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第1章 – 色のない世界

初めまして、ザッキー・スヴァローグと申します!

本日から新連載をスタートします。


少し不憫で無気力な主人公と、彼と同じ顔を持つ厄介な(?)美少女のドタバタな物語です。楽しんでいただければ幸いです!

空は低く垂れ下がり、上から降り注ぐタバコの灰のように灰色だった。太陽もなく、雨も降っていない。ただ暗い曇り空だけがそこにあった。


行き交う人々は誰も振り返らない。喧騒に包まれているはずなのに、なぜかひどく静かに感じる。 その人波の端っこに、一人の青年がいた。


レント・カエンダ。


彼はバス停のベンチに腰を下ろしていた。 通りを舞う埃で少し汚れた、ダークブルーのパーカーを着て。


街全体が彼を拒絶しているかのようだった。 渋滞する車の列、耳障りなクラクション、昨夜の雨と混ざり合った排気ガスの匂い。 そして、彼を透明人間のように通り抜ける通行人の視線。


だが、それらすべてが単なる幻影のように彼をすり抜けていく。 まるで自分だけが迷子になった幽霊であるかのように。 そして、彼はそんな感覚を好んでいた。


冷たい鉄の感触が体に伝わる。 数秒間、彼はピクリとも動かなかった。


足元には破られた封筒が転がっている――不採用通知だ。 その束を数えるのは、もう二ヶ月も前にやめた。 誕生日を祝う手紙もあったが、読む気にも、触れる気にもなれなかった。


右手は無意識に、パーカーのポケットから画面の割れたスマホを取り出していた。 画面が点灯し、いくつかの通知が表示される。


……うるさい。


親指で溜まった通知をスワイプする。その中、スパムのような着信履歴が目に入った。 一件のメッセージと、5回の不在着信。


『どこにいるの? お姉ちゃん心配してるよ、帰ってきて』


(まったく……なんで姉貴はいつもいつも、うるさいんだ。静かにしてくれよ)


レントは通知をスワイプして無視し、ホーム画面へと戻った。


画像フォルダを開く――そこには古い写真。 自分でも思い出せないような笑顔、ささやかなお祝い、大きな夢。 だが今の彼にとって、それは色のないキャンバスでしかなかった。


(俺の何が間違っていたんだ?)

(分からない。もう考えたくもない)

(これ以上は、もう疲れた……)


思考が再び、彼を暗い穴の底へと引きずり込む――すべての夢が埋葬された穴へ。 舞い散る埃のように消え去り、この無意味な世界に空っぽの抜け殻だけを残して。


(会社員? 役に立たない) (親友? 俺が笑わなくなってから去っていった)


残されたのは自分自身……そして、頭の中で責め立て続ける声だけ。 数え切れないほどの声が、同じ言葉を繰り返し続ける。


『失敗作』 『惨めだな』 『お前は足手まといだ』 『お前は何者でもない』 『お前なんか、存在するべきじゃない』


「うるせぇよ。くそが……」 彼は自分自身の頭に向かって悪態をついた。


その時、ふと一匹の猫がレントの腕にすり寄り、すぐ隣で丸くなった。 レントの陰鬱な雰囲気とは対照的な、小さな温もり。 まるで世界のことなど気にも留めず、ただ彼のそばが心地よいとでも言うように。


「おい、どけよ」 レントは軽く肘で小突いたが、猫は反応しない。 先ほど彼がスマホに気を取られていたわずかな間に、すでに静かに喉を鳴らして眠っていた。


「はぁ……」 レントはため息をついた。 「どこから来たんだよ、こいつ。まあいい、なんで俺が気にしなきゃならないんだ」


口では文句を言いながらも、彼の手はゆっくりと猫を持ち上げ、そっとベンチの上へと移していた。


レントは立ち上がり、再び丸くなって眠りについた猫とバス停を後にした。 どこへ行く当てもない。ただ、思考を黙らせるために足を動かしているだけだった。


だが、それは決してうまくいかなかった。


彼が辿り着いたのは、古いアパート同士を繋ぐ狭い路地裏だった。 街灯すら照らすのを面倒くさがるような場所。 社会のゴミが捨てられ、不運が獲物を待ち構えているような吹き溜まりだ。


暗がりの中に、一人の少女が立ち尽くしていた。 年齢は六つか七つだろうか。 服は汚れ、裸足で、その手には――淡く光る紫色の宝石のネックレスが握られていた。


少女の背後では、黒いフードの男が彼女の腕を掴んでいた。 顔はほとんど隠れていたが、その両目は赤く燃えるように光っていた。反射ではない――本当に発光しているのだ。


レントの体が強張った。危険がリアルに感じられる。 一瞬、後ずさりしそうになった。


だが、足は逆に前へと動いていた。 何が彼を前進させているのか、自分でも分からない。 『お前の知ったことじゃない』と叫ぶ頭の中の声を無視して、体が勝手に動いていた。


「離してやれ」 彼の声は低かったが、静寂を刺し貫いた。


男が振り返る。その鋭い視線が向けられた瞬間――少女は激しく震え、泣き叫び始めた。


レントは拳を握りしめた。心臓が狂ったように高鳴る。 さらに一歩、距離を詰める。


「離せって……言ってんだろ!!」


レントは飛び出した。思考は拒絶を叫んでいたが、体はすでに弾き出されていた。 彼はフードの男に激しく体当たりをした。


拘束が解け、少女は地面に倒れ込むと、這うようにして逃げていく。


レントは少女の無事を確認しようと振り返りかけた。だが……


――ズブッ。


何かが、彼の腹を貫いた。 冷たい。金属が肉を裂く感覚に続き、血液が無理やり押し出されるような焼けるような熱さが走る。 とうの昔に麻痺していた体には、奇妙なほどのコントラストだった。


体が揺らぐ。温かい血が急速に流れ出し、みすぼらしい服を濡らしていく。 呼吸が詰まる。世界が遅くなり始めた。


彼が自分の腹を刺しているのを見た。冷気が体を覆い始める。


「ぐっ……視界が……あの子は……」


――ドサッ。


彼の体は濡れたアスファルトに崩れ落ちた。 血の錆びた匂いが広がり、周囲のゴミの悪臭を書き消していく。


痛みは次第に薄れ、とてつもなく重い眠気に取って代わられていく。 視界がゆっくりとぼやける。子供の泣き声が響き渡っていた。


体の傍らに落ちた、画面の割れたスマホが点滅していた。 微かな着信音と共に、画面には『着信中』の文字。 そこに表示されていた名前は――『姉貴』。


(ごめん……) 動かなくなった唇の代わりに、心の中で静かに呟く。


(ごめん、帰れそうにない……)


その音は次第に……遠ざかっていく。そして最後には静寂だけが残った。 闇が、すべてを飲み込んだ。

________________________________________


レントは目を開けた。だが、そこには何もなかった。 空でもなく、大地でもない。


ただ……果てしない白。 四方八方を囲む、何もない壁のようだった。


(なんだ……ここは? 夢か?) (俺は……死んだのか?) (でも、なぜまだ思考できる?) (これが、俺の人生の終着点なのか?)


体はまだ存在していた。だが、影のようにひどく軽い。


やがて――光が現れた。 遠くからゆっくりとシルエットを形成していく。高く、荘厳で、名状しがたい存在。


声は聞こえないが、魂の奥底に直接響いてきた。


『ようこそ、異邦の魂、レント・カエンダよ』 『残酷に聞こえるかもしれないが、お前はすでに命を落としている』 『だが、お前の魂にはまだ引き抜かれていない根がある。癒やされていない傷がある』 『空っぽの抜け殻の中に、まだほんのわずかなお前の魂の欠片が残っているのだ』


レントは黙り込んだ。 不思議と恐怖はなかった。むしろ……安堵すら感じていた。 罪悪感もない。虚無感もない。ただ、疑問だけがあった。


「あんたは誰だ? なんで俺はここにいる?」 レントは拳を強く握りしめた。 「俺みたいな無価値な魂は、地獄にでも放り込まれるのが筋じゃないのか?」


『お前が助けたからだ。己を憎みながらも、自己犠牲を選んだからだ』 『お前が世界で生きていた時のことはすべて知っている。そして、最後の瞬間のことも』 『それは、死を望む魂からは滅多に生まれない選択だ』 『正しい選択も、間違った選択もない。あるのは信念のみ』 『それこそが、今この瞬間、我々を引き合わせた原動力なのだ』


レントは俯いた。初めて……誰かに見られ、認められた気がした。


『ゆえに、お前に選択肢を与えよう』 『生まれ変わるのだ』 『ここではない、遠く離れた別の世界で。美しくも、傷ついた世界で。喜びと悲しみが存在し、傷ついた魂の居場所となる世界で』 『お前のような存在を必要としている世界だ。傷を抱えた魂たちの、その傷を癒やす者として』


『ただ一つ、条件がある』 『自分自身を赦しなさい。そして……もう一人の自分を見つけるのだ』


レントは顔を上げた。 「もう一人の……俺?」 彼は少し眉をひそめた。 「どういう意味だ? 全く分からない」


光はさらに輝きを増した。


『人間の魂は、決して単独で存在するわけではない。影を持ち、鏡写しの存在を持つ』 『別の宇宙で、お前は違う姿で生きている。これから出会う、違う名前とアイデンティティを持った存在。お前であって……お前ではない存在』 『魂そのものを蝕むほど深く隠された傷。最後までその傷を引きずりながら生きる空っぽの抜け殻とは程遠い魂』 『愛、傷、希望……そのすべてを、お前は彼女と分かち合うことになるだろう』

『さあ、旅を始めなさい。己の存在意義を見つけるのだ』 『そして……かつて壊れた魂からしか芽生えない愛を、見つけ出すのだ』


第1章を最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

次回、絶望の淵にいた主人公は「謎の光の存在」と出会い、新たな運命の選択を迫られます。


もし「面白かった」「少し続きが気になるな」と思っていただけましたら、ページ下部から【ブックマーク】や【評価(☆)】を残していただけると、毎日の執筆の大きな励みになります。

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