表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/40

第12章 – 窓を開けたら美少女がいた件。そして、所持金3銅貨の絶望

レントは重い足取りでアルヴィア亭の木の階段を上っていた。足取りはひどく重く、まるで足首に「借金50銅貨」と書かれた鉄球が結びつけられているかのようだ。


彼は自分の部屋である304号室の前に着いた。 ――ガチャッ。


ドアが開く。部屋の中の光景に、レントの眉がピクリと動いた。 ベッドの端で、ウサギの形をした炎の塊――ファイア・バン――が、まだ仰向けでぐっすりと眠っていた。小さな足を宙に浮かせ、鼻からは微かなイビキに合わせて膨らんだり縮んだりする炎の鼻提灯が出ている。


スー…プゥー…スー…プゥー…


レントはその生き物を平坦な目で見つめた。 「馬鹿ウサギめ」レントは皮肉げに呟く。「いいご身分だな? 起きて食べて、また何の悩みもなく眠る。全く役に立たない」


レントは部屋に入り、小さな机の前の木の椅子に少しの間腰を下ろした。


自分が非難しているその「食べて・寝て・怠ける」というライフスタイルこそが、彼自身の夢のライフスタイルであることに、彼は全く気付いていなかった(あるいは気付くことを拒んでいた)。その皮肉は宙を舞っていたが、レントは自己憐憫に忙しすぎて気に留めなかった。


「ハァ……」 レントは乱暴に顔をこすった。借金帳に自分の名前を書き込んだ店主の幻影が、まだ脳裏に焼き付いている。 「あのイカれた女のせいで……俺の異世界での最初の朝が、借金で汚されてしまった」


部屋は少し息苦しく感じられた。レントには酸素が必要だった。食事の請求書の記憶を脳から洗い流すために、街の景色を見る必要があったのだ。


椅子から立ち上がり、大通りに面した木枠の窓へと歩く。 ――ガラッ。 レントは窓を大きく押し開けた。


眩しい朝の太陽の光が直接顔に当たる。下からはルメリアの街の喧騒が聞こえ始めていた――ここは住宅街に特化した区画であり、静寂のために作られたはずだったが、地元住民の活動は予想以上に活発だった。


レントは目を閉じ、窓枠に寄りかかりながら深呼吸をした。 「少なくとも……景色は悪くない。あのムカつく顔も——」


「あら〜? 朝を満喫中かしら、お隣さん?」


その声。横から聞こえてくる、ハスキーで艶のある声。あまりにも近すぎる。


レントの目が瞬時に見開かれた。首をこわばらせながら、ゆっくりと右へ顔を向ける。


アルヴィア亭とルナ・マナーは隣接して建っている。レントの部屋の窓と隣の建物の窓の距離は、建物と建物の間のわずかな隙間を挟んで、わずか二メートルほどしかなかった。


そしてその隣の窓には……窓枠の上にリラックスして座り、空中で足をブラブラと揺らしている、あの災厄の源がいた。


カエンシスタ・サイチ。


彼女は手に持った赤いリンゴをかじりながら、甘く微笑んでいた。二人の位置は平行で、同じように大通りに面しており、まるで隣り合った劇場のバルコニー席にいる二人の観客のようだった。


「お、お前……」レントは息を呑んだ。恐怖で目が飛び出そうになる。


「サプライズ!」カエンシスタはリンゴを咀嚼しながらウィンクをした。――シャリッ。 「私たち、本当に隣同士だったみたいね? あなたの部屋の壁と私の部屋の壁、レンガ一つ分しか離れてないのよ。ここからノックしたら……」


カエンは手を伸ばし、レントの部屋の外壁を叩こうとした。 「……たぶん、あなたにも聞こえるわ」


レントの無表情が瞬時にひび割れた。


「で、カエンダさん……いつから『私たち』の借金を返すために働き始めるつもり? ここからあなたが怠けてるのが丸見えなんだけど」


無言。無警告。 ――バタンッ!!


レントは体を部屋に引き戻し、力任せに窓を閉めきった。鍵を二回回し、光の隙間が一切なくなるまで分厚いカーテンを引く。


息が荒くなる。窓の横の壁に背中を押し付けた。


「モロ……」レントは虚空に向かって力なく呼んだ。


沈黙。天からの返事はない。ベッドの上の炎のウサギの微かなイビキだけが、彼の絶望に答えていた。 スー…プゥー…


(悪夢だ。いや、悪夢が俺の隣に住んでるんだ。くそっ)


レントは長くため息をつき、両頬を二回叩いた。 ――パンッ、パンッ。


「よし。集中しろ、レント。隣の窓の視覚的ノイズは無視しろ。あれはただの隣の建物の美しい地縛霊だと思え。もっと現実的な問題に集中するんだ。50銅貨だ」


彼は部屋を見回し、(眠っているウサギ以外に)話ができる唯一の生き物を探した。


「モロ! 出てこい。隠れるな」


――ポンッ! ベッドの下から、青い毛玉が回転しながら飛び出し、薄い埃を巻き上げた。


『はい、レント様!』モロの声が響く。『円満なご近所さんらしい、朝の挨拶の儀式は終わりましたか?』


レントはその皮肉を無視した。戦争の戦略を練っているかのような真剣な顔つきだ。 「聞け、毛玉。俺たちは現在、致命的なレベルの経済的緊急事態にある。金が必要だ。今すぐにな」


レントは机の上の小さなバッグを掴み、中身をモロの前の木の床にぶちまけた。 ――ゴトッ。(空白のノート)。 ――チャリン。(羽根ペン)。


レントは震える人差し指で、そのガラクタの山を指差した。 「分析しろ。この役立たずのガラクタの中で、50銅貨で売れるものはどれだ?」


モロが近づいてきて、(想像上の)目が青い光線でアイテムをスキャンする。 ――ピッ。ピッ。


『報告します!』モロが叫んだ。『本:低品質の再生紙。市場価格2銅貨。ペン:標準的な鶏の羽。価格1銅貨』 モロは素早く回転してレントに向き直った。 『現在のご主人様の流動資産の合計は……3銅貨! 借金返済まであと47銅貨足りません! おめでとうございます、ご主人様は正式に貧困層です!』


レントのこめかみの青筋がピクついた。「貧困。文字通りにも精神的にも、俺は完全に貧困だ」 彼は青い毛玉を震え上がらせるような鋭い視線でモロを睨みつけた。


「お前は? お前を巡回サーカスに売ったらどうなる? 喋れるし浮遊できるんだ。きっと高く売れるぞ」


モロは即座に後ずさりし、恐怖で体を震わせた。 『じょ、冗談はやめてください、ご主人様! 僕は知的財産ですよ! お金では買えません! それに……一週間お風呂に入らないとカビ臭くなります! 闇市場じゃ売れませんよ!』


「チッ。使えない奴め」


レントは立ち上がり、ズボンのポケットから銀のルメリア・パスを再び取り出した。彼はその金属プレートを見つめる。 『レント・カエンダ - 異境の冒険者』


「で? 何か計画はあるのか、知識の存在殿? まさか交差点で乞食をしろとは言わないよな」


モロは命が安全だと知って再び元気を取り戻した。レントの顔の前を飛び回る。 『もちろん違います! 僕たちは冒険者ですよ、ご主人様! 解決策は街の中心にあります! ルメリアの冒険者ギルドです!』


『あそこは資金循環のハブです! 低ランクの初心者向けクエストがたくさんありますよ! 下水道の巨大ネズミ退治から、お婆ちゃんの迷子猫探し、城壁の苔の掃除まで! 借金を返すのにぴったりの報酬がもらえます!』


レントは苦笑いした。ひどく苦い笑顔だ。 「下水道のネズミ退治か……」と彼は呟く。「人を助けて死んだ人間が、今度はドブ掃除係として蘇る。素晴らしいキャリアの進化だ」


彼はハンガーから茶色い革のジャケットを掴み取り、足を上げたまままだ眠っているファイア・バンを横目で見た。


「留守番してろ、馬鹿ウサギ。何も燃やすなよ。もしこの部屋を焦がしたら、お前をウサギの串焼きにしてやるからな」


レントはジャケットを羽織り、ドアへと向かった。 「行くぞ、モロ。その現代の奴隷労働施設への道を案内しろ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ