叩きつけた。 「私も同じので!」カエンシスタが陽気に言った。「早く終わるやつね。まだお腹空いてるから」


受付嬢のミラがゆっくりと顔を上げた。彼女は瞬きをし、レントを見て、それからカエンシスタを見た。


無表情な黒髪の青年と、満面の笑みを浮かべた紫髪の少女。瓜二つの鋭い目。そして、頭の上に同じように突き出たアホ毛。


「双子ですか?」ミラが平坦な声で尋ねる。


「「違う」」 レントとカエンは完璧に声を揃えて答えた。


「はいはい、どうでもいいです」ミラはため息をつき、カウンターの下から書類の束を取り出した。彼女はそれを気怠そうにシャッフルする。 「悪いお知らせです。もう昼近くなので、薬草採取や手紙の配達のような割のいい採取クエストは全部取られちゃいました」


ミラは最後の一枚、くしゃくしゃになった紙を引き抜いた。 「これが残っている唯一の初心者向け依頼です。Fランククエストですが、みんな嫌がって取らないんですよ……汚いので」


レントは顔を近づけてその紙を読んだ。


『緊急クエスト:下水道の清掃』 ・討伐対象:ジャイアント・ラット(10匹) ・場所:東区の地下水路 ・報酬:60銅貨 ・備考:ブーツを持参すること。匂いは強烈です。


レントはその紙を見つめた。「ドブネズミ。悪臭」 彼は自分の清潔な革のジャケットを見下ろし、それからカエンの短いスカートを見た。


「完璧だな」レントは皮肉たっぷりに言った。「昼寝の前にサクッと終わらせるには最高のクエストだ」


「60銅貨?」カエンの目が輝き、「悪臭」の二文字を完全に無視した。「おほほ! 家の食料のストックには十分ね!」


「俺が受ける」レントが即座に言う。 「ダメよ、私が受けるわ!」カエンが遮る。


「俺が先に頼んだ」レントが彼女を軽く睨む。「俺には払わなきゃならない借金があるんだ」 「私にはおやつで満たさなきゃならないお腹があるの!」カエンも睨み返し、二人の視線の間で架空の火花が散った。「それに、技術的に言えば、私の借金はあなたの借金でもあるでしょ!」


受付嬢のミラは、その依頼書に力強くスタンプを押し付けた。 ――ダンッ!


「手続き完了です」ミラはそう言いながら、紙をレントに差し出した。「これはパーティクエストです。最大4人まで。あなたたち、うるさいしお笑いコンビみたいなので、二人でやってください。報酬は50-50で山分けです」


「「はぁ?!」」 レントとカエンが同時に叫ぶ。


「一人30銅貨ずつです」ミラは羽根ペンで彼らを指し示しながら説明した。「受けるか、やめるか。次のクエストが出るのは明日の朝になりますよ」


レントは固まった。30銅貨。借金は50。ポケットには3銅貨。合計:33銅貨。まだ足りない。


「待てよ」レントは素早く計算した。「俺が30もらったとしても……まだ足りない」 彼はカエンの方を向いた。少女は考え込むような表情で依頼書を見つめていた。


「おい、お前」レントは囁いた。「これを一緒にやったら……お前の分を俺にくれ」


「夢でも見てるの、鏡さん?」カエンが鼻で笑う。「でも……終わった後にランチを奢ってくれるなら、私の分を『貸して』あげることを検討してもいいわよ」


レントは歯を食いしばった。貸す。それはつまり、また借金が増えるということだ。借金の自転車操業(穴を掘って穴を埋めるようなもの)。だが、彼に選択肢はなかった。


彼はミラの腕から依頼書をひったくった。 「分かった。俺たちが受ける」


「良い選択ですね」ミラはすでに彼らを追い払うように手を振っていた。「はい、次の方! ああ、それとスライムには気をつけてくださいね。下水道で繁殖してるって噂ですから」


レントは踵を返し、重い足取りで窓口から離れた。カエンシスタは上機嫌で鼻歌を歌いながら彼についてくる。


「下水道でデートね!」カエンが嬉しそうにさえずる。「すっごくロマンチック〜」


レントは立ち止まり、横に浮かぶモロを見つめた。 「モロ」 『はい、ご主人様?』 「さっさと終わらせるぞ。俺は昼寝がしたいんだ」

【作者より】

前回「次回は通常盛りでお届けします」と宣言したばかりですが……大変申し訳ありません!


二人のギルドでのやり取りがどうしてもカットできず、またしても文字数が少し多くなってしまいました。スマホで読んでくださっている皆様、読みにくかったらごめんなさい……!


もし少しでも「面白い」「レントが不憫だな」と思っていただけましたら、ページ下部にある【☆】をポチッと押して評価していただけると、明日の執筆の大きなモチベーションになります!


引き続きよろしくお願いいたします!

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